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「Windows XPサポート終了時ほどの特需と反動はない」。インテルが健全な国内PC市場を予測
~2019年後半はCPU供給量を十分に確保も、スモールコアはしばらく難色示す
2019年7月3日 15:03
インテル株式会社は8日、都内で記者会見を開き、同社の執行役員 パートナー事業本部 本部長を務める井田晶也氏が、同事業部の国内PC市場への取り組みについて紹介した。
インテルのパートナー事業本部は、岡谷エレクトロニクス、テックウインド、菱洋エレクトロといった代理店、Intel CPUをPC組み込んでいる販売しているチャネル、大塚商会、ダイワボウのようなSIer、リコージャパンのようなリセラー、そしてDaaSを展開している横川レンタリースやオリックスレンタリースといった企業とつながりがあり、ソリューションの提案による新規市場開拓、セミナーやイベント開催などによるPCに対する認知度向上などを通して、最終的にPC市場の活性化を図ろうとする部門である。
その部門から見たいまの日本のPC市場は、健全な状態であるのだという。
個人向けPCといった分野は若干縮小気味、もしくは横ばいだが、ゲーミングPCやクリエイター向けPCといった高付加価値製品の市場は拡大。その一方で法人向けPC市場は、政府が推進する働き方改革に伴う企業でのモバイルPCの新規導入、そして文科省が推進するプログラミング教育の義務化および教育におけるICT利活用によって牽引され、2019年1月~3月期で前年比50%の伸びを示している。
働き方改革に関しては、2020年の東京オリンピック開催時に、都内の交通混雑によって通勤が難しくなるといった予測を踏まえた、時間や場所に縛られない働き方が各企業に認知されてきており、それに伴いモダンPCを導入する事例が増えているとする。
教育分野に関しては、井田氏が実際に先週視察した埼玉県戸田市の小学校を例に挙げると、現時点では生徒5人に1台PCがある状態だが、2025年までには1人1台にまでPCを配備する計画があることを挙げ、プログラミング教育の義務化、および英語教育の低学年化、教材のデジタル化といった背景とともに強い需要があるだろうとした。
こうしたベースを踏まえたうえで、現在の日本PC市場を総合的に評価すると「健全」である、というわけだ。MicrosoftがWindows XPのサポートを終了させた2014年当時は、PCの買い替え特需、そしてその直後の反動が大きかったため、健全であるとは言えない状況にあったのだが、今回はMicrosoftが比較的早い時期からWindows 7からWindows 10への移行を促したこともあり、2020年1月14日にサポート終了を迎えるWindows 7を搭載したPCの買い替え特需/反動については、2014年当時の規模にはならず、需要が堅調に伸び、健全に推移するだろうとの予測を示した。
また、先述の政府の働き方改革の推進により、国民のライフスタイルとワークスタイルに変革が生まれ、そのなかで「PCの価値」について改めて評価されつつある。こうした消費者の心理の変化も、PC市場の健全な推移を後押しするとした。
その健全なPC市場へのインテルのPCへの取り組みの1つが、「Project Athena(プロジェクト アテナ)」であるという。Athenaの詳細については関連記事(次世代ノートPCでは1秒復帰/薄型狭額縁/AI機能/Core i5以上が標準に)を参照されたいが、第10世代Coreプロセッサとともに、モバイルPCの“モダン化”を行なうことで、市場のニーズ(ここではとくに働き方改革)にマッチするような製品を投入する意向だ。
ちなみにゲーミングPCの分野では、最近AMDのRyzenが台頭してきているが、これに関しては“脅威”というよりむしろ“歓迎”であるという。つまり、かぎられたパイを奪い合うのではなく、AMDの台頭によりPC市場そのものが拡大できれば良いと考えているのだという。そもそもIntelの第10世代Coreはいまのところモバイルのみだし、Project Athenaもモバイルノートを対象としたものであり、AMDの第3世代RyzenデスクトップCPUとは競合しないため当然とも言える。「法人からの声を聞くかぎり、われわれへのニーズはあっても、AMDの話は挙がってきていない」と井田氏は答える。
ただそのインテルが得意とする法人市場は、昨年(2018年)はCPUの供給不足に苦しんできた。「今年後半には、市場のニーズにマッチする供給量を提供できるため、問題は解決する」と井田氏は自信を見せる。ただ、供給に関してはCore i7やXeonといった高付加価値プロセッサが優先されているため、Gemini Lakeのようなスモールコアは依然として供給不足の可能性がある。スモールコアに関しても今後供給量を継続的に改善していく意向を示した。