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100倍の性能目指す富岳NEXTにNVIDIA製GPU。2030年の稼働に向け、開発体制始動を宣言
2025年8月25日 06:00
次世代スーパーコンピュータ「富岳NEXT」の開発体制が、いよいよ始動した。新たにNVIDIAが参画することを発表。理化学研究所(理研)が開発主体となり、富士通、NVIDIAによる3者が連携した開発体制を確立し、2030年頃の稼働に向けて、開発を本格化する。
2025年8月22日午前10時から、東京・日本橋の理化学研究所東京地区において、「富岳NEXT開発体制始動記念式典」を開催。挨拶した理化学研究所の五神真理事長は、「富岳NEXTプロジェクトは、日本の科学技術政策における骨格的重点施策である。富士通とNVIDIAという世界をリードする企業と一緒に富岳NEXTを開発できることを光栄に感じる。富岳NEXTは時代が求める人類共有の計算基盤であり、その実現は大きな意義があると確信している」と挨拶。
また、「計算は人類の歴史的発展を支えてきた文明の礎である。そして、AIや先端半導体、量子技術などの革新的技術の登場により、計算を支える科学技術は目覚ましいスピードで進化し、計算科学は歴史的パラダイムシフトと呼ぶ変革を迎えている。一方で地球温暖化に伴う異常気象、国際的緊張の高まり、経済的および社会的格差の拡大など、地球規模での複雑な問題に対して、科学と社会が総力をあげて取り組む必要がある。富岳NEXTは、人類の計算可能な領域を飛躍的に拡大し、共通の課題を乗り越えことができる。計算を目的とするのではなく、人類が解きたい課題のために計算可能領域を拡張し続けることを目指す」と述べた。
加えて、「富岳NEXTは、継承と革新の両立を基本理念に掲げている。AIや先端半導体、量子技術の時代に相応しい計算機として、これらを結びつける中核的役割を担うことを約束する。現在の富岳に対して、100倍という圧倒的な計算能力を実現し、計算科学の新たなパラダイムを世界に先駆けて切り開くことになる。また、先端半導体技術を先取りして社会に実装する絶好の機会にもなる」としたほか、「この挑戦は、Made in Japanではなく、Made with Japanである。日本が培った技術力を基盤としながらも、志を同じくする世界のパートナーと連携し、ともに未来を形づくることになる。新たな歴史の一歩を踏み出せる」と抱負を述べた。
「富岳NEXT」(開発コードネーム)は、スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となる新たなフラグシップシステムであり、理研によると、既存のHPCアプリケーションで現富岳の5~10倍以上の実効計算性能を持つほか、AI処理ではゼッタ(Zetta)スケールのピーク性能を念頭に置き、50E(エクサ)FLOPS以上の実効性能を目指している。また、シミュレーションとAIの融合により、総合的には最大100倍となるアプリケーション性能の高速化を目標にしている。
全体システムおよび計算ノード、CPU部の基本設計は、すでに理研と富士通が協力して進めてきたが、日本のフラグシップシステムとしては初めて加速部にGPUを搭載することを明らかにしており、このほど、基本設計の業務実施者としてNVIDIAが参画することを決定。今後、3者が共同でハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の基盤となる「AI-HPC プラットフォーム」の構築を進めることになる。
富岳NEXTでは、CPUに富士通のFUJITSU-MONAKA-Xを採用するほか、NVIDIAの最新テクノロジであるNVLink Fusionを通じて、CPUとNVIDIAのGPUアーキテクチャを、ほかの技術では達成できない高帯域幅で接続することを基本設計の中で検討。また、富岳NEXTは、量子シミュレーション用のNVIDIA cuQuantum、データサイエンス向けのRAPIDS、高速推論のためのNVIDIA TensorRT、大規模言語モデル開発向けのNVIDIA NeMoなどのNVIDIA CUDA-Xライブラリのほか、科学や産業向けにカスタマイズされたドメイン固有のSDKまで、NVIDIAソフトウェアスタック全体を活用することで対応することができるという。
さらに、仮説の生成やコードの作成、実験シミュレーションなどを自動化するほか、代替モデルと物理情報に基づくニューラルネットワークによるシミュレーションを高速化する「科学研究」、AIを使用してシミュレーションから学習し、最適な設計をより迅速に生成する「製造」、災害への備えと予測を支援し、気象予報の精度を高める「地球システムモデリング」などのアプリケーションをサポートするという。
理化学研究所 計算科学研究センターの松岡聡センター長は、「富岳NEXTのゴールは、世界最高水準のインフラ、技術、人材、アプリケーションを醸成し、価値創造を支援するゼッタスケールの計算資源を提供することと、世界に対して、訴求力を持った国産技術を高度化し、AI先進国として確固たる地位を獲得することを目指す点にある。
