イベントレポート
次世代ノートPCでは1秒復帰/薄型狭額縁/AI機能/Core i5以上が標準に
~Intelのモダン化規格「Project Athena 1.0」を公表
2019年5月28日 15:00
Intelは1月のCESで発表したノートPCのモダン化への取り組み「Project Athena」のバージョン1.0の仕様を発表した(Intel、Ice Lakeのデモで10nmプロセスの前進をアピール参照)。
Intelは、MicrosoftやGoogleといったOSベンダーと協力して、WindowsノートPCやChromeBookのモダン化(現代のニーズにあった仕様やデザインへと進化させること)に取り組んでおり、Project AthenaではIntelが仕様を策定し、OEMメーカーに開発を促すことでノートPCのモダン化を促進していく。
Centrino、Ultrabookの成功に次ぐ、ノートPCのモダン化プログラムとなるProject Athena
Intelは、古くは2003年にWi-Fi機能搭載を必須として、ノートPCのWi-Fi搭載を加速したCentrinoモバイル・テクノロジ(インテル、「Centrinoモバイル・テクノロジ」を正式発表参照)、2011年にCOMPUTEX TAIPEIの基調講演で発表された薄型/軽量なノートPCを実現するUltrabookなどの取り組みを行なっており(マローニ氏、ノートブックPCを再定義するUltrabook構想を語る参照)、その都度ノートPCの変革を促してきた。
Project Athenaは、それらと同じく、ノートPCのモダン化を促進する取り組みだ。IntelがノートPCの使い方を研究し、今後ユーザーが必要とするような機能や小型化、デザインなどをスペックに盛り込んでいる。
それによれば、ノートPCを必要としているユーザーを、昔ながらのビジネスパーソンだけでなく、カフェでテレワークするような「働き方改革」を目指すビジネスパーソンや、自営業者、クリエイターなどと位置づけ、ノートPCを利用して生産性を上げたり、創造性を加速したりということを目的とするユーザーを指している。
Intelはそういったユーザー向けに「Project Athena 1.0ターゲット仕様」と呼ばれる仕様を策定し、同社のOEMメーカーとなるノートPCメーカーに仕様の採用を促すことで、ノートPCのモダン化を実現していく。なお、CentrinoやUltrabookには、そうしたわかりやすいブランド名がついているが、今回のProject Athenaはコードネームのままで、正式なブランド名は用意されない。
この点についてIntel 副社長 兼 クライアントコンピューティング事業本部 モバイルイノベーションセグメント事業部 事業部長 ジョッシュ・ニューマン氏は、「今年(2019年)に関してはブランド名を用意しない。今年はOEMメーカーへの働きかけを優先しており、まずはOEMメーカーでの採用例の増加を優先する」と説明しており、少なくとも2019年はコードネームのままプログラムを進めていくと説明。深読みすれば、2020年以降にはブランド名がつけられる可能性があると言える。
OEMメーカーに対してはProject Athenaイノベーション・プログラムと呼ばれる仕組みが用意され、OEMメーカーやOEMメーカーに部品を供給するコンポーネントベンダーに対して、仕様などを説明するイベントを開催したりして、ノートPCのモダン化を業界を挙げて実現していく。
Core i5/i7、8GB、256GB SSDが最低スペックに、AI関連の機能も搭載
今回Intelが公表したProject Athena 1.0ターゲット仕様では、2019年版のProject Athenaに必要なスペックが公表されている。この仕様は年々アップデートされていく予定で、具体的にいつかは言及されなかったが、おそらく2020年版、2021年版のようにアップデートされていくことになる。その具体的なスペックは以下のとおりだ。
スリープからの高速な復帰を促すため、Windows 10のモダンスタンバイ(IntelのCPUでの機能としては0ix)の実装を促していく。また、生体認証も必須にしており、スリープから使える状態への復帰が1秒以下を実現。性能面ではCore i5/i7を搭載し、8GB以上のDRAM、256GBのNVMe SSD以上のストレージというスペックが最低限となる。AI関連の機能も謳われており、遠方界マイクを利用した音声認識やOpenVINOやWinMLを利用した機械学習の機能を必須とする。
バッテリ駆動時間の強化も1つの特徴で、150cd/平方mの輝度で16時間以上のビデオ再生および、250cd/平方mの輝度で9時間以上のWebブラウジングを実現する。接続性の向上では、将来的にはUSB 4になるThunderbolt 3とWi-Fi 6 Gig+(Intelが第10世代Coreと同時に提供を開始する160MHz幅のWi-Fi 6のこと)が必須とされており、セルラーモデムはオプションとされている。
フォームファクタに関してもUltrabookの延長線上にある拡張が目指されており、12~15.xで1080p以上のタッチディスプレイで、3面狭額縁とされている。ほかにも、バックライトキーボード、高精度タッチパッド、ペンのサポートなどが仕様として定められている。
Intelによれば、このProject Athenaに準拠した製品として、第10世代Coreを搭載した製品として、Acer「Swift 5」、Dell「XPS 13 2-in-1」、HP「Envy 13」、Lenovo「Yoga S940」などのリリースが予定されている。
なお、IntelはProject Athenaの説明会で、第10世代Coreを搭載したDell未発表の次世代「XPS 13 2-in-1」を公開している。今後は新しいXPS 13 2-in-1のような、薄くて狭額縁で現代風のデザインを採用しつつ、最低でもCore i5/i7、メモリ8GB、256GB SSD、そしてペンも使えるという製品が登場することになるだろう。