【DEMOfall 09レポート】作業を効率化するツール/サービス編
ニコ動的に動画や音楽、写真を同時に楽しむ「Zorap」など

Symform社長兼共同創業者のPraerit Garg氏

会期:9月21日~23日(現地時間)
会場:Sheraton San Diego Hotel & Marina



●P2P的にファイルを分散バックアップする「Symform」

 本稿では、作業の効率化や生産性の向上など企業での利用に好適な製品に焦点を当てるが、個人で利用しても便利と思えるものが少なくない。まず、最初に紹介するのが、Symformのバックアップサービス「Cooperative Storage Cloud」だ。

 このサービスは、データを分割し、異なる地域に存在するストレージに保存することで、地震などの大規模な災害が発生し、データセンターが破壊されるようなことになっても、データを復旧できるのが特徴だ。

 今、ここにA-1からA-5までの5社がこのサービスを使っているとしよう。この5社はもともと、それぞれ自前のストレージをデータセンター内に持っている。そして、Symformのサービスを利用すると、バックアップの対象にしたデータが、自動的に分割され、他の4社のストレージにも別途保存されるようになるのだ。つまり、イメージとしては、P2P型のファイル共有システムをバックアップに使うような形となる。

 こうすることで、保存容量は無制限となり、かつ、もともとバックアップ用に用意していたストレージを利用するので、余計なエネルギーを使うことが無く、環境にも優しいとしている。

 当然、分割されたファイルは256bit AESで暗号化されるので、他社にのぞき見られても問題ない。また、同社が「RAID-96」と呼ぶ冗長化を行なっており、信頼性を確保している。性能については、分割されたデータに同時アクセスするので、高速に実行できるとしている。

 価格も月50ドル程度からと利用しやすい設定になっている。

Cooperative Storage Cloudで指定したバックアップを行なうフォルダにこのようにファイルを保存すると、バックグラウンドで自動的にリモートストレージにも分割バックアップされるファイルがバックアップされたかどうかは、ブラウザで確認できる
分割されたファイルはこのようにランダムな名前となっており暗号化されているので、開いても中身は分からない設定は専用のツールで行なう

□Symform Cooperative Storage Cloudのページ(英文)
http://www.symform.com/

 

●コンテンツの同時視聴機能を搭載したFacebookアプリ「Zorap」
Zorap CEO兼創業者のBarry Spencer氏

 このサービスは本稿で紹介する他の製品とは趣が異なり、効率化や生産性とはかけ離れている気もするが、同じセッションで紹介されたものなので、ここで扱う。

 Zorapが発表した「Zorap for Facebook」は、その名が示す通り、Facebook用のアプリケーションだ。だが、この単体版はすでに「Zorap」として公開されており、特にFacebookを利用していなくても、利用できる。Zorap for Facebookも、実態としては、Facebookから起動すると、ブラウザの別画面が開かれ、Zorapのサイトが立ち上がる。そのため、基本的に両者に機能に差はない。違いは前者はFacebookのアカウント、後者はZorap専用アカウントを使うことくらいだ。

 このサービスの基本的な用途はチャットルームで、自分用に作成した部屋に友人を招待し、文字あるいはWebカメラを使ってコミュニケーションを楽しむ。特徴的なのは、同じ画面上に画像や動画を表示し、同時に楽しめる点。

 画面左端の「PHOTOS」や「VIDEO」をクリックし、ローカルにある写真や動画を指定すると、Zorap上の画面に個別のウィンドウとして貼り付けられる。動画は参加者にとって同時に再生されるので、それに対してチャットするのは、テキストの表示方式こそ違うが、感覚としてはニコニコ動画(ββ)に似ている。画像関連だけでなく、音楽も共有可能で、画像と同じように貼り付けられる。動画/音楽の対応書式は、MP3、WMV、AVI、WMA、M4V、MOV、M4Aとなっている。

 貼り付けられるのは、ローカルコンテンツだけではない。画面左には、YouTubeやGoogleといったアイコンもある。YouTubeを押すと、動画の検索ウィンドウが表示され、そこから動画を選ぶと、それがZorap内に貼り付けられる。同様に、Googleを押すと、画像検索画面が開き、任意のWeb上の画像を貼り付けられる。

 もう1つ特徴的なのがユーザーインターフェイス。メインウィンドウには、貼り付けた画像や動画などと同じように、参加者各自のFacebookに登録された顔写真か、Webカメラをオンにしている場合は、その動画がウィンドウ表示される。これらのウィンドウはドラッグで好きな場所に配置でき、大きさも変更できる。この感覚は、これまでのソフト/サービスにはあまりみられないもので、最初はウィンドウ操作しているだけでも楽しめる。

