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「CPUで目玉焼き」はまだ平和。AI時代の熱対策へレノボが水冷検証施設を開設
2026年5月27日 10:57
レノボ・ジャパンは、千葉県印西市に、水冷技術を検証するための専用施設「Neptuneラボ」を開設した。
MCデジタル・リアルティのNRT12データセンターで運営している「MCデジタル・リアルティイノベーション ラボ(DRIL)」内に設置したもので、AI時代に求められる高密度で、高効率な次世代データセンターの実現に向けて、環境負荷の低減とAI活用の加速を両立するための実証および検証拠点にするという。
レノボ・ジャパンの檜山太郎社長は、「AIに対する投資が大きく拡大しており、日本におけるAI投資額は、2027年には2~3倍(2023年比)になると予測されている。レノボはそれにあわせた製品を用意し、AIの学習にも、推論に対応し、日本の社会、お客様に対して、AIの恩恵を提供できるようにしていく」と前置きしながら、「だが、AIの電力消費に関しても、3倍規模に増加するとの試算がある。データセンターの省電力化は重要な鍵であり、そこに水冷技術を生かすことができる。インテルやニデック、MCデジタル・リアルティといった日本に根差したパートナーと一緒に取り組むことで電力問題にも対応でき、日本の社会、産業、そして企業のAI活用を支援ができる」などと述べた。
Lenovo Neptuneは、AIおよびHPC向けに設計した水冷技術で、レノボが買収したIBMのサーバー事業部門が開発したものだ。すでに13年の歴史を持ち、最新の第6世代のNeptuneは、45℃の温水でも冷却が可能であるほか、蒸留水などの純水を使用しており、有害なグリコール(不凍液)が不要となり、環境にもやさしい冷却が可能だ。
また、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた総合設計により、高密度化、運用効率化、サスティナビリティを実現。あらかじめ、Lenovoの工場で統合し、テストを実施してから出荷しており、外部ポンプの追加などが不要なシンプル設計も特徴となっている。
エクサスケールの世界最速クラスのスーパーコンピュータ向けに構築した実績を持つほか、19インチラック1台未満のサイズにまでスケールをダウンした利用も可能であり、高度なヒートシンクと銅ベースのウォーターループ(水路)設計、アルミニウムベースのコールドプレートの採用により、システムからの熱を100%回収して冷却。厚手のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)や、ステンレス製ホースなどの信頼性の高い素材を採用しており、腐食や微生物(バイオスフィア)への対策処理も行なっている。
さらに、水冷技術は静音性にも優れ、図書館並みの静かさを実現できるという。
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの張磊社長は、「データセンターは世界の電力使用量の3%を占めており、データセンターの設置が増加することで、2030年までに日本の電力需要は3倍になると予測されている。また、データセンターのエネルギー消費の40%を冷却が占めている」と指摘。「Lenovo Neptuneでは、電力消費を40%削減し、性能を最大化でき、電力のほとんどすべてをコンピュータのリソースに費やすことができる。レノボは、長年に渡り、この技術に投資をしてきた」と、メリットを強調した。
新設したNeptuneラボは、レノボの水冷技術であるLenovo Neptuneと、ニデックの冷却液分配装置(CDU)、GPUサーバー、ラック、ネットワーク、監視システムを組み合わせ、AI推論や学習ワークロードにおける性能、電力、冷却、運用性を検証できる。
具体的には、「Lenovo Neptuneを活用した高密度AI基盤の性能、冷却、電力効率の検証」、「ニデックのCDUを組み合わせた冷却ソリューションを活用した検証」、「顧客ワークロードを用いたPoC、推論/学習、ハイブリッド構成を含む検証」、「GPUサーバー、CDU、ラック、ネットワーク、監視システムの統合検証」、「電力、冷却、性能、運用データの取得、分析」、「ハイブリッドクラウド環境との接続、運用性検証」、「ISV、クラウド事業者、SIerとの共同検証によるリファレンス構成策定」といった利用が可能になっている。
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ プロフェッショナルサービス本部長の野上友和氏は、「Lenovo Neptuneをお客様に直接触ってもらうことを目指した施設となる。導入前に、水冷サーバーの使い勝手などを確認してもらえる。また、パートナーとともに、水冷に関わる監視についても検証していくことになる。新たな漏水センサーの実験などに利用したり、将来の技術についても検証したりする施設になる」と位置づけ、「日本のお客様は、水冷の導入に対して躊躇しているところがある。水漏れなどのリスクを懸念する声もある。自ら検証してもらうことで、こうした不安を軽減することを狙う」とした。
