イベントレポート

Intel製Gen11 GPUは、ユニット3割増で1080pゲームも可能に。Adaptive-Syncにも初対応

Intelが第10世代Coreに内蔵しているGen11の内蔵GPU(出典:Blueprint、Intel Corporation)

 IntelはCOMPUTEX TAIPEIの初日(5月28日現地時間)に行なわれた「COMPUTEX Industry Opening Keynote」にIntel 上席副社長 兼 クライアント・コンピューティング 事業本部長 グレゴリー・ブライアント氏が登壇し、同社の新製品や今後の開発方針などを説明した。

 このなかでIntelは同社がIce Lake(アイスレイク)の開発コードネームで開発を続けてきた、同社の10nm製造プロセスルールで製造される最新製品「第10世代Coreプロセッサ」(以下第10世代Core)を発表した。

 この第10世代Coreには、Gen11と呼ぶGPUが統合されている。Gen11 GPUは、最大64EU/最大クロック周波数1.1GHzとなっており、FP32時に最大で1.12TFLOPS、FP16時に2.25FLOPSという処理能力を実現している。

 Intelでは従来世代では30fpsを切っていてプレイすることが難しかった1080pでのPCゲームも、30fpsを上回る性能を実現することが可能で、十分プレイできると説明している。

10nmの効果で、EUがIris PlusもUHDも従来世代と比較して33%増やされている

 第10世代Coreには、IntelがGen11と呼んでいる内蔵GPUが内蔵されている。Intel GPUは、第2世代Core(Sandy Bridge)で初めてダイに統合されたものがGen6、第3世代Core(Ivy Bridge)でGen7になり、第4世代Core(Haswell)でGen7.5、第5世代Core(Broadwell)でGen8、第6世代~第9世代(Skylake、Kaby Lake、Kaby Lake Refresh、Coffee Lake、Coffee Lake Refreshなど)がGen9となっている。

 ちなみに、Gen10は10nmの微細化版として計画されていたCannon Lakeに内蔵されていたが、結局Cannon LakeのGPU内蔵版は出荷されなかった(実際にはGPUは無効にされて出荷されていた)ので、Gen10は幻となってしまった。

Iris Plusは最大64EUを搭載、UHDは32EU。いずれも従来世代から約33%EUが増やされている(出典:Blueprint、Intel Corporation)

 第10世代Coreに搭載されているGen11では、10nmプロセスに微細化されたメリットを活かして、内蔵の実行エンジン(EU)を最大64EUに増やしている。第8世代CoreのUシリーズプロセッサ(TDP 28W/15W)では、最大で48EUだったので、それに比べると約33%ほどEUが増えている計算になる。

 なお、この64EUという数字はIris Pro Graphicsの場合で、Iris Proには64EUと48EUが用意され、UHDには32EUという構成になる。第8世代までのUHDは24EUだったので、こちらも約33%増えている計算になり、大きく性能が向上していることになる。クロック周波数はSKUにより異なるが、ターボモード時で最大で1.1GHzとなる。

ラスタライザーも強化(出典:Blueprint、Intel Corporation)

 ラスタライザーも強化されており、1クロックあたり16ピクセルが処理可能、32バイリニアフィルタードテクセル/クロック、3MBのL3キャッシュと0.5MBのシェアードローカルメモリも追加されている。

ディスプレイ出力、DP1.4、HDMI 2.0bに対応、HDRもサポート(出典:Blueprint、Intel Corporation)

 ディスプレイ出力は3パイプ実装されており、Display Port 1.4、HDM 2.0bなど最新の規格に対応している。HDRにも対応しており10ビット出力をハードウェアでサポートしている。HDRの仕様としてはHDR10およびDolbyVisionに対応している。

HEVCエンコーダはデュアルになっている(出典:Blueprint、Intel Corporation)
対応するソフトウェア(出典:Blueprint、Intel Corporation)