CPUやGPUを購入して搭載するのではなく、富士通およびNVIDIAとともに、世界最高のAI時代のCPUおよびGPUを設計し、理研とともに、世界最高のスーパーコンピュータシステム、ソフトウェア、アプリケーションを作ることになる。富岳NEXTに留まらず、世界のスーパーコンピュータにも活用され、標準規格となり、普及していくことも目指す。半導体のリーダーシップも築いていく。ARMアーキテクチャを受け継ぎながら、さらなる発展を目指したシステムを構築し、富岳の系譜を継ぎつつ、新たな次世代計算基盤を目指すことになる」と位置づけた。
また、「京から富岳では100倍の性能向上を実現したのと同様に、富岳から富岳NEXTでも100倍の性能向上を目指す。だが、ここには大きな違いがある。それは、京から富岳への性能向上は、その多くがハードウェアの進化によるものであった。これに対して、富岳から富岳NEXTでは、ハードウェアの進化だけでなく、理研やパートナーが培ってきた新たなシミュレーション技術なども貢献することになる。エクサ時代の入口となるスーパーコンピュータになる」と語った。
富士通 執行役員副社長 CTO、システムプラットフォーム担当のヴィヴェック・マハジャン氏は、「富士通が開発しているFUJITSU-MONAKA-Xは、2029年度に最新になると見込まれる1.4nmのプロセスノードを採用したものになる。次世代に求められる高性能、省電力性を備えた国産プロセッサであり、NPUによるAI高速化処理、HPCに最適な高いスケーラビリティ、GPUとの密結合などの特徴を持ち、高い省電力性とセキュリティを両立することになる。ソブリンAIの実現にも貢献できる。
FUJITSU-MONAKAは、富岳NEXTだけに提供するものではなく、Supermicroをはじめとして広く提供していくものになる。富士通は、これまでにも理研とともに、日本のスーパーコンピュータを支えてきた。AIをリードできる技術を日本で作っていくことを目指している。富岳NEXTの開発をしっかりと支えたい。さらに、量子コンピュータとの連携についても貢献していく」と語った。
FUJITSU-MONAKA-Xの生産については、「富士通では、これまではTSMCを活用した経緯がある」と前置きしながらも、「Rapidusにも参加しており、富士通が推進するMade in Japan戦略でも、Rapidusは大事な位置づけになる。設計が決定した時点で、生産を決定したい」として明言を避けた。
参加したNVIDIA ハイパースケール/ハイパフォーマンス コンピューティング担当バイスプレジデントのイアン・バック氏は、「NVIDIAによる日本への協力は15年以上に渡っており、2009年には東京工業大学(現・東京科学大学)のスパコンであるTsubame1.2において、GPUを搭載した経緯がある。2017年には、AIディープラーニング向けサーバーとして、NVIDIA DGX-1を理研に導入した。これは世界で2件目だった」と、これまでの経緯を振り返る。
また、「シミュレーションとAIが融合することが当たり前になり、不可能だと思っていたものができるようになってきた。パーソナライズされた医療が可能になり、製造分野ではAIによって最適化されたシミュレーションによってクルマや飛行機が生産されている。富岳NEXTは、計算ツールではなく、科学的ブレイクスルーを生み出す原動力になる。日本から社会問題を解決し、科学者が可能性の限界を広げることができる。
理研、富士通、NVIDIAは、補完することができる立場にあり、世界最高水準の専門性を持つチームを形成できる。富岳NEXTでは、富士通が持つシステム統合力と、NVIDIAの計算プラットフォームにより、強力で、バランスが取れた高効率な科学計算基盤を実現できる。日本だけでなく、世界の科学技術の発展につなげることができる」と語った。
なお、富岳NEXTに搭載するGPUのアーキテクチャについては、BlackwellやRubinには限定せず、「現時点でも発明を続けている。富岳NEXTによるコラボレーションから発明が生まれる」と述べた。
文部科学省 研究振興局の淵上孝局長は、「昨今の技術革新に伴う計算資源需要の急増する中、高いAIシミュレーション性能を実現する富岳NEXTに対する期待が高まっている。このほど、国際連携による富岳NEXTの開発体制が整った。科学研究を先導する理化学研究所と、日本の技術力を象徴するグローバルICT企業である富士通に加えて、世界のAI産業を牽引するNVIDIAが加わることによってもたらす効果は、科学技術の発展のみならず、グローバル市場への訴求といった経済社会の貢献においても計り知れないものがある。
富岳NEXTが、情報科学技術産業を開拓、先導し、AI処理などの加速により、新たな技術革新をもたらし、さまざまな社会課題の解決に資するためにも、富岳NEXTの進捗、成果について、適切な評価を行ない、必要な施策を推進していく」と述べた。

























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