イベントレポート

RFIDタグを超える利便性を生むバッテリ不要の“BTセンサータグ”

~HoloLens活用で店舗内の人やモノの動きも可視化

バッテリレスBluetoothセンサータグ

 自動認識ソリューションなどを手掛けるサトーは、バッテリ不要の超小型Bluetoothセンサータグや、日本マイクロソフトのHoloLensなどを活用した次世代店舗デジタル化ソリューションを発表。2019年3月5日から、東京・有明の東京ビッグサイトで開催している「リテールテックJAPAN2019」の同社ブースにおいて展示している。

「リテールテックJAPAN2019」のサトーブースの様子

 サトーでは、小売業界の企業などとのパートナーシップを強化することで、ソリューション開発を加速。さらに、同社が持つRFIDの社内一貫生産体制を活用することで、バッテリレスBluetoothセンサータグの自社生産についても検討するという。

 バッテリレスBluetoothセンサータグは、周囲を飛び交っているWi-FiやBluetooth、携帯電話の電波からエネルギーを収集することで、電源不要で利用できるのが特徴。IDや位置情報、温度、圧力などの情報発信が可能であり、PCやタブレット、スマートフォン、スマートスピーカーなどと、Bluetoothで接続できる。

 切手サイズという小型、薄型化を実現しているほか、ライフタイムに終わりがなく利用できるため、幅広い用途での活用が想定される。

 たとえば、消費財や包装容器にタグを埋め込めば、購入後も消費者との連動したサービスを提供することも可能になり、紛失場所の特定や消費状況に応じた追加や補充といったサービスも提供できる。

 このバッテリレスBluetoothセンサータグは、イスラエルに本社を置くスタートアップ企業のWiliotが開発したもので、Wiliotは、サムスンやアマゾンから、3,000万ドルの資金を調達し、この分野で話題を集めている。

 Wiliotでは、同製品のサンプル出荷を行なうアーリーアドバンテージプログラムを2019年から開始。現在、全世界11社が参加しており、サトーは、日本の企業として、唯一、このプログラムに参加している。今後、30社まで拡大する予定だという。参加企業に対しては、2019年5月末までにサンプル出荷を行ない、パートナーとともにアプリケーションを開発。2020年初めには、日本でも実証実験を開始する予定だという。

 Wiliotのプロダクト開発担当ディレクターのロベルト・サンドラ氏は、「Wi-FiやBluetooth、携帯電話といった2.4GHz帯の電波を使うことで、タグを起動できるため、UHF帯を利用するRFIDタグに比べて、バッテリが不要で、薄型化、軽量化、小型化ができる。自宅にあるスマートフォンでも起動できるため、販売後におけるサービスにも利用できるのが特徴。長期間にわたって、人とモノをつなぐことができ、これまでのRFIDタグとは異なる用途も想定できる」とした。

Wiliotのプロダクト開発担当ディレクターのロベルト・サンドラ氏

 現時点では、タグ1枚あたりの価格については未定としているが、「このタグは、実用化段階では、何百万枚も生産されることになる。市場から要求されている価格を目指している。まずは、洋服やサングラスなど一定以上の価格帯のものが対象になってくるだろう。最終的には低価格の製品にもつけられるようにしたい。今後は、物流、製薬などの領域にも活用することを想定している」とした。

 現在、開発しているバージョン1は、1~3mの範囲での起動や通信が可能であるが、2021年以降に製品化されるバージョン2は、10~20mの範囲で利用が可能だという。

 「ベースとしているのは、Armの技術であり、ナノワットコンピューティングと呼ぶ技術も活用している。回路の効率化などにおいて、当社の特徴が発揮されている。BLE 4.0で規定されたアドバタイジングパケットを利用することで、効率的な通信を実現している」などとした。