Zorap for Facebook起動画面。チャットに誘う友人を選択する。オープンなルームも作成できるWebカメラを使ったチャットに3人が加わったところ。ちなみに、3人の少年はSpencer氏の実の息子画像を共有したところ
YouTubeを共有したところGoogle画像検索で画像を共有したところ各ウィンドウは自在に配置できる

□Zorapのページ(英文)
http://www.zorap.com/

 

●リモート削除機能のあるなオンラインファイル共有システム「LeapFILE Folders」
LeapFILE CEO兼創業者のPeter Chang氏

 LeapFILEは、企業向けのオンラインファイル共有システム「LeapFILE Folders」を発表した。現在、オープンベータが始まっている。

 同サービスを利用すると、ローカルドライブに「LeapFILE」の専用フォルダが作成される。一般的ローカルフォルダのように、エクスプローラからアクセスし、ファイルの保存などができるが、このフォルダの中身は、共有を設定した他のユーザーにも同じものが作成され、常に自動的に同期が取られるようになっている。そのためユーザーは、アップロード作業や、同期作業を行なう必要が無く、透過的に共有フォルダを利用できる。

 同時にファイルの暗号化によりセキュリティを確保しているが、このサービスの特徴的なのが、管理者がリモートから共有ファイルを削除する機能を搭載している点。オンラインストレージ側で暗号化がされていても、例えばノートPCを紛失したりすると、第三者がローカルから普通に共有ファイルにアクセスできてしまう。そのような場合は、管理者が特定のPCのローカルドライブ内の共有ファイル/フォルダをリモートから削除し、データの流失を防ぐことができるようになっている。

LeapFILE Foldersを使うと、共有フォルダはこのように表示されるローカルフォルダ同様、エクスプローラからフォルダやファイルを自由に追加したりできるアクセス権限はファイル単位で指定可能
共有フォルダへのアクセス権限があるユーザーは、自分のローカルドライブにも同じフォルダが作られるので、そこにファイルを追加すると全共有ユーザーのフォルダにも瞬時に同期されるノートPCを紛失した際は、リモートからローカルドライブ内の共有ファイル/フォルダを削除可能

□LeapFILE Foldersのページ(英文)
http://oxygen.leapfile.com/

 

●ユーザーに代わって操作までしてくれるヘルプツール「LEO」
Kryon Systems CEO兼創業者のEmma Butin氏

 Kryon Systemsは、アプリケーションの操作機能を搭載したヘルプツール「LEO」を発表した。

 LEOは、特定のアプリケーションを使っていて、ある操作方法が分からないときに呼び出し、その質問を入力すると、回答が得られる。ここまでは、アプリケーションのヘルプと変わらないが、LEOは回答を表示するだけではなく、その操作までもユーザーに代わって実行するのである。

 デモでは、Excelを起動して、表を表示。この行と列を入れ替えるため、LEOを起動し「Convert rows into columns (列を行に変換)」と入力すると、行と列の「Transpose (置換)」機能に関する答えが得られる。

 そこで、その答えの右横に表示される「Start」ボタンを押すと、LEOがユーザーに代わってマウスを操作し、メニューからTransposeを選択して実行するのである。もちろん、全ての操作が自動とは行かず、この場合だと、対象となるセルの選択と、置換後の表を表示させるセルの場所の指定については、一時的にユーザーに操作が戻され、指定を行なう必要がある。また、ユーザーへの操作指示は、音声でも行なわれる。

 LEOは、Learn(学習)、Evolve(進化)、Operate(操作)を意味しているが、当然、LEOに学習させる操作というものが必要となる。これについては、Kryon Systemsが各アプリケーションメーカーにLEOのライセンスを販売し、メーカーがLEOに教え込み、ユーザーはそのアプリをより効率的に利用できるようになる、というビジネスモデルを採用している。

 そのため、Windows用であれば、Webアプリであれなんであれ対応可能となる。

LEOを起動し、質問を入力すると、答えの一覧が下に表示正しいと思われる回答を選んで、Startを押すと
LEOがマウス操作を行ない、アプリケーションを操作する。必要に応じてユーザーの操作が文字と音声で求められるこれにより最低限の操作で、処理を完了できる

□LEOのページ
http://www.kryonsystems.com/about%20leo

(2009年 9月 25日)

[Reported by 若杉 紀彦]