イベントレポート

MediaTek、AI演算基内蔵のスマホSoC「Helio P60」

~5Gモデムのプロトタイプで3Gbps通信もデモ

Helio P60を搭載した試作スマートフォン

 台湾MediaTekは、AIに特化したマルチコア演算器を備え、Cortex-A73/A55のCPU、Mali-G72 MP3のGPUを搭載したSoC「Helio P60」を、MWC 2018の初日に発表し、同社ブースなどで展示を行なっている。

 また、同社ブースでは、アーリープロトタイプを利用した5GNR互換の5Gモデムチップ・プロトタイプのライブデモが行なわれ、3.5GHzの帯域で3Gbps通信する様子を公開した。

AI向けアクセラレータ搭載のHelio P60

 Helio P60は以下のようなスペックになっている。

Helio P60のスペック
CPUCortex-A73 (big、最大2GHz)/Cortex-A53 (LITTLE、最大2GHz)
GPUMali-G72 MP3 (800MHz)
Mobile APUマルチコア
メモリ8GB (デュアルチャネルLPDDR4x、1,800MHz)
ストレージeMMC5.1/UFS2.1
ISP最大16+20MPないしは32MP
ディスプレイ最大FHD+ (20:9)
Wi-Fi/BTIEEE802.11ac/Bluetooth 4.2
携帯電話回線Cat.7 (DL)/Cat.13 (UP)、DSDL
製造プロセスルールTSMC 12nm

 Helio P60の最大の特徴は、メインストリーム市場向けのSoCながら、同社がMobile APU(AI Processing Unit)と呼んでいる、280GMAC/sの性能のマルチコアAIプロセッシングユニットを内蔵しいることだ。

 すでに、Huaweiの「Kirin 970」、Appleの「A11 Bionic」といったSoCに、NPU(Neural Processing Unit)と呼ばれる、AIに対応したアクセラレータを搭載している例があるが、いずれもハイエンド向けで、ミドルレンジの製品に搭載されたことは、筆者の知る限り例がなかった。

 APUにより、深層学習の推論処理を行なうAIのアプリケーションを利用する場合などに、GPUを利用して演算するよりも、低い消費電力で実行することが可能になり、バッテリ駆動時間へのインパクトをできるだけ抑えることができるようになる。

 MediaTekは、「NeuroPilot AI Platform」という開発環境を用意しており、それを活用することで、AndroidのニューラルネットワークAPIである「Android NNAPI」に対応したソフトウェアを、比較的容易に作ることができる。

Helio P60の説明ボード
開発環境を利用して容易にAIのアプリケーションを構築できる

 また、LTEモデムのベースバンド部分を内蔵しており、下りはカテゴリ7、上りはカテゴリ13のCA構成で利用できる。また、DSDV(Dual Sim Dual VoLTE)に対応しており、2つのSIMカードの回線をVoLTEを有効にした状態で待ち受け可能だ。

 TSMCの12nmプロセスルールで製造されており、2018年第2四半期の初め頃から、OEMメーカーなどに出荷される予定。

3Gbps通信を実演

 MediaTekは同社のSoCにLTEモデムを統合して販売しており、LTEモデムのシェアでは、トップのQualcommに次ぐシェアがある。今回同社は、2017年末に標準化が終了した「5GNR」に準拠した5Gモデムのデモを行なった。

MediaTekブースでの5GNR準拠の5Gモデムのデモ
モデムのプロトタイプ

 といっても、現時点では実際のモデムチップがあるというわけではなく、回路をFPGAなどでシミュレーションしているプロトタイプとなる。

 このため、大きさとしてはデスクトップPCほどある巨大なボックスの中に入っているが、将来は1つの小さなチップになる。同社ブースでのデモでは、3.5GHzの周波数帯で、8つのアンテナを利用して約3Gbpsで通信している様子が確認できた。

2.9Gbpsで通信できていた
5Gで使用される予定の28GHzのミリ波(mmWave)のデモも行なわれており、端末を回転させながら通信できる様子が公開されていた