イベントレポート
単なるSnapdragon対抗ではない、「RTX Spark」が導くWindowsの新時代
2026年6月2日 10:07
NVIDIAは6月1日(台湾時間)より、COMPUTEX 2026に合わせて、同社のAIソリューションなどを紹介する「GTC Taipei」を開催している。その基調講演として、台北音楽中心(Taipei Music Center)において、NVIDIA CEOのジェンスン・フアン氏が講演を行なった。
その中で、Arm版Windowsに対応したSoC「RTX Spark」を発表した。RTX Sparkは、MediaTekとの協業で作られた20コアのGrace CPU、1TFLOPS(NVFP4時)のBlackwell CPU、最大で128GBの共有メモリ(基板上にオンボード搭載)を搭載したスペックを持つプロセッサで、Arm版Windowsが動作する。
フアン氏は「RTX SparkはPC上でネイティブにエージェントを常時動かすことを前提としたアーキテクチャだ」と述べた。同時に、Nemotron 3 UltraというAI推論モデルを公開し、ClaudeやCodexなどのクラウド上のモデルと組み合わせて、エージェント型AIをWindows OSローカルで実行できるようにしてユーザーの利便性を向上させることを狙っていることを語った。
GB10をWindows向けに転用したと考えられるRTX Spark
RTX Sparkのスペックから推定するに、昨年(2025年)のGTC 25で正式に発表された「NVIDIA GB10 Grace Blackwell Superchip」(以下GB10)とほぼ同じプロセッサだ。CPUはMediaTekと協業で作られた20コアのArmアーキテクチャのGrace CPU、1TFLOPSのBlackwell GPU、最大で128GBの共有メモリというスペックはGB10と同じだからだ。また、CPUとGPUがそれぞれ別チップとして搭載されているという物理的な特徴もほぼ同一で、物理的には完全に同じでなくても、かなり似通ったものだと判断できる。
ではGB10との違いは何かといえば、Windowsに対応させるためのGPUのデバイスドライバを用意すること、モダンスタンバイのようなWindows側の仕様にミートするような調整、さらにはノートPCに入るような熱設計の調整などになるだろう。
もっとも、GB10はミニPCに入るような熱設計の枠で設計されていたと考えると、ハードウェア的に特に大きな変更をしなくても、そのままノートPCに持ってくることは可能だ。デバイスドライバやモダンスタンバイの対応で半年ほど遅れたと思われる。
Arm版Windows自体は、2018年の提供開始から既に8年近くが経過しており、当初からSoCを提供してきたQualcommとMicrosoftの協業により、Armネイティブアプリも増加しており、WebブラウザやOfficeアプリなどの多くがArm64EC(x64のコードを含むArm64アプリの実行環境のこと)を含んだArmネイティブアプリとして登場している。
Qualcommによればユーザーの利用時間の90%以上がArmネイティブアプリに対応しているほか、Microsoftが提供しているx86/x64アプリをArm64命令にリアルタイムに変換しながら動作するPrismバイナリートランスレータも、昨年にAVX/AVX2の変換に対応するなどしており、ゲームも含めてアプリの互換性問題はほぼ解消し、ロングテールのアプリ(たとえば企業内で使われている独自ツールや過去のWindows向けに特化して作られているビジネスツールなど)の互換性問題解消に焦点は移りつつある状況だ。
エージェント型AIをローカルでもクラウドでも実行できる環境となるRTX Spark
ただ、そのままだと「単にSnapdragon X/X2シリーズの代替が登場した」と消費者に受け取られることになるため、NVIDIAは「Windows OS環境で新しい使い方ができるプロセッサ」だというメッセージを用意している。
フアン氏は「RTX SparkはPC上でネイティブにエージェントを常時動かすことを前提としたアーキテクチャだ」と説明し、Windowsでのエージェント型AIをローカルに実行できる環境だと強調した。
RTX Sparkでは、今回の基調講演でNVIDIAが発表したオープンソースの推論用AIモデルであるNemotron 3 UltraなどのAIモデルをローカルで実行できる。そのNemotron 3 UltraとMicrosoftが提供するクラウド上のモデル(Anthropic Claudeや、OpenAI Codexなど)を組み合わせて、エージェント型AIを利用して設計支援、ゲーム、クリエイティブ用などのさまざまなユースケースを実現できると説明した。
その例としてAdobeのCreative Agentが紹介され、PhotoshopやPremiereで2倍高速に動作することが明らかにされた。
既にオープンソースOSによりGB10との組み合わせで実現されていたエージェント型AIの実行が、RTX SparkではWindows OS環境下で動かせるようになる、これがフアン氏のもっとも強力なメッセージということになる。
なお、Microsoftは6月2日(米国時間)より「Microsoft Build」という開発者向けの年次イベントを開催する予定で、その中でこうした詳細などに関して説明される見通しだ。
複数のOEMメーカーからノートPCが、ミニPCやワークステーションPCなども計画されている
フアン氏はRTX Sparkを採用する見通しのOEMメーカーに関しても明らかにした。具体的にはAcer、ASUS、Dell、GIGABYTE、HP、Lenovo、Microsoft、MSIなどで、既にMicrosoftからはSurface Laptop Ultraもリリースされている。
また、GB10を搭載したDGX SparkのようなミニPC、さらにはDGX Stationのようなワークステーションも公開されており、今後そうした製品が市場に登場する可能性が高い。




























