イベントレポート
Qualcomm、初のSnapdragon 820搭載スマートフォン製品を公開
~Audiの自動車向けSnapdragon採用や高音質Bluetooth音声コーデックなど、プレスカンファレンスで発表
(2016/1/6 17:31)
Qualcommは、CES 2016のプレスデーに記者会見を開催し、同社の最新ソリューションについて説明した。Qualcommは2015年、最新ハイエンド製品として「Kryo(クライヨ)」の開発コードネームで知られる自社設計の64bit ARMv8コアのCPUを採用したSoC「Snapdragon 820」を発表したが、今回はそのSnapdragon 820を搭載した最初のOEMメーカーの製品として、中国LeTV(ラティービー)社の「LeMax Pro」を紹介した。
また、Qualcommは昨年自動車向けのSoCとしてSnapdragon 602Aを発表したが、今年はそのOEMメーカーとしてドイツの自動車メーカーAudiが2017年に採用した自動車を投入することも合わせて明らかにした。さらに、自動車向けのSnapdragon 820として、「Snapdragon 820A/820Am」を今後投入する計画であることを明らかにし、デモシステムを公開した。
Snapdragon 820を搭載した製品を最初に発表したのは中国LeTV
記者会見には、同社CEOのスティーブ・モレンコフ氏が登壇し、今回のCESに合わせて各種新製品の発表を行なった。モレンコフ氏は「全てのデバイスは、コネクテッドでスマートなデバイスへと進化しつつある。現在業界は変わりつつあり、スマートフォンだけでなく、自動車、スマートシティー、ウェアラブルなどにアプリケーションは広がっており、市場規模は2倍になりつつある」と述べ、Qualcommがカバーできる市場が広がっており、同社にとってのビジネスチャンスは拡大しているとした。
最初に触れたのは、最新ハイエンド製品Snapdragon 820だ。Snapdragon 820は2015年の秋に発表された製品で、現在ハイエンドスマートフォンに採用されている「Snapdragon 810」の後継となる。プロセスルールが16nmプロセスに微細化されているほか、Kryoの開発コードネームで知られる自社開発の64bit ARMv8のCPUへと進化している点などが特徴となる。
モレンコフ氏は、Snapdragon 820の採用例が、2015年秋時点での60製品以上から、80製品以上へと増えたことを明らかにし、搭載製品が増え続けていることをアピール。その最初の搭載製品として、中国のメーカーであるLeTVのスマートフォン、Le Max Proを紹介した。Le Max Proは、Qualcommが提供している指紋認証システム「Snapdragon Sense ID」の仕組みを利用した超音波式指紋センサーを搭載しているほか、WiGigとしても知られる、IEEE 802.11adとして規格化されている60GHzのミリ波を利用する高速無線通信の仕組みを搭載することなどを明らかにした。
Snapdragon 602Aを搭載した自動車をAudiが2017年に出荷開始、820A/820Amも発表
続いて、今年のInternational CESでも引き続き大きなテーマになっている自動車向けのソリューションについて触れた。モレンコフ氏は「Qualcommは既に3億4,000万個のASICを20以上の自動車メーカーに出荷しており、自動車事業に力を入れている。自動車がコネクテッドになることで、新しく定義される」と述べた。
Qualcommは2015年のCESにおいて、「Snapdragon 602A」という自動車向けのSoCを発表した。Snapdragon 602Aは、スマートフォン向けSoCである「Snapdragon 602」をベースとして、自動車グレード(温度やEOLの延長など)にした製品で、IVI(車載情報システム、日本で言えばカーナビに相当)やメータークラスター向けとしてリリースされている。このSnapdragon 602Aを最初に採用した自動車メーカーとして、ドイツの自動車メーカーであるAudiが紹介され、その担当者が壇上に立ってプレゼンテーションが行なわれた。
Audi 電気開発担当上級副社長のリッキー・ハウディ氏は、「第2世代のMIBにはSnapdragonを採用する。第2世代のMIBはA5などに採用され、2017年に登場する予定だ」と述べ、同社のIVIやメータークラスタ向けのコンピューティングモジュールとなっているMIBのSoCとして、Snapdragon 602Aを採用することを明らかにした。なお余談になるが、現在AudiのMIBにはNVIDIAのTegraがSoCとして採用されており、これはQualcommがその市場を奪ったことを意味する。
ハウディ氏は「Qualcommの自動車向けSoCを採用した理由は、ロードマップが強力だったからだ」と説明すると、それを受けてモレンコフ氏が同社の自動車向けのSoCのロードマップを説明した。同氏によれば、Qualcommは今後Snapdragon 820の自動車バージョンを順次投入する。投入予定のSoCには820A、820Amがあり、820AmがLTE-Aモデムを内蔵版となる。
モレンコフ氏はSnapdragon 820Aのデモを行ない、メインのIVIの液晶は4K/UHD、メータークラスター、およびバックモニターの2つの表示をSnapdragon 820Aだけで実現する様子を公開した。また、モレンコフ氏は「スマートフォンと自動車の最大の違いは製品のライフサイクル。その需要に応えるため、モジュールでの提供も行なっていく」と述べ、自動車メーカーが自動車のライフの途中で、IVIのSoCだけを簡単にアップグレードすることもできるよう、モジュールの形で提供していくことも明らかにした。
Snapdragon搭載のドローンやaptXを24bit化したaptX HDを発表
このほか、モレンコフ氏はIoT(Internet of Things)に関する話題として、スマートシティー向けのLTEモデムや、同社のドローン向け製品となる「Snapdragon Flight Platform」が、中国Tencentが開発したドローンに採用されたことなどを発表した。
また、QualcommはBluetoothのコントローラICの開発で知られていたCSRを買収したが、そのCSRが開発してきたBluetoothオーディオ向けの圧縮コーデック「aptX」の最新版となる「aptX HD」を発表したことを明らかにした。従来のaptXではオーディオの入出力が16bitだったのに対して、aptX HDでは24bitへ拡張されており、ハイレゾ相当のオーディオをBluetoothでも転送することができるようになる。