イベントレポート

冷却を極めるNoctua、次の一歩はポンプ不要の二相サーモサイフォンクーラー

 台湾にて開催中のCOMPUTEX TAIPEI 2024にて、Noctuaが新製品やプロトタイプの展示をした。

NH-D15 G2

NH-D15 G2

 まずはCPUクーラーの「NH-D15 G2」だ。Noctuaの定番クーラーとなるNH-D15だが、日本では2018年の登場ということで発売から長い時間が経過している。今回ようやくアップグレードされた形となる。発売は2024年6月下旬となる(日本でのスケジュールは不明)。

 主な変更点、特徴は以下の通りだ

  • ファンのP-Q性能と音響の最適化
  • フィンピッチが1.9mmから1.6mmになり表面積が20%増加
  • ヒートパイプが6本から8本に増加
  • オフセット設計によりPCI Expressスロットクリアランスが向上し、全体の奥行きが9mm減少
  • AM5用のオフセット オプションを備えたTorxベースのSecuFirm2+マウントシステム
  • NM-SD1ドライバー付属
  • AM5用の「NA-TPG1」サーマルペーストガード付属
  • LGA1700ソケットでの接触を改善するNA-ISW1スリムワッシャー付属
測定用として安定化電源よりNH-D15には約460W、NH-D15 G2には約620Wの負荷をかけている
約160Wの差があるにも関わらずどちらも温度は約60℃で落ち着いている
このようなダミーヒーターにクーラーが取り付けられている

 また、ヒートシンクの形状により3つのバージョンが用意されており、

  • NH-D15 G2
  • NH-D15 G2 LBC
  • NH-D15 G2 HBC

という3つのSKUが用意される。

 フラット形状に近いLBC→標準→HBCの順番でだんだん凸形状がきつくなっていく。

 なぜ3つも用意するのかと言えば、たとえばIntel CPUの場合、ヒートスプレッダが凹んでいることがあり、CPUにあわせて適応するヒートシンクを選択すればより高いパフォーマンスが引き出すことができるという。

 また、Intel向けとして1mmのワッシャーが付属しており、これを使うとCPUへの圧力を下げる調整が可能だ。

NH-D15 G2の付属品
HBC、標準、LBCの3種類のヒートシンクを使った測定結果。AMD AM5の右側は7mmオフセットした状態、Intel LGA1700の右側は1mmのワッシャーを使った状態
Ryzen 9 7950Xで3つのバージョンのNH-D15 G2とNH-D15を比較したグラフ
Intel Core i9-13900Kで3つのバージョンのNH-D15 G2とNH-D15を比較したグラフ

NF-A14x25 G2

 次にケースファンのNF-A14x25 G2だ。

 LCP(液晶ポリマー製)のインペラを採用し、ケースとファンブレードの隙間は0.7mmとギリギリまで詰め込んでいる。

丸形のラウンドフレーム、正方形のスクエアフレームおよびchromaxバージョン
簡易水冷のラジエーター、CPUファン、ケースファンとして使った場合の比較。NF-A14と比較して約3℃下がっていることが分かる

 昨年(2023年)の段階でほぼ完成状態だった本製品だが、四角形のスクエアフレームタイプは、ラジエータのような高温環境で長期間使用していると圧力によってフレームがねじれてしまう問題が確認された。そこで防振ガスケットもしくはload relief……つまり負荷軽減の機構(小さな隆起)が入った防振パッドを使うことで解決したようだ。

 また、丸形のラウンドフレームタイプとなる「NF-A14x25r G2」についても構造強化と新しいファンクリップによりねじれを解消している。

 丸形のラウンドフレームタイプが2024年6月、四角形のスクエアフレームタイプが2024年の9月、そしてそこから数カ月遅れてスクエアフレームのchromaxバージョンが来年の初め……2025年第1四半期に発売される予定だ。

ねじれに対する解決方法

 また、NF-A14x25 G2の設計をベースとした12cm版も準備されており、こちらは2025年Q1に発売されるという。

小型なマシンを作る時に重宝しそうだ

扇風機化キット

 市場を見れば分かる通り、PCケースファンについてはPC以外にも活用されている現状だ。そこでNoctuaのケースファンを扇風機として転用できるようになる「HOME product line」が以下の通りだ。これらはワールドワイドで5月から発売を開始している。

  • NV-AA1……エアアンプ
  • NV-FM1……ファンマウント
  • NA-FC1……ファンコントローラー
  • NV-PS1……230V/115W対応のACアダプタ。EU、US、UKプラグアダプタ同梱
  • NV-FS1……NF-A12x25、NV-AA1、NV-FM1、NA-FC1、NV-PS1が同梱されたセット
組み立てた場合のイメージ(あくまでも活用方法の一例)
ファンマウントの裏面。あらゆる物に取り付けられそうな汎用性だ。

 また、デバイスを冷やす用途に適したセットも準備されている。

  • NV-MPG1……ガスケット
  • NV-MPP1……パッド
  • NV-FG01……ファンガード
  • NV-FS2……NF-A12x25 PWM、NV-MPG1、NV-MPP1、NV-FG01、NA-FC1、NV-PS1が同梱されたセット
ルーターや外付けHDDのようなデバイスを冷やすような用途に最適
NV-MPG1ガスケット
NV-MPP1パッド
このような用途を想定している

二相サーモサイフォンクーラー

 こちらはプロトタイプの新しいクーラーとなるため紹介する。このプロジェクト自体は2017~2018年に社内でアイデアを出しており、今回ようやくプロトタイプの展示となった。

 一見簡易水冷クーラーに見えるが、二相サーモサイフォンクーラーというものとなる。

 簡易水冷クーラーの場合は、クーラント液をポンプで循環させているが、二相サーモサイフォンクーラーの場合は冷媒を一度蒸発(気化)させコンデンサ(復水器)で冷やすというものだ。そして蒸気から液体に戻ると重力の力で再びCPU側に戻っていくというものでポンプが不要になる。

 ポンプがないということは可動部品もなく振動もしないわけだ(ファンはあるが……)。

 注意したい点としては、重力の力を利用するため、必然的にトップマウント(PCケースの上)にする必要がある。

 性能についてはキロワット(kW)レベルまで対応できるという。

 現在は通常のきれいな水でプロトタイピングを行なっているそうだ。実際に使用する冷媒についてはまだ明かされなかったが、現代の冷蔵庫やエアコンで使われている物と同じとのこと。

 また寿命について簡易水冷クーラーの場合ポンプの寿命がまず訪れることが多いが、二相サーモサイフォンクーラーの場合はポンプがないため、寿命のポイントとしてはチューブとなる。Noctuaとしては10年以上の寿命のものを検討しているとのことだ。

 そしてそのライフサイクルの中でソケットが変更された場合、新しいマウントキットをリリースする想定だという。

 直近発売されるような製品ではないのだが、来年のCOMPUTEX TAIPEI 2025でのアップデートに期待したい。

プロトタイプとなる二相サーモサイフォンクーラー
内部の冷媒を蒸発させる