International CES 2011のレポートでも1度紹介しているが、ここMWCの会場でもスマートフォンを初めとするポータブルデバイスへのワイヤレス充電(無接点充電)の展示が盛んだ。
状況としては、米国で独自に市場を作り上げて1歩先行しているPOWERMATに対して、他の企業が「Wireless Power Consortium」を設立し、2010年7月に策定した「Qi」のロゴマークのもとに標準化、相互運用性をアピールしてして追い上げるといった構図になっている。先日、日立マクセルが日本でも初めて「Qi」の規格に準拠したワイヤレス充電器とiPhone 4用対応のカバーを発売することを発表しており、これは4月25日より販売される予定。
大規模なブース出展をしている米POWERMA。すでに米国内においてはワイヤレス充電において大きなシェアを確保している |
コンソーシアムに参加して「Qi」のロゴを用いる企業には、日本からパナソニック、三洋電機などが参加。世界的にはHTCやMotorola Mobility、Nokia、LG Electronics、Sony Ericssonといったモバイル端末自体の開発企業や、Verizon Wirelessといったキャリア、そしてBest Buyなどの量販店を含めて70社余りに及ぶが、現時点でPOWERMATはコンソーシアムに参加していない。だが、「Wireless Power Consortium」に参加している米国の家電量販店のBest Buyですら、POWERMAT製品群の取り扱いはかなり大規模に行なわれており、モバイル端末売り場はもちろんのこと、ゲーム機器売り場などでも一定の棚を確保している状況だ。すでに一定以上のシェアを確保している以上それがデファクトスタンダードになるというのがPOWERMAT側の言い分だろう。客観的に気になるのは、POWERMATのロゴマークがPをモチーフにしており、いっぽうの「Qi」はqiをそのままデザイン。エンドユーザーからみて、はたしてその区別が容易につくかどうかは、ちょっとした疑問が残る。
そのPOWERMATブースだが、Internatinal CES 2011で発表した製品を中心にしてメインホールである第8ホールに、大規模なブースを構えている。iPhone 3G/3GS、iPhone 4、GALAXY Sに対応する充電池付きジャケットを初め、スマートフォンによっては裏蓋ごと交換するスタイルなど、主要製品に対しては一通りのラインナップがすでに揃っている。加えてUSB端子やiPodの30ピンコネクタを経由して充電するユニットなど、いわゆる携帯するデバイスには全方位展開を目指している様子だ。またブース内には、空港などのロビーや待合室で見かける椅子や、事務用のデスクに設置する電気スタンド、そしてシボレーのセンターコンソールのサンプルなども展示してあり、インフラとしての整備にも意欲を見せていた。
Qiに対応している各社の製品群 |
一方の「Qi」だが、こちらはコンソーシアム参加企業のブースにそれぞれ対応製品が展示してある場合が多い。そのためPOWERMATに比べると、展示ホールにおける存在感はかなり地味なイメージだ。MWCに併催されたメディア向けのイベント「Mobile Foucs」では各社製品のまとまった展示があったが、いかに相互運用性を広範にアピールし、特に端末機メーカーとの協力関係を密接にしていけるかが今後のカギを握りそうだ。
やはりジャケットタイプのカバーやケースを追加購入するのと、最初から端末に統合されているのとではエンドユーザーに与えるイメージも普及のスピードも桁違いなものになることは想像に難くない。Mobile Focusの会場ではIntelnational CESに引き続いてiPhone 3G/3GSの内蔵バッテリ部分を内蔵バッテリ+電磁誘導ユニットに改造したプロトタイプモデルがデモンストレーションされていたが、やはりワイヤレス充電としての理想は端末が最初からこうした状態で出荷されるようになることだろう。ちなみにAppleは現時点で「Qi」のコンソーシアムに参加しているわけではなく、展示されているプロトタイプにApple自体が関わっているというわけではない。
●初出展となるGoogleブースは、ドロイド君達の楽園
