【COMPUTEX 2010レポート】【ビデオカード編】
GALAXYとTulが展示した個性派ビデオカードを紹介

Tulが展示した5画面出力デモ。3画面でゲーム、2画面でWebブラウズなどを行なうという提案をしている

会期:6月1日~6月5日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



●GalaxyがデュアルGTX 470カードなどのプロトタイプを公開
GeForce GTX 470をデュアル搭載するビデオカード。中央にnForce 200チップが見える

 COMPUTEX会場近くのホテル内にプライベートルームを設けたGalaxy Microsystemsは、同社が独自に開発中のデュアルGPUビデオカードを披露した。

 製品は2種類あり、1つはGeForce GTX 470を2基搭載するもの。もう1つは、GeForce GTX 470とGeForce GT 240を各1基混載したものとなる。いずれもPCI ExpressブリッジチップであるnForce 200を介して接続されている。

 GeForce GTX 470×2のカードは、2GPUをSLI構成で使うことでグラフィックスパフォーマンスを向上させることを目的とする。同社では、GeForce GTX 480を1枚使うより高いパフォーマンスが出せるはず、としている。

 プロトタイプのため正確な消費電力は算定されていないが、ボード末端部には8ピン×2を備えており、これから素直に受け取れば、300~375W程度の消費電力と推測することができる。もっともGeForce GTX 470単体の消費電力は215Wなので、一部共通化できる部分があるとはいえ、nForce 200を追加したことも考えると、この最大375W供給というのは、かなりギリギリの設計か、不足する可能性すら考えられるあたりは不安の種だ。

 興味深いのは、DVI出力を3基備える点。GeForce GTX 470は同時出力が2系統に留まるため、単体GPU製品の場合には、同じインターフェイスを3つ備える意味はあまりない。これを3系統備えているということは、SLI構成を解除して各GPUを単体動作させることを考慮しているわけだ。さらにSLIブリッジ端子も備えており、Quad SLI構成も可能な仕様になっている。

 もう一方のGeForce GTX 470+GT 240構成のビデオカードは、GeForce GTX 470をメインで使い、GeForce GT 240でPhysX処理をさせることを目的としたカードになる。こちらの消費電力も算定されていないが、8ピン×6ピンの構成となっている。

 両モデルとも今回の展示はあくまで開発段階のプロトタイプとのことで、具体的な仕様などは決まっていない。発売時期については年内を目指しているとしている。

電源端子は8ピン×2となっている映像出力はDVI×3基を装備。各GPUをSLIを解除して動作させることで3画面出力を可能にする
こちらはGeForce GTX 470+GeForce GT 240のコンビネーションボード。GT 240をPhysX処理に用いるコンセプト電源端子は8ピン×1+6ピン×1の構成

ベイパーチャンバー方式のヒートシンクを搭載することで冷却能力を高めた、GeForce GTX 480搭載製品

 このほかのビデオカード製品では、同社の独自クーラーでは採用例が多いベイパーチャンバー方式のヒートシンクを用いたGeForce GTX 480を展示。ベイパーチャンバー(Vapor Chamber)方式とは、ヒートシンク内を中空にし、気化した蒸気によって熱を移動させる方式のヒートシンクである。ヒートパイプの気化蒸気よる熱移動を行なうヒートパイプを平面的にしたものと考えても大きくは相違ない。

 Galaxyでは、このベイパーチャンバーを用いたGPUクーラーによりGeForce GTX 470を1スロット占有で取り付け可能にしたモデルを今月から来月にかけて発売することは公表済みだが、GeForce GTX 480は残念ながら2スロットのままとなっている。リファレンスクーラーでは冷却能力に不安があるユーザーに、より能力の高いGPUクーラーを備えた製品を届けるのが本製品の目的と言えよう。この製品は8月以降の製品発売が予定されており、価格はリファレンス製品より数千円程度高くなる見込みとのこと。

 もう1つユニークな製品が、独自GPUクーラーのファンを交換可能なGeForce GTX 470搭載製品である。同社のGeForce GTX 400シリーズ搭載製品のGPUクーラーは、ファン部分のみを開閉することでホコリを取り除くなどのメンテナンスを容易にしている。