ニデックのCDUと組み合わせた共同検証済みの水冷ソリューションを用いることで、顧客は導入前に自社のAIワークロードや運用要件に沿った構成の検討、性能評価、電力効率や冷却効率の確認、運用面を含めた事前検証が可能になる。また、検証結果や設計ノウハウ、運用上のベストプラクティスを共有し、AI推論時代に適したデータセンターインフラの普及を推進。顧客のAI実装とイノベーション創出を継続的に支援することも目指す。
さらに、顧客やISV、クラウド事業者、SIer、データセンター事業者との連携を拡大し、水冷インフラに関する知見を共有するコミュニティの形成を目指す。標準化などに向けた活動も視野に入れる。
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの張社長は、「Neptuneラボは、日本仕様の水冷を完成させるための議論の場になる。日本で水冷市場を拡大するための役割を担う」と位置づけ、「技術、コスト、環境規制、運用体制まで、日本独自のデータセンター環境における課題を徹底的に議論することができる。また、MCデジタル・リアルティの協力により、実際のデータセンター環境で実証が行える。Neptuneラボは、単なる展示場ではなく、日本のデジタル競争力を支えるAI実装のエコシステムそのものになる」とした。
台湾にはLenovo Neptuneの開発拠点があり、これまでは同拠点を活用することで、日本の顧客企業向けの検証などを行ってきた経緯がある。
「日本に検証施設を設置したことで、日本ならではの水事情、電力事情にあわせた検証を行なうことができる。ニデックのCDUを採用したのも、日本のお客様の声を反映しやすい環境を作る狙いがある」(野上本部長)と述べた。
一方、インテル執行役員インダストリー事業本部長の高橋大造氏は、「世界のAI市場は2030年には8,000億ドルに達し、国内AI市場も大きく成長する。AI時代の需要に対応するために、性能だけでなく、電力効率への取り組みはとても重要になる。Neptuneラボを活用して、Lenovo Neptuneによる最新の水冷技術を実証できることは意義があり、期待をしている。インテルもパートナーの1社として、新たな技術を日本のデータセンターのなかに普及させる活動を支援したい」と語った。
また、MCデジタル・リアルティ プロダクトマネジメント営業本部長の北崎博氏は、「Lenovo Neptuneによる最新の冷却システムを、MCデジタル・リアルティのファシリティのなかに設置し、検証を支援することができる。Neptune ラボを設置するDRILでは、すでに水冷システムを設置しており、業務を想定した実証ができるようになっている」と説明した。
ビデオメッセージを寄せた東京大学情報理工学系研究科教授の江崎浩氏は、「AI時代の冷却は、正確には熱移動という捉え方に変わってきている。CPUの熱密度が急速に上昇しており、1990年頃には、CPUの上にフライパンを置くと卵が焼けるほどになっていた。だが、この時代は空冷で済む『平和な時代』だった。
AI時代となると、高密度CPUやGPU、NPUの登場により、水冷でないと耐えきれなくなってきた。オートバイは空冷で済んでいるが、車になると水冷でないと対応できない。これと同じことがコンピュータの世界でも起きている。Neptuneラボは今日のテクノロジーだけでなく、明日に向けて挑戦するテクノロジーについても議論していく場になるだろう。
レノボは、製品開発において、高い信頼性を持ち、熱を外にどうやって出すかというところにも注目している企業である。Neptuneラボが、AI時代のサーバーおよびサーバールーム、データセンターの熱対策に挑戦し、研究開発、事業展開することを期待している」と述べた。
なお、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズでは、水冷サーバーの効果を体験するためのキャンペーンとして、Intel Xeon 6530P 32C 225W 2.3GHzを搭載したSR630 V4の3台構成で、5年間のTruScaleリースで、約35%引きとなる月額125万8,000円(税別)での販売を実施する。
Neptuneラボの様子も公開した。
DRIL内にあるNeptuneラボには、13Uのラック内に、インテルXeon 6900シリーズプロセッサーを搭載したThinkSystem SC750 V4 Neptuneを設置。第6世代のLenovo Neptuneを採用し、ニデックのCDUと接続している。サーバーは48Vで給電しているという。写真でNeptuneラボの様子を見てみる。

























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