イベントレポート
Micron、PCIe 4.0対応の176層TLC NAND採用M.2 SSD
2021年6月2日 10:10
5月31日~6月30日(台北時間)にオンラインで開催されている「COMPUTEX TAIPEI 2021 Virtual」の分科会「2021 COMPUTEX Forum」のオープニング基調講演にて、Micron Technology(以下Micron) CEOのサンジェイ・メロトラ氏が登壇し、同社のビジョンや新製品などに関しての講演を行なっている。
フラッシュメモリやDRAMの新製品の量産出荷について発表。前者は176層TLC 3D NANDを採用したSSDで、PCI Express Gen 4/NVMe 1.4に対応している製品となる。ハイエンド向けにM.2 2280フォームファクタで提供する「Micron 3400」(最大2TB)、メインストリーム向けにM.2 2230/2242/2280の3つのフォームファクタで提供する「Micron 2450」(最大1TB)の2つシリーズを用意する。
後者は、Micron1αノードで製造されたLPDDR4xで、今月にも量産出荷を開始。前世代の1zノードと比較して15%ほど消費電力が下がるという。
Micronブランド向けとなる176層TLC NAND採用SSDモジュール
Micronは、フラッシュメモリとDRAMの両方を製造する半導体メーカー。自作PCユーザーには「Crucial」(クルーシャル)の方がよく知られているかもしれない。OEM向けはMicronブランド、一般消費者(自作PCユーザー)向けの製品はCrucialブランドと使い分けている。
今回発表された製品はいずれもMicronブランドで、PCメーカーなどのOEMメーカーに供給される製品となる。ただ、Crucialブランドの製品もこうしたOEM向けの製品がベースになっているので、そのうちこの製品を元にしたCrucial版が登場することになるだろう(ただし、今回MicronはCrucialブランドの製品の登場については何も言及していない)。
どちらも、同社が2020年11月に量産出荷の開始を明らかにした176層3D NANDフラッシュメモリに基づいたSSDで、コントローラはPCI Express Gen 4に対応している。具体的には以下の2つのシリーズが用意されている。
Micron 3400 | Micron 2450 | |
---|---|---|
容量 | 512GB~2TB | 256GB~1TB |
インターフェイス | PCI Express Gen 4/NVMe 1.4 | |
NAND | 176層 TLC | |
フォームファクタ | M.2 2280(シングルサイド) | M.2 2280/2242/2230(シングルサイド) |
同社によれば、Micron 3400は従来製品に比べてリードスループットが2倍、ライトスループット85%向上しているとのこと。フォームファクタはM.2 2280(シングルサイド)のみで、ハイエンドノートPCやデスクトップPCなどでの採用が見込まれる。容量は512GB~2TBとなる。
Micron 2450はもう少しメインストリーム向けの製品で、フォームファクタはM.2 2280だけでなく、M.2 2242、M.2 2230(いずれもシングルサイド)でも提供される。
MicrosoftのSurface Proシリーズ(Surface Pro 7+とSurface Pro X)がM.2 2230を採用するなど、モバイルノートPCではM.2 2230を採用する製品が増えている。また、ThinkPad X1 NanoやThinkPad X1 TitaniumのようにM.2 2242を採用する製品も増えつつあり、そうしたモバイルノートPCでもPCI Express Gen 4のSSDが搭載可能になる。
なお、気になるPCI Express Gen 4に対応したコントローラだが、Micron 3400は自社製、Micron 2450はサードパーティ製とだけ明らかにされており、後者がどこのコントローラICであるのかは明らかにはされていない。
Micronによれば、AMD、Intel、Microsoftのモダンスタンバイでの動作検証をパスしており、IntelのEvo Platformの認証機関となるIntel Project Athenaオープン・ラボのSSDテスト要件も満たしているとのことだ。
1αノードのLPDDR4xは今月から量産出荷開始。消費電力は前世代比15%減
Micronのもう1つの主力事業であるDRAMでは、1αノードで製造されるLPDDR4xについて、今月中に量産出荷を開始することを明らかにした。
通常、半導体製造技術の世代は、14nm、10nm、7nm……のように表現される。これは半導体の回路の最小単位であるトランジスタのゲート長で世代を示している。なお、最近は3Dゲートが一般的なため、ゲート長だけで世代を表現するのは難しくなりつつある。
DRAMでも、プロセスノードの世代を示す名称として、従来は22nmとか28nmなどのゲート長を使っていた。しかし、十数nm世代に入ったときにこの呼称をやめ、1x、1yなどといった数字とアルファベットの組み合わせを利用するようになった。
これは、以前のDRAM業界が1nmの進化で「新ノードへ移行!」といったマーケティングキャンペーンを打って、相互に疲弊していたという事態を受け、業界全体でもう少し幅広い世代表現をしようという「紳士協定」が作られたことが背景にある。
DRAMメーカーのロードマップなどでは、10~19nm世代には1x、1y、1z、1α、1βという5つの世代があることになっている。各メーカーともに、1xが18nmなどといった対応は公表していないのだが、10nmが1βだとすると、1αは12nm、1zは14nm……という計算になる(実際には各社とも多少の揺れはあるとされている)。
これまでDRAMの製造に一般的に利用されてきたのは1z世代で、現在DRAMベンダーは1α世代のプロセスノードへの移行を開始している段階だ。
今回同社が発表したのは、この1αノードで製造されるLPDDR4xの量産出荷を今月中に開始するというもので、1zノードで製造されていた従来世代の製品に比べて、消費電力が15%削減され、密度が40%向上している。
また、1α世代で製造されるDDR4もすでに量産出荷が開始されており、今後サーバー向けのメモリモジュールや、デスクトップPC向けのメモリモジュールなどに搭載されてユーザーの手元に届くことになる。
DDR5の開発に向けて業界をあげた取り組みも実施
Micronでは、次世代のメインメモリ技術となるDDR5の実現に向けた取り組みも加速している。同社によれば、DDR5はDDR4と比べて最大で2倍のデータレート(最大6,400Mbps)を実現でき、同じデータレート(3,200Mbps)であれば、DDR4-3200が16.8GB/sであるのに対して、DDR5-3200は22.8GB/sとなるなど、より効率が高まっている。そうした技術的な進化により、実現できるメモリ帯域幅が高まり、システム全体の性能を向上させることができる。
同社は「Micron DDR5 Technical Enablement Program」という開発プログラムを業界の各社とともに行なっており、これを通じてDDR5に対応したメモリコントローラを開発するCPUメーカーやそのOEMメーカー(マザーボードベンダ)などに対して、DDR5のサンプルモジュールの提供などを行なっていくと説明した。