2010年まではMobile World Congerss(以下、MWC)への出展社名簿に名を連ねてはいても商談用のミーティングスペースのみが用意されていて、いわゆる一般向けのブース出展は行なっていなかった米Google。2011年は同社として初めてとなる大規模なブース展示を行なった。MotororaやQualcomm、Samsungなど主要出展企業のブースが集中している第8ホールの一角に、ひと目でそれとわかるドロイド君達の楽園を築き上げていた。
ブースの上層からGoogleブースを見下ろした様子。各ドロイド君の周囲にスタンドが設置され、アプリケーションのデベロッパがデモンストレーションを行なっている |
Android 3.0(Honeycomb)は米国時間の2月2日に正式発表されている。このMWCにおいてGoogel自身はAndroidに関連して何かしら新しいアナウンスを行なっているわけではないが、同社ブースには人が絶えることがなかった。ブースの出展内容自体はアプリケーションのデベロッパにスタンドを提供して、ゲーム、ビジネス、ライフスタイルなどのテーマに沿ったデモンストレーションが行なわれるという、展示会としては一般的なもの。なかにはGoogle自身のスタンドもあるが、Google EarthやGoogle MapなどAndroid端末で利用できる同社のサービス紹介が中心になっている。
Googleと言えば、同社内における業務環境のユニークさも、たびたび話題となる。いつでも無料で食事ができる社員食堂の存在や、レクリエーションスペースなどの充実などがそれだ。カリフォルニア州マウンテンビュー市にある本社のビル群(Google Plexと呼ばれる)には、実際にスライダーまであるのだが、今回の出展ではそうした企業イメージを表現したブースになっていた。
ブース内にはスムージーバーが設置され来場者に無償で振る舞われたほか、2層構造になっているブースの2階部分から1層目へと滑り降りる小規模なスライダーまでが用意されるという凝りよう。ちなみにこのスライダーを利用すると、スライダー出口の排出時に写真撮影が行なわれ、その記念写真がもらえる仕組み。ディズニーランドをはじめとするアトラクション施設でよく見られる光景が、MWCの会場で繰り広げられている。
もう1つ、今回Googleが来場者を熱くさせたのが、Android端末やAndroid向けアプリケーションを開発する各社のブースに提供していたピンズの存在。Googleブースの案内板によれば全部で86種類あるものと考えられる。こうしたトレーディングアイテムの場合、シークレットアイテムが存在する可能性も十二分にあるのだが、さすがにそこまでは確認することができなかった。会場内では、MWCへの入場パスを付けるネックストラップに次々とこのピンズをつけて、展示ブースの視察そっちのけで収集や、他の収集家とのトレーディングに励む姿も多数みられた。
●そのほか、会場で見つけた製品群
NTTドコモブースの様子。同社は韓国のKTと相互利用できるNFCサービスの提供で合意したと発表済。ブースではクーポンやチケットをNFCに取り込んで、日韓をまたいで利用できるイメージがデモンストレーションされていた |
MWC 2011に合わせてNTTドコモは現行のおサイフケータイであるFeliCaからNFCへの移行ロードマップを明らかにしている。現行のシステムから2ステップでグローバルモデルのNFCへの移行が行われる見込み。1ステップ目はFeliCaとNFCチップをともに実装。2ステップ目でFeliCa機能をアプリケーション化して移行を完了させる予定。1ステップ目は2012年が目処とのこと。昨年12月に発売されたAndroid 2.3搭載のGoogle携帯「Nexus S」に続いて、今回のMWC 2011で発表されたSamsungの「GALAXY S II」にもNFCは搭載されている。Android 2.3が最初から搭載される端末を中心に、NFC搭載端末は今後も増加を続けていくことは間違いない。SamsungのブースではVISAとの連携によるクレジット決済のデモンストレーションなども行なわれていた。
(2011年 2月 21日)
[Reported by 矢作 晃]