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シンガポールでHPの近未来的PCを見てきた

「Sprout by HP」

 別記事にてお伝えしている通り、米Hewlett-Packard(HP)は8日(シンガポール時間)、アジア太平洋および日本地域の報道関係者を対象とした製品説明会「HP PPS Innovation Day 2015」をシンガポールで開催し、PCおよびプリンタ最新製品を披露した。

 別記事では、業務用印刷機を取り上げたが、本稿ではコンシューマ向けPCについてご紹介したい。

 今回、この場で発表/紹介された機種はノートが2機種、デスクトップが1機種。ただ、発表というのは、アジア太平洋地域で、ということで、実は北米ではすでに発売されていたりする。とは言え、いずれも特色のある製品なので、紹介しておきたい。なお、いずれも日本での発売は検討中となっている。

3Dカメラ、スキャナ、プロジェクターの機能まで統合した「Sprout by HP」

 「Sprout by HP」は、従来のPCとは一線を画す、近未来的とすら呼べるデスクトップPCだ。まず、目に付くのが、液晶上部に備わったアーム。ここには2つの機能が内蔵されている。

 1つは、1,460万画素のカメラとIntelのRealSense 3Dカメラ。通常のPCだとWebカメラはユーザーに正対しているが、このカメラは液晶の足元を向いており、液晶の手前に置かれた物体を2D/3Dで撮影/スキャンすることができる。構造上、被写体のサイズは1辺が数十cm程度に限られるが、フラッシュも搭載し、何かのデザインに使う要素を取り込んだり、オークションに出品するものを手軽かつ高品位に撮影したりできる。ちなみに、液晶の額縁内に、通常のWebカメラも内蔵しているので、動画チャットなども問題なくできる。

 もう1つ、ここにはプロジェクターが内蔵されている。これによって、Sproutは、本体の液晶と、プロジェクターが卓上に映し出した画面の2画面で利用できる。

 そして、プロジェクターが投影する部分にはマットが敷かれているのだが、このマットは静電容量式タッチセンサーを内蔵しており、プロジェクターで投影した画面をタッチで操作できるようになっている。

 タッチセンサーにより、プロジェクション画面もインターフェイスとして利用できるので、例えばピアノの鍵盤を表示して演奏するアプリや、液晶にはプレイリストなどを表示しつつ、プロジェクション画面にターンテーブルを表示するDJアプリなど、さまざまな使い方が考えられる。なお、液晶もタッチに対応する。

 もちろん、通常のキーボード、マウスも付属するが、専用のペンも付属し、指ではやりにくい細かい操作をペンで行なうこともできるなど、現状のPCが持ち得るユーザーインターフェイスをほぼ網羅している。

このアームのような部分に、RealSenseカメラ、1,460万画素カメラ、プロジェクター、フラッシュが内蔵されている
このようにマットの上に撮影したいものを設置し、撮影すると、即座にスキャンできるほか、マット上にプロジェクターで投影できる
さらにマット上でタッチ操作も可能
元々市販されていたDJアプリが、早速Sprout by HPに対応した
動画編集の場合は、液晶にプレビューを出しながら、マット上で操作ができる

 開発者向けに、この特異な機能を利用するためのSDKも用意されており、これまでのPCでは不可能だったアプリも開発されていくのではと思われるが、個人的にはセガの「え~でる すなば」のようなゲームなどがでてくることを期待したい。

参考までにえ~でる すなばの公式動画

 主な仕様は、Core i7-4790S(3.2GHz)、メモリ8GB、1TBハイブリッドHDD、GeForce GT 745A、1,920×1,080ドット表示/タッチ対応23型液晶、Windows 8.1などを搭載し、米国での価格は1,899.99ドル。

デザイン重視の液晶回転型2-in-1「Spectre x360」

 「Spectre x360」は、デザイン性を重視した液晶回転式の13.3型2-in-1。一体成型のアルミを筐体素材に採用し、薄型で質感の高い外観を実現。通常、金属素材を用いると、無線と干渉するため、アンテナが入る部分だけは数cm程度の幅のプラスチックカバーが使われるが、本製品はデザイン性を損なわないよう、この部分を幅数mmのスリットのようなプラスチックカバーにしている。厚みは15.9mm。

 一方で、大容量のバッテリを採用し、12.5時間駆動を実現。また、ヒンジ部は時計の金属製バンドのような独自のギア式構造が採用され、液晶を滑らかに回転できる。価格は899ドルからで、液晶はフルHD(1,920×1,080ドット)とWQHD(2,560×1,440ドット)を選択できる。

「Spectre x360」
通常のクラムシェルの状態。全体がアルミでできた質感の高い筐体
タッチパッドはジェスチャー操作がやりやすいようにかなり幅を広く取ってある
ギア式構造の独自のヒンジ
タブレットモードにしたところ
天板

日本向けに開発したモバイルノート「EliteBook Folio 1020 G1 Special Edition」

 13.3型ノート「EliteBook Folio 1020 G1 Special Edition」は、米国本社で開発され、すでに日本でも発売されている。前述の通り、この説明会はアジア太平洋および日本地域の報道陣を対象としているが、本製品は日本市場への投入を前提に開発されたものであることが強くアピールされた。

 ここで言う日本向けとは重量のことで、この製品の「Special Edition」が付かない通常モデルは、筐体素材にアルミとマグネシウムを採用し1.2kgとなっているが、Special Editionはマグネシウムリチウム合金とカーボンファイバーを採用することで、ビジネス向け13.3型ノートで最軽量クラスという1kgを実現した。

 同社によると、開発チームは米国だが、常に日本側のチームと連携した開発を行なったと言う。具体的には、当初米国チームは1.2kgの重量で十分軽量と判断したが、日本側は国内メーカーの軽量な製品を参考にさせ、現在の1kgにまで軽量化を追求した。なお、国内で販売されるものは、製造も国内で行なっている。

「EliteBook Folio 1020 G1 Special Edition」
左側面
右側面

(若杉 紀彦)