 さらに、サンドラディレクターは、「日本への参入においては、サトーとの協業で、普及戦略を推進することになる。日本は優れた技術を採用することに対して積極的な国の1つだと理解している。洋服や靴など、これまでネットワークに接続されなかったものまでが接続されるようになり、製品と消費者とのインタラクションが増えることで、新たなサービスが提供できる。日本は多くの人がスマートフォンを手に持っている。洋服を購入後にも、この洋服は何回着たのかということもわかるようになる」とした。

 一方、サトーでは、店舗から収集したトラッキングデータを、リアルタイムに処理する独自のソフトウェアを開発。さらに、HoloLens向けのアプリケーションも開発している。

各種データ分析も可能になる

 同社では、「流通業界は、慢性的な人手不足のなかにあり、効率的な店舗運営を求められている。また、ネット販売が拡大するなかで、店舗における購買体験の高度化が求められている。今回のソリュシーションによって、小売店舗では、システム導入やデータ処理に関わるコストを抑えながら、来店客の購買行動の把握と、新たな店舗サービスの提供が実現できるほか、商品管理業務プロセスの省人化も実現。業務コストの大幅な削減とより良い顧客体験による売上拡大が期待できる」としている。

 「リテールテックJAPAN」の展示では、2021年の小売店舗をイメージしたデジタル化支援ソリューションとして紹介。Bluetoothセンサータグから収集したデータをもとに、店舗内の事象を可視化し、新たな店舗運営や業務の効率化、顧客体験の向上を通じて、売上拡大に結びつけることができるとした。

 具体的には、小売店舗内の商品などのモノの動きを、バッテリレスBluetoothセンサータグにより収集。さらに、来店客や従業員といった人の動きについては、スマートフォンのBluetooth LE通信で、トラッキングデータを収集する。

 収集したデータは、シスコシステムズのサーバーインフラストラクチャ「Cisco UCS」により、エッジ環境でリアルタイム処理を行なうとともに、日本マイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」上に集約。Microsoft Azureが持つデータ統合および分析処理機能、AI機能などを活用することで、現場の改善や顧客サービスの向上などに活用できるという。日本マイクロソフトでは、同社が展開するSmart Store施策との連動も図りたいとしている。

 洋服を販売する店内に消費者が入り、商品や展示品に近づくと、それに関する情報などを消費者のスマートフォンに表示。商品を手に取って興味を持っていることがわかると、それを店員に知らせて、接客を促すように指示する。また、試着室に持って入ると、その商品のサイズや色違いなどの在庫情報などをスマートフォンに表示するとともに、お得なクーポン券もスマートフォンに配信する。

マネキンのコーディネート情報を表示する
試着室に入ると在庫情報をもとにサイズ違いや色違いを表示
同時にスマートフォンにクーポンが送られる

 店舗では、その洋服がどれぐらい試着されたのかといった情報や、クーポン券の配布がどの程度の効果があったのかをデータから検証できる。さらに、試着が終わって購入のさいには、決済エリアに立つだけで、スマートフォンで決済が終了することができる。

決済エリアでは自動的に決済が終了する

 一方、日本マイクロソフトの「HoloLens」を活用することで、ストアマネジャーなどが、直感的な動作によって、3Dマップ内での店舗レイアウトの登録および修正が行なえるほか、店舗内の人やモノの動きを可視化。来店客の動線データを店舗空間上で確認したり、よく見られている商品を把握するといった分析も可能になる。

HoloLensを利用して直感的な動作によって、3Dマップ内での店舗レイアウトを変更したり、試着の数が多い人気アイテムを確認できる

 また、同社では、取得した膨大な購買行動データの活用に関して、慶應義塾大学商学部の清水聰教授と共同研究を行ない、同教授が提唱する「循環型マーケティング」の実践につなげる。

 慶應義塾大学商学部の清水聰教授は、「店舗内外のプロモーション効果や、ストアレイアウトの効率性を知る上で、店内での消費者の回遊行動の把握はきわめて重要である。とくに、消費者の回遊行動と購買行動を結合したデータは、世界でも例を見ない貴重なものであり、このデータを通じて、店内での消費者行動と購買の関係を明らかにし、小売店舗の新しい価値を示したい」としている。