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iPhone 17 Proを上回るSnapdragon 8 Elite Gen 5のスマホ。実際に性能を比較してみた

Geekbench CPUの結果を表示。左からSnapdragon 8 Elite搭載のXiaomi 15 Ultra、中央がSnapdragon 8 Elite Gen 5搭載のQualcommリファレンスデザイン、右がA19 Pro搭載のApple iPhone 17 Pro

 Qualcommが新しいフラグシップスマートフォン向けSoC「Snapdragon 8 Elite Gen 5」を発表した。

 現在、米国ハワイ州マウイで開催中のSnapdragon Summitでは、Snapdragon 8 Elite Gen 5を搭載したリファレンスデザインのスマートフォンが公開され、実際にベンチマークテストを行なえるようになっていた。筆者手持ちのiPhone 17 Proなどと性能を比較してみたので、その結果を報告しよう。

Snapdragon 8 Elite Gen 5のCPUは20%、GPUは23%性能向上

Snapdragon 8 Elite Gen 5

 QualcommはSnapdragon Summitの2日目に、同社の最新フラグシップスマートフォン向けSoC「Snapdragon 8 Elite Gen 5」を発表した。その発表概要に関しては別の記事を参照いただきたい。

 今回発表されたSnapdragon 8 Elite Gen 5に搭載されているOryon CPUは、従来世代(Snapdragon 8 Elite)に搭載されていた第2世代から第3世代へと進化している。

 ただ、CPUのデザインの基本構造はキープコンセプトとなる。CPUの構造は、2基のプライムコアと6基のパフォーマンスコアとなる。それぞれのクラスタに12MBのL2キャッシュが搭載され、L3キャッシュはなしとなっており、この点では第2世代と第3世代に大きな変化はない。

 しかし、いずれの製品もクロック周波数が引き上げられており、プライムコアは最大4.6GHz(従来製品は最大4.32GHz)、パフォーマンスコアは最大3.62GHz(同3.53GHz)となっており、それが性能向上に最も影響を与えそうな強化点となる。

GeekbenchのCPU情報で確認すると2つのクラスタ(CPUコアのかたまり)のうち、クラスタ1が6コア(これがパフォーマンスコア)で3.63GHz、クラスタ2が2コア(これがプライムコア)で4.6GHzであることが分かる

 GPUに関しても同様で、Snapdragon 8 EliteではAdreno 830という新しいスライスアーキテクチャを採用したGPUが採用されたが、今回のSnapdragon 8 Elite Gen 5ではAdreno 840というGPUになっている。

 QualcommはGPUアーキテクチャを変えたときには、GPUの型番の3桁のうち1桁目を上げるため、今回はAdreno 830の改良版という位置づけのGPUだと分かる。

 ただし、GPUの動作クロックは従来モデルの1.1GHzから1.2GHzへと引き上げられている。また、メモリアクセスの改良により、実効メモリ帯域幅と低遅延が実現されている。Qualcommはそうした総合的な改良により、GPUの性能が23%引き上げられているとしている。

AppleのA19 Proを上回る性能

QualcommのSnapdragon 8 Elite Gen 5搭載リファレンスデザイン機

 今回筆者はQualcommが現地で公開したSnapdragon 8 Elite Gen 5を搭載したリファレンスデザインの端末を使用して、ベンチマークを行なった。

 この端末は、Qualcommがセットアップし、ベンチマークプログラムなどをインストールした端末となる。スペックとしてはSoCがSnapdragon 8 Elite Gen 5、メモリが24GB LPDDR5x(5.3GHz)、ストレージが1TB(UFS 4.1)、バッテリは4.3Ahという端末だ。

 比較対象は昨年型のSnapdragon 8 Eliteを搭載したXiaomi 15 Ultraと、先日発売されたばかりのiPhone 17 Pro(Apple A19 Pro搭載)の2つとなる。

 いずれも筆者の私物で、業務に利用している端末となるので、さまざまなアプリケーションがインストールされている状態であり、ベンチマークしかインストールされていないSnapdragon 8 Elite Gen 5リファレンスデザイン端末に比べて結果が不利である可能性はあるので、そのことはお断わりしておきたい。とはいえ、最大限性能が発揮できるモードに設定してテストを行なっている。

 テストに利用したベンチマークはCPUがGeekbench 6.5、GPUがGFXbench 5(Androidは5.1.5、iOSは5.0.5)になる。今回はテスト時間に限りがあったため、この2つに絞ってテストをした。

 なお、グラフィックス系のベンチマークは、AndroidではOpenGLなど複数のAPIが使える(iOSではMetalのみ)が、今回はVulkanでテストをしている。これはAndroidのゲームタイトルの大多数がVulkanを利用しているためだ。結果は以下の通り。

 GeekbenchのCPUテストでは、シングルスレッドに関しては若干Apple A19 Proが上回っているがほぼ同等、マルチスレッドに関してはApple A19 Proを大きく上回っている。GFXbench 5に関しては昨年型のSnapdragon 8 Eliteの段階ですでにApple A19 Proを上回っており、もちろん新モデルのSnapdragon 8 Elite Gen 5はそれを上回っている。

 ただ、この結果はあくまでQualcommが設計したリファレンスモデルでの結果であって、実際の製品では異なる可能性が高いことを指摘しておく必要があるだろう。というのも、スマートフォンにせよ、PCにせよ、CPUやGPUの性能は、端末の熱設計に依存することはすでによく知られている。熱設計は端末メーカー次第で、たとえばより薄型の端末を作る時には、多少熱設計で妥協して性能を犠牲にしても薄くするなどの設計が施される可能性がある。

 今回の結果で見ても、Qualcommの公式見解では昨年型から本年型への性能上がり幅はシングルスレッドで20%、マルチスレッドで17%だが、Snapdragon 8 EliteのXiaomi 15 UltraとSnapdragon 8 Elite Gen 5への上がり幅はシングルスレッドで約34%、マルチスレッドで約42%向上している。

 そのため、実際に市場に出たデバイスでは今回のような性能が出ない可能性があり、そこは端末メーカーのデザイン次第だ。そう考えると、すでに販売されているデバイスにおいてCPUテストでこれだけの結果を出しているiPhone 17 Proはすごいと言える。

 その意味では実際の評価は実端末が出たあとということになるが、少なくともQualcommのリファレンスデザインと同じレベルの熱設計を施せば、これだけの性能を出せるというのが、Snapdragon 8 Elite Gen 5のリファレンスデザイン機のベンチマーク結果の妥当な評価と言えるだろう。

Snapdragon 8 Elite Gen 5のチップ表裏