 本製品は、このファンを取り外し可能とし、交換用のファンを提供しようというコンセプトに発展させたものだ。ファンガードは独自の形状なので、一般的なファンへ自由に交換するというわけにはいかないのが惜しまれるところだが、Galaxyからさまざまなバリエーションのファンが投入されれば、手軽に冷却能力や静音性をチューニングするという楽しみが生まれそうだ。ただし、交換用ファンの製品化の時期は未定とされている。

化粧カバーを外した状態。2スロット占有タイプのヒートシンクとなるこれは先ごろ発売されたばかりの、オリジナルクーラー採用のGeForce GTX 465搭載製品。ファン部分が開閉するのが特徴
このファン開閉ギミックをさらに発展させて、ファンを交換可能としたGeForce GTX 470搭載製品ファンガードは独自形状であり、同社がオプション品として提供する

 ビデオカードに関連するユニークな製品としては、「Galaxy Magic Box HD」という5インチベイに装着する、モニタリング&オーバークロックユニットが展示された。温度の監視や、つまみによるオーバークロックを提供するもので、同社製ビデオカード用のソフトウェアである「XTREME TUNER HD」と連動する。発売は夏ごろで、価格は20~30ドル程度が見込まれている。

 さらに、iPhoneとPC本体をWi-Fiで接続し、iPhone上でモニタリングやオーバークロックを行なうツールも紹介された。これはiPhoneアプリとして無料で提供する予定となっている。現状ではWindows MobileやAndroidへの提供は予定されていないとのこと。

 今回のCOMPUTEXでは、ASUSTeKやGIGABYTEなどもアーキテクチャの細かい違いはあるがスマートフォンからのオーバークロックをアピールしており、1つのトレンドになっている。

 このほか、GalaxyではHD映像のワイヤレス転送規格の1つ「WHDI」に対応した製品を今年後半にリリースすることを明らかにした。これはトランスミッタをビデオカードに搭載し、レシーバとともに販売するというもの。ビデオカードとレシーバをバンドル販売するか、個別に売るかなどの戦略は未定という。

 デモではトランスミッタをオンボード搭載したGeForce GT 240を用いて映像転送を行なっているが、実際に製品展開する際にはGeForce GTX 400シリーズのミドルレンジ以下への搭載からスタートすることになるだろう、としている。

5インチベイに装着してオーバークロックやモニタリングを行う「Galaxy Magic Box HD」PCとWi-Fi接続してビデオカードのオーバークロックやモニタリングを行なえるiPhoneアプリWHDIのレシーバ兼ディスプレイ出力を行なうボックス。トランスミッタをオンボード搭載したGeForce GT 240と組み合わせたデモを実施した

●Tulは12画面出力可能モデルからNICコンボ製品までユニークな製品を展示

 GalaxyがGeForceシリーズの個性派ビデオカードを展示する一方、Radeonシリーズを搭載したユニークな製品を披露したのがTulである。

 まず、Radeon HD 5000シリーズを用いた多画面出力製品。AMDからのリファレンスデザインとしてはRadeon HD 5870 Eyefinity 6 Editionが登場しているが、TulではデュアルGPUビデオカードであるRadeon HD 5970を用いて、12画面出力を行なうビデオカードを展示した。製品名はそのまま「Radeon HD 5970 Eyefinity 12 Edition」である。

 これはRadeon HD 5970が搭載する2基のGPUを単体動作させて、1GPUから6画面ずつ出力するというもの。12画面出力を行なうためにMini DisplayPort×6基分のアドオンカードを取り付けている。

 ビデオメモリは4GBとなっており、各GPUに2GBが接続される。また、Radeon HD 5970では本来6ピン+8ピンの電源端子を備えるが、本製品は8ピン×2の構成となっている。なお、製品自体は完成に近く早期に出荷したいものの、Radeon HD 5970のデザインで2基のGPUを単体動作させるということについてAMDのドライバ側でサポートが必要になる部分があり、その対応を待っている状態だという。

