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新しいPC向けスナドラはRyzen AIより44%、Core Ultraより75%速くて、しかも低消費電力らしい
2025年9月26日 06:26
Qualcommは、9月23日~9月25日(現地時間)に、米国ハワイ州マウイ島において同社の年次イベント「Snapdragon Summit 2025」を開催した。ここで行なわれた基調講演の内容について紹介していこう。
Snapdragon 8 Gen 5の投入計画を発表
9月24日の基調講演には、Qualcomm Technologies 上級副社長兼Mobile/Compute/XR(MCX)事業本部事業本部長のアレックス・カトージアン氏が登壇し、「Snapdragon 8 Elite Gen 5」について説明した。
カトージアン氏は「我々は昨年に独自設計の第2世代Oryon CPUを搭載した製品を投入した。そして今年はさらにOryonを第3世代に強化したSnapdragon 8 Elite Gen 5を発表する。第3世代Oryonは、新しいモバイル向けCPUの性能を定義するCPUとなる。プライムコアCPUは4.6GHzにブースト可能で、CPUクラスタごとに12MBのL2キャッシュを持っているなどの特徴を備えている。それにより、Geekbenchのシングルスレッドで20%、マルチスレッドで17%、さらにはWebブラウジングのベンチマークで32%の性能向上を実現する」と述べ、性能向上を強調した。
カトージアン氏は、GPUに関しても3スライスのスライスアーキテクチャを採用し、クロック周波数が1.2GHzに引き上げられたことや、新しいキャッシュメモリとなるAdreno HPM(High Performance Memory)が18MB搭載されていることで性能が23%、レイトレーシングで25%の性能向上が実現されていると説明した。
また、「NPUはSnapdragon 8 Elite Gen 5で大きく強化された点の1つだ。内部構造などの見直しなどにより、最大37%の性能向上を実現する」と述べているほか、ISP(Image Signal Processor)が20bitに対応していることにも触れた。
このSnapdragon 8 Elite Gen 5搭載製品を今後発表するOEMメーカーとして、Samsung Electronicsのモバイル体験事業部プレジデント/COOのウォン・ジョン・チョイ氏がステージに呼ばれ、スピーチを行なった。
チョイ氏は「我々が業界でいち早くGalaxy AIをGalaxy S24などに搭載できたのもQualcommとのパートナーシップがあったからだ」と述べ、SamsungがGalaxy S24シリーズの投入時に、Galaxyシリーズ向けのAI機能となる「Galaxy AI」を導入するのにSnapdragon 8 Gen 3を採用し、さらに今年投入されたGalaxy S25シリーズなどではSnapdragon 8 Elite(Gen 4)を採用していることなどが強調された。
今年の末までに累計で4億台のGalaxy AIに対応したデバイスが市場に投入される見通しだという。その後、QualcommのCEOであるクリスチアーノ・アーモン氏もステージに上がり、カトージアン氏、チョイ氏の3名で記念撮影が行なわれた。
基調講演の最後にはカトージアン氏が「もう1つ発表することがある」と述べ、Snapdragon 8 Elite Gen 5の下位となるハイエンド製品を今後投入する計画であることを明かした。
Ryzen AI HX 370と比較して44%、Core Ultra 9 285Hと比較して75%の性能向上
Qualcommのコンダップ氏は、同社のPC向け最新製品となるSnapdragon X2 Elite Extreme/X2 Eliteに関して、CPUとなる第3世代Oryon CPU、新しいAdreno GPUとNPUの説明を行なった。詳しくは以下の記事を参照いただきたい。
今回のコンダップ氏の基調講演で注目を集めたのは、競合他社との性能比較だ。Snapdragon X2 Elite ExtremeとRyzen AI HX 370との比較では、同じ消費電力での性能は44%高く、Ryzen AI HX 370で同じ性能を実現するには144%多くの電力を必要とすると説明された。
また、Snapdragon X2 Elite Extreme とCore Ultra 9 285Hとの比較では、同じ電力であれば75%性能が向上し、同じ性能であればCore Ultra 9 285Hは222%より多い電力を必要とすると説明した。
GPUに関しても同様の説明があり、Snapdragon X2 Elite ExtremeとCore Ultra 9 288V(こちらはLunar Lakeなので、Xe2 Graphicsになる)との比較では、同じ電力であれば52%性能が向上し、同じ性能であればCore Ultra 9 288Vは92%より多い電力を必要とするという。
さらにNPUに関しても、Core Ultra 9 285H(Intelの第3世代NPUなので13TOPS)に比べて5.7倍の性能を実現しているというグラフが公開された。
コンダップ氏はWindowsアプリケーションのSnapdragonへの最適化も進んだと説明し、Adobe Photoshopで従来製品と比較して性能が28%、Lightroomでは43%、Premiere Proでは47%向上したと述べている。
これまでSnapdragon Xシリーズの課題とされてきたゲームでの互換性に関しても対応が進んでいると強調。すでに発表されているFORTNITEの対応などが進められているとした。
RazerのCEOであるミン・リアン・タン氏がビデオで出演し、同社がQualcomm製品の採用を計画していることを明らかにした。もちろん、現状のSnapdragonはディスクリートGPUに対応していない(AMD、Intel、NVIDIAの各社がArm版のGPUドライバを用意していないため)ので、ハイエンドゲーミングノートPCなどに採用されることは考えにくいが、カジュアルゲームがプレイできるような薄型ノートPCなどの製品はあり得るだろう。
後半にはMicrosoftで技術フェロー兼執行役員Windows/デバイス担当を務めるスティーブン・バッチェ氏が登壇し、MicrosoftのCopilot+ PC戦略や、クラウドとエッジのハイブリッドAIに関する戦略などを説明した。
バッチェ氏はすでに140億パラメータのPhi-4のリーズニングモデルがSnapdragon XシリーズのNPUで動作しているとし、今後Qualcommがサポートする予定のINT2の精度を利用した推論システムや今回発表された80TOPSのNPUなどを活用することでより強力なSLM(Small Language Model)などを実行可能になるという。ローカルAIの機能を拡張するといった期待感を表明した。
Adobe MAXでAIエージェント時代の新ビジョンを説明
基調講演に先立って行なわれた「CEO-to-CEO Chat」には、AdobeのCEOであるシャンタヌ・ナラヤン氏が登壇し、Qualcomm CEO クリスチアーノ・アーモン氏と対談を行なった。
この中で、今回発表されたSnapdragon X2 EliteのNPUへの対応を問われると、ナラヤン氏は「Adobeは生成フィル(塗りつぶし)のような生成機能を提供してきたが、それは静止画までの対応で、動画への対応は難しかった。しかし、新しい種類のプロセッサをサポートすることで、そうした機能を実現できる可能性がある。Premiere ProやAfter Effectsといった製品で、動画や音声などの生成に新しいプロセッサを利用することで、リアルタイムに処理が行なえるようにしていきたい」と述べた。
Adobeの「生成フィル」といった機能は、クラウドベースのAIで提供してきたが、大量のデータをネットワーク経由で転送するのが難しい動画や音声の処理などには、ローカルのプロセッサを積極的に使った実装を実現していきたいということだ。
AIエージェントやエージェント型AIに対するAdobeのビジョンを聞かれると、ナラヤン氏は「10月にはAdobe MAXというクリエイター向けのイベントを行なうが、そこで新しいビジョンを公開する計画だ。AIエージェントやエージェント型AIは、従来のコンピュータのモデルとは異なった形になると思う」と述べている。


































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