 また、HEVCエンコードエンジンがデュアルになり、最大で4K/60fpsないしは8K/30fpsの動画をエンコードすることが可能になった。

 なお、U/Yシリーズ向けにはeDRAMは搭載されておらず、メモリ帯域に関してはメモリコントローラがLPDDR4X-3733、DDR4-3200などに強化されたことで帯域幅は増えている。こうした強化により、FP32での演算時に最大1.12TFLOPS、FP16時に最大2.25FLOPSというピーク性能を発揮する

Adaptive Syncに対応し、描画性能があがったことでメジャータイトルを1080pでゲーム可能に

Gen11 GPU+Adaptive Syncのデモ

 IntelのGen11 GPUは、Intelの内蔵GPUとしては初めてVESAのAdaptive Syncに対応している。これまでIntelはこうしたリフレッシュレートの同期機能に対応してこなかった。Adaptive Syncの元になったAMD FreeSync、NVIDIAのG-SYNCという2つの方式があるが、Intelはこれまでどちらにも対応してこなかった(G-SYNCはNVIDIAプロプライエタリのため対応することはできないが)。Adaptive Syncに対応することで、対応するディスプレイを使えば画面のカタツキや振動、ティアリングなどを防止することができる。

Adaptive Syncをサポート(出典:Blueprint、Intel Corporation)
ソフトウェアも強化(出典:Blueprint、Intel Corporation)
Intel Graphics Command Centerもアップデート(出典:Blueprint、Intel Corporation)
新しいIntel Graphics Command Center

 また、Intelは内蔵GPUのソフトウェア面での強化を続けている。3月のGDCで明らかにした、新しい内蔵GPUの設定ツール「Intel Graphics Command Center」はバージョンアップ版が投入され機能が追加される。

 具体的には新しいスキンや、「Power」(省電力)というタブが追加され、電力設定が可能になる。また、カスタマイズしたプロファイルを登録して、プロファイルを切り替えることで、ゲーム時とオフィスアプリ利用時で電力設定を切り替えたりということもワンタッチで可能になる。

内蔵GPUでサポートするゲームも増加(出典:Blueprint、Intel Corporation)
PCゲーム向けのサポートも充実させる(出典:Blueprint、Intel Corporation)

 また、Intelは「gameplay.intel.com」というIntelの内蔵GPUを利用してゲームを行なうさいに参照するサイトを公開しており、ユーザーノートPCに搭載されている内蔵GPUを自動判別し、どのゲームであればプレイできるかなどを公開する。新しいメジャータイトルが公開されたときには、Day0ベータとしていち早く最適化されたドライバーを公開するなどの取り組みを行なっていく。

Linuxのフル機能ドライバーは第3四半期に(出典:Blueprint、Intel Corporation)

 なお、Gen11 GPUはWindowsだけでなく、Linuxについてもサポートしていく計画で、発表時点ではベータとして機能限定版のドライバが公開されており、第3四半期の終わりまでにはフル機能のドライバーが投入される計画だとIntelは説明している。

メジャータイトルでも1080pであれば内蔵GPUでプレイできるようになったとIntelは説明(出典:Blueprint、Intel Corporation)

 こうした取り組みにより、従来のIntel内蔵GPUでは難しかったメジャータイトルの1080pでの30fpsを上回るフレームレートが実現されている。第10世代CoreのIris Plus Graphicsでは、従来の第8世代Core(Intel UHD 620)では30fpsを下回っていた「Rainbow Six Siege」、「Dir Rally 2.0(Low)」、「World of Tanks(Medium)」、「Fortnite(Low)」などで30fpsを上回ると説明している。

 もちろんこのスコアは最上位になるIris Plus Graphicsだが、Intel 副社長 兼 Intel Graphics Software事業部 IA/グラフィックス/ソフトウェア部長 リサ・ピーアス氏は「メインストリーム向けのUHDでも30fpsを実現する」としており、メインストリーム向けとなるUHDでも十分1080p/30fpsを実現することが可能だと自信を見せた。

IntelのGen11 GPUのデモ。Counter-Strike: Global Offensive (CS:GO)で60fpsを超えていることが確認できる