Spansion、高速NOR型フラッシュ「GL-S」のラインナップを拡充
~4Gbit品の投入も明らかに

アボ・カナジアン氏

2月22日 発表



 米Spansionは22日、日本で記者発表会を開催し、同社の高速NOR型フラッシュメモリ「GL-S」ファミリのラインナップ拡充を発表した。

 GL-Sシリーズは、競合他社製品よりも45%高い98.5MB/secというランダムリード性能を誇る、高性能なNOR型フラッシュメモリ。また、競合他社が256Mbit程度の容量しか実現していないのに対し、Spansionは2010年11月に2Gbit品を発表、量産を開始している。

 今回の発表会は、このGL-Sシリーズに128Mbitから1Gbitまでのラインナップを追加するという、米国での16日付けの発表を受けてのものだが、説明を行なった同社マーケティング担当のバイスプレジデントのアボ・カナジアン氏は、これ以外に4Gbit品も2011年中に投入予定であることを明らかにした。

 GL-Sシリーズは65nmプロセスで製造され、データの記憶に一般的なフローティングゲートではなくMirrorBitと呼ばれる独自のチャージ・トラップ技術を採用した、ハイエンド製品。当初発表された2Gbit品は、高速なランダムリード性能が要求される3Dグラフィックを用いるゲーム機向けに開発されたが、下位のラインナップを揃えることで、車載や医療など他の分野へも展開を図る。また、カナジアン氏は、2Gbitの発表を行なってまもなく、それでは不十分な場合もあることが分かったため、4Gbit品の投入を決めたと、上位品追加の背景について語った。

 GL-Sシリーズのもう1つの特徴は、プログラム速度1.2MB/secと従来品に比べ2倍高速かされていること。これにより、メーカーは1度プログラムを済ませた完成品を、修正したりする必要が生じた場合に、迅速に対応でき、開発コストを低減できるという。

 また、同社製品は容量が違うモデルはもとより、一部の異なる製品間でもピン配列が共通となっているため、柔軟な設計、製造が可能としている。ちなみに、GL-Sシリーズは、前モデルのGLシリーズと同じピン配置だが、チップサイズは13×11mmから9×9mmに縮小している。

 このほか、カナジアン氏は同社の優位点として、顧客の開発に対するサポート力や、自動車業界では15年間に及ぶという長期供給への対応能力などを挙げた。

競合との製品ラインナップの比較。緑色は顧客の要求する仕様/性能を満たす、黄色は一部要求を満たさない、赤は投入予定だったがキャンセルとなったことを示すGL-Sファミリの概要ランダムリード性能は他社製品の45%高速
プログラム速度も高速で、セキュリティ機能も搭載容量やファミリーの異なる製品でも一部同じピン配置を採用GL-SはGLシリーズとピン配置は同じだが、チップサイズは縮小された

 同社の2010年第4四半期の売上高は3億3千万ドル。事業別では、43%が家電&ゲーム機器、23%が車載&産業用機器、ワイヤレス&マシン・ツー・マシンが18%、コンピュータ&通信機器が11%。地域別ではアジア太平洋が39%、日本が24%、ヨーロッパが19%、米国が13%、韓国が5%。同四半期の組み込み市場世界シェアは、2位のMicronの2倍近い約40%を誇る。

 カナジアン氏によると、この中で2011年は、ゲーム機と家電が伸張するとみられる日本市場がもっとも成長すると予測しており、その割合は30%を超えることが確実という。また、日本市場では車載向けも積極展開を図り、GL-Sよりは低容量だが、80MB/secと高速なシリアル型のFL-Sシリーズなども投入する。

 質疑応答では、NANDフラッシュ製造に関するエルピーダメモリとの協業について質問が及んだ。同社はエルピーダにMirrorBitチャージ・トラップ技術に基づくNAND IPライセンスを提供し、エルピーダが製造を行なう。

 この協業の背景について、カナジアン氏は、Samsungが1/2/4Gbit SLC NANDの製造を終了したことを要因の1つとして挙げた。今後もNANDメモリは、MLCについては価格が下がっていくが、Samsungの撤退によりSLCは下がるどころか上昇に転じる可能性があるという。顧客がSLCを求めるのは、エラー補正が1bitで済むという高信頼性を必要としているからであり、その点においてSpansionの技術はNORと同等の高信頼性を競争力のある価格でNANDに適用できるとした。

同社売上のマーケット別、地域別割合直近の組み込み市場でのシェアはダントツ

(2011年 2月 22日)

[Reported by 若杉 紀彦]