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スマホ向けSnapdragon 8 Elite Gen 5は、CPU、GPU、NPUのいずれも2割以上の性能向上

Snapdragon 8 Elite Gen 5

 Qualcommは9月24日(ハワイ時間)、同社の年次イベント「Snapdragon Summit」において、スマートフォン向けフラグシップSoC製品となる「Snapdragon 8 Elite Gen 5 Mobile Platform」(以下Snapdragon 8 Elite Gen 5)正式に発表した。

CPUは第3世代Oryonへと進化して動作クロックが向上、前世代に比較して20%の性能向上

第3世代Oryon CPUの性能向上幅

 Snapdragon 8 Elite Gen 5は、昨年(2024年)発表されたSnapdragon 8 Eliteの後継となる製品だ。Snapdragon 8 Eliteの次なのに第5世代(Gen 5)という名称であることに不思議な印象を抱く方も少なくないだろう。これは、2021年に発表されたSnapdragon 8 Gen 1から数えてという意味だ。Snapdragon 8 EliteがすでにSnapdragon 8としてはGen 4相当であり、Snapdragon 8 EliteがGen 5になったということになる。この5年間のSnapdragon 8シリーズのスペックなどをまとめたものが以下の表となる。

【表1】Snapdragon 8シリーズ(Qualcommの資料などをもとに筆者作成)
ブランドSnapdragon 8 Elite Gen 5Snapdragon 8 EliteSnapdragon 8 Gen 3Snapdragon 8 Gen 2Snapdragon 8 Gen 1
発表年2025年2024年2023年2022年2021年
CPUブランド名第3世代Oryon CPU第2世代Oryon CPU新Kryo新Kryo新Kryo
Arm ISAArmv8Armv8Armv9Armv9Armv9
プライムコアOryon/プライム(2)Oryon/プライム(2)Cortex-X4(1)Cortex-X3(1)Cortex-X2(1)
高性能コアOryon/パフォーマンス(6)Oryon/パフォーマンス(6)Cortex-A720(5)Cortex-A715(2)/A710(2)Cortex-A710(3)
高効率コア--Cortex-A520(2)Cortex-A510(3)Cortex-A510(4)
L3キャッシュ--12MB8MB6MB
GPUブランド名Adreno 840Adreno 830Adreno 750Adreno 740Adreno 730
メモリ種類/データレートLPDDR5x-5300LPDDR5x-5300LPDDR5-4800LPDDR5-4200LPDDR5-3200
NPU新Hexagon NPU新Hexagon NPU新Hexagon NPU新Hexagon DSP新Hexagon DSP
ISP新Spectra新Spectra新Spectra新Spectra新Spectra
モデムX85(内蔵5G)X80(内蔵5G)X75(内蔵5G)X70(内蔵5G)X65(内蔵5G)
製造プロセスルール3nm3nm(TSMC)4nm(TSMC)4nm(TSMC)4nm(Samsung)

 近年のSnapdragon 8シリーズで、最大の変化をもたらした製品はSnapdragon 8 Elite(Gen4相当)だ。従来SnapdragonシリーズのCPUは、Arm社がIPライセンスとして提供している「Cortex」シリーズを採用。Snapdragon Snapdragon 8 Gen 3では、Cortex-X4が1基、Cortex-A720が5基、Cortex-A520が2基という8コア構成になっていた。

 しかし、Snapdragon 8 Eliteでは、CPUが自社設計のOryonに切り替えられた。OryonはQualcommが買収したArm系CPU設計企業であるNuviaのリーダーだったジェラード・ウイリアムズ氏が中心になって設計した自社製CPU。PC用のSnapdragon Xシリーズなどにも採用され、高性能かつ高い電力効率を実現しているとして高い評価を受けてきた。Snapdragon 8 Eliteでは、そのOryonの第2世代が搭載され、パフォーマンスコアが6基と、プライムコア2基の8コア構成になっていることが大きな特徴になっていた。

 Snapdragon 8 Elite Gen 5では、Oryonが第3世代に強化されており、Qualcommによれば、前世代に比べてシングルスレッド時の性能が20%、マルチスレッド時の性能が17%強化されている。

CPUとGPUのクロック周波数など

 その大きな要因はクロック周波数が引き上げられたことだ。Snapdragon 8 Eliteではプライムコアは最大4.32GHz、パフォーマンスコアは最大3.53GHzだったが、Snapdragon 8 Elite Gen 5ではプライムコアは最大4.6GHz、パフォーマンスコアは3.62GHzに引き上げられていた。

 なお、CPUクラスタごとに12MBというL2キャッシュの容量は同容量で、L3キャッシュに関しては従来モデル同様に搭載されていない。

GPUとNPUも改良され23%と37%の性能向上、今後数日中に端末メーカーから発表予定

GPUとNPUの詳細

 GPUはSnapdragon 8 Eliteで採用されていたAdreno 830の改良版であるAdreno 840となる。Qualcommでは内部型番(8xxや7xxなど)の3桁の1桁目の数字がGPUアーキテクチャの世代を示しており、そのルールからすると今回のAdreno 840はAdreno 830の改良版と位置づけられていることが分かる。

 スライスアーキテクチャを採用し、動作クロックが1.2GHz(Adreno 830では1.1GHz)に引き上げられていることが特徴。また、Adreno HPM(High Performance Memory)という仕組みが採用されており、帯域幅の効率活用やメモリ遅延の削減が実現されており、実効性能に好影響を与えている。こうした改良により前世代と比較して23%の性能改善が実現されている。

 NPUも改良が加えられており、従来世代と比較して約37%の性能向上が実現されている。昨年のSnapdragon 8 Eliteでは8スカラー+6ベクタ+1テンサーアクセラレータという構成になっていたが、Snapdragon 8 Elite Gen 5では12スカラー+8ベクタ+1テンサーアクセラレーターという構成に強化されており、それが37%の性能向上の理由だと考えられる。

 なお、SoCのプロセスノードは3nmとなっている。

リファレンスデザインの端末

 Qualcommによれば、今後グローバルなスマートフォンメーカーから搭載端末が発表され、順次出荷される。Honor、iQOO、Nubia、OnePlus、OPPO、POCO、realme、REDMI、RedMagic、ROG、Samsung、Sony、vivo、Xiaomi、ZTEなどがそうしたメーカーとして上げられている。

 そのうちのいくつかは今後数日のうちに発表される予定。これから11月にかけて中国のスマートフォンベンダーによる中国国内向けフラグシップ製品の発表ラッシュが予想されており、そうした製品に搭載されて登場する可能性が高いと言えるだろう。