イベントレポート
VAIOがアジア再参入でS11/S13を販売。香港Nexstgo提携の狙いとは
2018年6月5日 01:00
株式会社VAIOは、COMPUTEX TAIPEIが開催される台湾・台北市内で、香港のNexstgoと共同で記者会見を行ない、NexstgoがVAIOブランドのPCをアジア市場で販売する協業を行なっていくと発表した。
VAIOはソニーから分離するさいに、グローバル市場から撤退し、日本市場にだけ集中していたが、ここ数年で米国、ブラジル、中国などでVAIOブランドのPCをパートナー企業などから販売するかたちで再参入をはたしており、今回のアジア市場への再参入もその延長線上にある。
中国のODMメーカーとして知られるAlcoの傘下企業となるNexstgo
今回の記者会見では、冒頭にNexstgo CEOのアレックス・チャン氏が登壇し、Nexstgoとはどのような会社か、そしてVAIOについての説明も行なった。
Nexstgoは2016年に設立された比較的新しい会社だが、その母体になっているのは、中国で有名なODMメーカーとして知られているAlco。Alcoは古くはソニーに買収される前のアイワのODMメーカーとして生産しており、中国では知る人ぞ知るODMメーカーだ。
Alcoは現在中国の東莞市に大規模な工場をかまえており、受託生産や米国向けのODM生産などを行なっている。そのAlcoが自社ブランドの製品を作るために香港に設立した会社がNexstgoで、PCやタブレットなどのIT製品を自社ブランドで製造、販売をアジアで行なっている。
Nexstgoでは自社ブランドでの販売を行なっているものの、できたばかりの企業ということで、まだブランド力がなく、そこが悩みとなっていた。そこでNexstgoが目をつけたのが、VAIOということになる。
言うまでもなくVAIOはソニー時代にはグローバルにビジネスを展開しており、PCのブランドとして認識されている。とくに台湾やアジア諸国では、人気のソニーのブランドだったということもあり、非常に認知度が高い。
VAIOは日本国内でこそ引き続きビジネスを行なっているが、グローバルに関しては米国、ブラジル、中国などにとどまっているという状況だ。NexstgoにとってVAIOは、高いブランド力を持っていてなおかつ市場でバッティングしていないという最適なパートナーと言える。
今後Nexstgoは、マカオを含む香港と台湾で7月から、マレーシアとシンガポールで8月からVAIO製品の販売を行なっていく。すでに各国向けのVAIOのWebサイトが開設されており、予約も開始されている。
将来的にはAlco側とより深い提携の可能性も
その一方、VAIOの側にも提携するだけの理由がある。チャン氏に引き続いて登壇したVAIO株式会社 執行役員副社長 赤羽良介氏は「VAIOはグローバル展開する上で既存のインフラを利用して、効率の良い展開を目指している」と述べ、ソニー時代に比べてリソースがかぎられているからこそ、効率のよいグローバル展開が必要だとした。
これは、今回にかぎらずVAIOのグローバル展開で貫かれている姿勢で、米国、ブラジル、中国などでは自社の販売チャネルではなく、パートナーの販売チャネルなどをうまく活用するなどして販売を行なっている。
その意味で、今回のNexstgoとの提携もその延長線上にある。Nexstgoが販売するのは、日本でもすでに販売されている第8世代Coreプロセッサを搭載したVAIO S11/S13の2製品で、それを英語キーボードにしてアジア各地に販売するかたちとなる。
これらのモデルは中国にあるODM工場である程度まで組み立てられた後、日本の長野県安曇野市にあるVAIOの本社工場で、CTOや品質チェックなどを行なって生産されている(同社ではこれを安曇野フィニッシュと呼んでいる)。今回のNexstgoが販売する分もそうして生産された後、香港にあるNexstgoに納品され販売されるかたちになるという。
しかし、将来的にはパートナーシップをもう少し深める可能性もあるようだ。というのも、Nexstgo CEOのアレックス・チャン氏は「将来的には生産というのもあり得る」と発言しており、たとえば、VAIOが販売するPCをVAIOの設計チームが設計し、Nexstgoの親会社になるAlcoが製造して、日本で販売する分はVAIOが販売し、アジアで販売する分はNexstgoが販売する、といった意向があるようだ。
VAIOとしても、本社工場で製造する分はVAIO Zのみで、販売ボリュームがもっとも大きなVAIO SシリーズはODMメーカー(現在はAlcoではない)を使って製造しているため、そこをAlcoにしていくというのは十分に可能性としてあり得る。ただし、今回の発表でその可能性は示唆されたものの、具体的なことにはなにも言及がなかった。
VAIOにとっては新しい海外市場への出荷でボリュームを増やし、短期的にも大きなプラスになるし、提携によって将来的により大きな発展が期待できるといった可能性を秘めた発表と言えるだろう。