 こうした多画面出力対応の製品として、Radeon HD 5770を用いた5画面出力製品も展示。多画面出力が可能なビデオカードを安価に提供できる製品として検討されたものだという。出荷は可能な状態であるが、価格や日本での発売は未定とのこと。

12画面出力に対応するRadeon HD 5970 Eyefinity 12 Edition。ボード表面に出力可能なディスプレイ数が大きく書かれるボードレイアウトは基本的にRadeon HD 5970と同じとのことただし、Mini DisplayPort×6基を追加するアドオンカードがボード裏面側に接続される
電源端子は8ピン×2基の構成に。標準のRadeon HD 5970より消費電力が増すこちらは5画面出力対応のRadeon HD 5770。ちょっと分かりにくいが、ファンガードの脇に「5」の文字が書かれているMini DisplayPort×5基を備える

 Radeon HD 5770搭載ビデオカードに、ゲーマー向けネットワークカードのKiller 2100相当の機能を統合した「Sniper」もユニークな製品だ。Killer 2100はTCP/IPのオフロードエンジンを持つ高機能ネットワークカード。これに使用されているプロセッサと、Radeon HD 5770をPLX製PCI Expressブリッジを介して、1枚のボード上に搭載したもの。249ドルが参考価格として示された。7~8月中の出荷を目指しているという。

 もう1つインパクトある製品だったのが、Radeon HD 5770のボード上にLucidのHydraを搭載するというもの。Lucid Hydraは、MSIやASUSTeKのマザーボードで採用例があるチップで、GPUの種別に関係なく連携動作を可能とするエンジンである。本製品のコンセプトは、Lucid Hydraを搭載するマザーボードでなくても、異種GPUを混在させたマルチGPUを実現するということである。価格や発売時期は未定とのこと。

Radeon HD 5770にKiller 2100相当のネットワーク機能を統合した「Sniper」DVI×2、HDMIに加えて、Ethernetを備えている電源端子は6ピン×1。担当者によれば、「ネットワーク機能の消費電力増はほとんどない」としている
Radeon HD 5770にLucid Hydraを搭載する「Radeon HD 5770 Evolution」。クーラーの下からチップが覗いている電源端子は6ピン×1。こちらも標準的なRadeon HD 5770に近い消費電力としているディスプレイ出力は、HDMI、DVI、DisplayPortを備える

 このほか、TulではオリジナルのPCBを設計した製品も目立った。水冷ブロックを備えるRadeon HD 5870搭載製品は、定格クロックで動作させていた前世代の製品に対し、オリジナルPCB版ではコアクロックをオーバークロックして出荷される。ボード長も短縮された。7~8月の出荷が予定されている。

 Radeon HD 5770搭載の1スロット占有型ビデオカードも展示。これもオリジナルPCBによって電源効率を高めることで発熱を抑え、かつオリジナルクーラーによって1スロット化を実現したもの。6ピン×1の電源端子は備えている。発売時期はやはり7~8月。

 同じくRadeon HD 5770を搭載したビデオカードでは、Low-Profile対応の製品も展示されている。クーラーは厚みがあり、2スロットを占有。ファンも2個搭載しているので、多少うるさいことは担当者も認めていた。同じく7~8月にかけて出荷される予定。

手前が新規に設計したオリジナルPCBを用いたRadeon HD 5870。前世代モデルよりボード長が短くなったほか、オーバークロックモデルとして出荷される1スロット占有タイプのRadeon HD 5770。オリジナルPCB、オリジナルクーラーにより実現したものという背面。クーラーが少し飛び出しているほか、メモリチップにもヒートシンクが取り付けられていることを確認できる
Low-Profile対応のRadeon HD 5770搭載製品。ファンは2基搭載で、2スロットを占有するサイズのクーラーとなる6ピン×1の電源端子も備えているこれはボードが長く、クーラーが重いハイエンドビデオカードを支えるためのパーツ。価格などは未定だが、早期に出荷を開始したいとした

(2010年 6月 7日)

[Reported by 多和田 新也]