イベントレポート

内蔵GPU性能、第10世代CoreはRyzen 7 3700Uを上回る

~新バージョンのIntel Graphics Command Centerも配布開始

Intelが公開したIris Plus(25W)とRyzen 7-3700U内蔵のRadeon RX Vega 10の比較

 Intelは、5月28日にCOMPUTEX TAIPEIの基調講演に相当する「COMPUTEX Industry Opening Keynote」にて、第10世代Coreプロセッサー(開発コードネーム:Ice Lake、以下第10世代Core)の生産開始・出荷開始を発表。その翌日となる5月29日にも、NUC Compute Element、2画面PCのリファレンスデザインとなる開発コードネーム「Honeycomb Glacier」などを発表するなど精力的な発表を行なっている。

 5月29日の夕方には「Odyssey」(ギリシア神話のオデュッセイアのこと)と名付けたグラフィックス関連のイベントを行なった。Intelは昨年(2018年)より内蔵GPUの強化に力を入れており、とくに今回発表された第10世代Coreには、同社が「Gen11」(第11世代)と呼ぶ強化されたGPUが内蔵されており、性能が大幅に強化されている。

 IntelはこのGen 11の内蔵GPUでは1080pであればメジャーなタイトルの多くので十分ゲームができると説明しており、今回のOdysseyでもIntelが、AMDのAPU(Ryzen 7 3700U、Radeon RX Vega 10)との比較データを示し、Gen11 GPUがそれを上回っているとアピールした。

第10世代Coreでは25WのcTDPを用意。Razer Blade Stealthが公開される

Razer Blade Stealthを紹介するIntel 上席副社長 兼 クライアント・コンピューティング 事業本部長 グレゴリー・ブライアント氏

 Odysseyのプレゼンテーションに登壇したIntel 上席副社長 兼 クライアント・コンピューティング 事業本部長 グレゴリー・ブライアント氏は「昨日(29日)に第10世代Coreを発表した。この第10世代Coreには、Gen11という新しいGPUが内蔵されている。熱設計の枠を25Wに設定すると、非常に高い性能を発揮する。今日はその25Wで設計されているノートブックPCとしてRazerのBlade Stealthを紹介したい」と述べ、Blade Stealthを披露した。

Razer
Razer Blade Stealth

 IntelのCPUは、OEMメーカーが参照するデータとしてTDPという枠が設定されており、ノートPCメーカーはそのTDPを参照してこの程度の熱がCPUから発生すると想定して設計を行なう。薄型ノートPC向けは一般的に15WというTDPの枠が設定されているが、cTDP(Configurable TDP)という仕組みが用意されており、OEMメーカー側がTDPの枠を超えた、あるいはそれよりも下回る設計を設計を施せる。

 TDP枠を超えた設定(Intel用語ではcTDP up)に設定すれば、より高いクロック周波数で動かすことができるので性能は向上するが、消費電力は増え、より大規模な放熱機構が必要になる。逆にTDP枠を下回る設定(Intel用語ではcTDP down)に設定すれば、電力は減り放熱機構は最小限で済むが、性能が下がる。

Iris Plus(64EU)でTDPを25Wに設定した場合のフレームレート、110fpsを超えている
Iris Plus(64EU)でTDPを標準の15Wに落としたときのフレームレート、70fps前後だった

 Gen11 GPUには64EUないしは48EUのIris Plusと32EUのUHDという2つのブランドがあるが、トップグレードの64EUのIris PlusはcTDP upが25W、cTDP downが12Wに設定されている。したがってOEMメーカーがcTDP upの25Wを前提にして設計すれば、GPUのクロックを引き上げてより高い性能を発揮できる。

 別記事(Intel、ノートPCをモジュール化する「NUC Compute Element」発表)でも紹介しているとおり、cTDP upの25Wに設定した場合は100fpsを超えるフレームレートがでており、TDP 15Wに設定した場合には70fpsになっている。

 今回ブライアント氏が紹介した第10世代Coreを搭載したRazer Blade StealthはこのcTDP upの25Wに対応できるように設計されており、Gen11が持つ性能をフルに発揮させることができる。

25W設計のGen 11はAMD Ryzen 7 3700UのRadeon RX Vega 10に勝てる

第10世代CoreのIris PlusとRyzen 7 3700UのRadeon RX Vega 10の比較

 発表のなかで、ブライアント氏はRazer Blade Stealthと、AMDのノートブックPC向けの製品となる第2世代Ryzen MobileのRyzen 7 3700Uに内蔵されているGPU「Radeon RX Vega 10」との比較データを公開。

 それによれば、Gen 11 GPUは、1080pの設定でOverwatch、Rainbox Six Siege、Rocket League、World of Tanksのいずれでも、Ryzen 7 3700U内蔵のRadeon RX Vega 10を上回っているという。

 Radeon RX Vega 10は、Vegaアーキテクチャの内蔵GPUで、単体GPUが64コアや56コアと大きなコアを搭載しているのに対して、10コアに制限されている。それでも、内蔵GPUとしては高い性能を持っているGPUとして認識されてきた。それを超える性能というのは大きなトピックだろう。

Intel Graphics Software事業部 IA/グラフィックス/ソフトウェア部長 リサ・ピーアス氏

 また、Intel 副社長 兼 Intel Graphics Software事業部 IA/グラフィックス/ソフトウェア部長 リサ・ピーアス氏は、Intelが3月のGDCで構想を明らかにしてアーリーアクセス版を公開してきたIntelの内蔵GPUの設定を変更する「Intel Graphics Command Center」(インテル・グラフィックス・コマンド・センター)の最新版を、Windows Store経由で配布を開始したと明らかにした(インストールはWindows 10のMicrosoft Storeからできる)。

Intel Graphics Command Centerの特徴
新しいスキン
1クリックで主要なゲームタイトルに最適化
省電力の設定が可能に
Microsoft Storeからダウンロード可能に

 Intel Graphics Command Centerは従来のWin32ベースの「Intel Graphics Control Panel」(インテル・グラフィックス・コントロール・パネル)に変わって導入された内蔵GPUを設定するツールで、ゲーム時に最大性能を発揮するような設定を自動で行なったり、ゲームごとに手動でユーザーが設定できる。

 また、従来Intel Graphics Control Panelに用意されていた省電力や動画再生時の表示品質設定などができるようになっているが、新バージョンではそれらに加えて、スキンがユーザーが変更できるようになっていることが強化点となる。

 Intelは今後もこうしたツールの強化や、メジャータイトルがリリースされるごとにDay0ドライバーと呼ばれる安定性の保証はないが最適化したドライバーの提供などソフトウェア面で強化して、この面で先行しているAMDとNVIDIAを追いかけることになる。