イベントレポート

いよいよ来年から5Gが商用サービスイン。IntelらがMWC Americasで猛アピール

~バッテリ駆動時間が大幅に伸びたSnapdragon Wear 3100も展示

ロサンゼルス・コンベンション・センターで開催されているMWC Americas

 セルラー機器の業界団体であるGSMA(GSM Association)は、アメリカ版となるMWC Americasを、9月12日~9月14日(現地時間)の3日間にわたって、カリフォルニア州ロサンゼルス市にあるロサンゼルス・コンベンション・センターで開催している。

 5Gの標準規格である5GNRの商用サービスインを来年(2019年)にひかえて、通信業界は5G一色になっており、別記事(IntelとHTC、5G対応の無線VR HMDを共同開発。今後放送にも5Gを活用)でもお伝えしたとおり、5Gに各種ソリューションを提供するIntelは、会期前日に5G関連のイベント「5G Summit」を行なうなど、5Gのサービスインに向けて準備に余念がない状況だ。今回のMWC Americasでも、各社とも5Gにフォーカスした展示を行なっていた。

IntelとEricssonは39GHz帯でのミリ波・5Gのライブデモを行なう

 Intelは2月にスペインで行なわれたMWCにおいて、5Gで新しく導入されるミリ波(数十GHzなど超広帯域を利用した通信のこと)のデモを行なっており、2in1デバイスの背後に組み込んだ28GHz帯のアンテナを利用し、ライブでミリ波を扱う通信デモとして、大きな注目を集めた。

デモの説明
Intel Mobile Trial Kit、モデムに相当する
アンテナ、Intel Mobile Trial Kitと併せて商用製品ではスマートフォンやPCのなかに入る
Ericssonの基地局側の39GHzのアンテナ
5Gの39GHzのミリ波を利用してストリーム再生している様子

 そして今回のMWC Americasでは、39GHz帯というさらに超広帯域を利用したミリ波のデモをEricssonブースで披露した。

 Ericssonが開発した39GHzをサポートする基地局や、PCに接続したIntel Mobile Trial Kit(セルラーモデムに相当)と39GHz帯のアンテナを利用してのデモで、動画がスムーズにストリーム再生できる様子が公開された。

 Intelの関係者によれば、28GHz用のモデムとアンテナから39GHzを利用して安定した通信を行なうには機器の微調整が必要とのことだった。ただし、商用出荷される製品には、1つのハードウェアで28GHzと39GHzの両方をサポートできる予定だという。

5G回線で動画をライブに転送するカメラを利用したゴルフ中継で利用された5G通信のシステム
このようにプレイを撮影したりする

 また、IntelとEricssonはゴルフのU.S.オープンにおいて、5Gを利用したワイヤレスカメラで中継するという実証実験を再現したコーナーを用意した。

 U.S.オープンでは、4Kカメラに5Gの通信モジュールを直結し、4Kのストリームを5G回線を経由して中継ブースに転送するという実験が行なわれた。こうしたゴルフなどのTV中継に利用するカメラは、通常ケーブルで接続されており、その移動範囲にはおのずと制限がある。しかし、5Gのセルラー回線に置き換えることで、自由な撮影ができるようになる。

 2つのホールに2つの5Gカメラが置かれ、信頼性や品質などが検証されたという。今回のMWCAのブースでは、カメラは有線になっていたが、その回線の途中が5Gになっており、実際に中継できているとのことだった。

 今後こうした技術が実際の放送に適用されれば、現在よりも高画質でかつ広範囲をカバーできるようになるため、より迫力のある生中継が実現するだろう。

Qualcommは発表されたばかりのSnapdragon Wear 3100搭載スマートウォッチを展示

 Qualcommは、MWC Americasの会期前々日にあたる9月10日に、スマートウォッチ向けSoCとなる「Snapdragon Wear 3100」を発表した。

 Snapdragon Wear 3100はCPUがCortex-A7クアッドコア(従来製品はデュアルコア)に強化されており、より効率が改善したDSP、コプロセッサなどを搭載しており、全体的に処理能力が向上している。

 また、新世代のNFC、GPSなどのセンサー、さらにはMP3再生時のオフロード機能などを搭載しており、新しい省電力機能を活用すると、従来製品のように1日のバッテリ駆動時間ではなく、満充電で1週間は利用できるようになるという。

Qualcommブース

 今回Qualcommは、Snapdragon Wear 3100を搭載したリファレンスデザインのスマートウォッチを展示していた。

 同SoCを搭載するスマートウォッチを販売するOEMメーカーとしては、FOSSIL、Louis Vuitton、Montblancなどが明らかにされているが、いずれもまだ製品は発表されていない。そのため、展示品はあくまで参考デザインとして試作されたものであり、これがそのまま販売されるわけではない。

Qualcommブースに展示されていたSnapdragon Wear 3100搭載スマートウォッチのリファレンスデザイン

 残念ながらガラスケースのなかに入っていたので、挙動などは確認できず、見た目は従来のSnapdragon Wear 2100搭載製品と変わらなかったものの、性能やバッテリ駆動時間が向上しているとのことなので期待が持てそうだ。

Verizonはプレ5Gの5Gホームゲートウェイを発表、10月1日から商用サービスイン

Verizonブースの5Gのオブジェ

 米国の通信キャリアはVerizonとソフトバンク傘下のSprint(すでにT-Mobile USとの合併を発表済み)の2社がブースを出していた。なかでも力が入っていたのがVerizonで、積極的に5Gをアピールしていた。

Sprintのブースも5G押し

 というのも、Verizonは10月1日より世界で初めて5Gの商用サービスを、ヒューストン、インディアナポリス、ロサンゼルス、サクラメントの4都市で開始する計画であることを9月10日(現地時間)に発表しているからだ。提供されるのはスマートフォンやタブレットではなく、5G Homeと名づけられた無線ルーターで、5Gをブロードバンド回線として使えるものとなる。

Verizonブースの画面に表示されていた、「世界初で唯一の5G UWB」という表示
Verizonが展示した5Gホームルーター
左に置いてあるスマートフォンや12インチiPad Proとの比較で大きさがよくわかる

 なお、このVerizonの5Gは、3GPPの規格である5GNR(5G New Radio)とは異なり、5Gで使われる技術要素を利用した独自規格の5Gということになる。業界ではPre 5G(プレ5G)などと呼ばれている。

 スマートフォンなどの移動して使うデバイスであれば、他社ネットワークとの互換性が必要になるため独自規格のネットワークでは弊害のほうが大きすぎるが、ホームルーターは基本的には定点利用するので、独自方式でも大きな問題がない。高速回線をいち早く顧客に提供するための施策と言える。

 すでに5GNRの規格は3GPPにより規定されており、ほとんどの通信キャリア、そしてVerizon自身もモバイル製品向けには5GNRに準拠したサービスを来年以降に開始する予定だ。

 また、Qualcomm、Intelともに来年から5GNR用モデムを提供するため、5G対応スマートフォンやPCが登場するのは、予定どおりであれば来年からということになるだろう。