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「家族と一緒にものづくりをした経験が将来の選択肢を増やす」。マウス飯山工場で親子パソコン組み立て教室開催

 マウスコンピューターは8月14日から15日にかけて、長野県飯山市の同社飯山工場において、親子パソコン組み立て教室を開催した。

 親子パソコン組み立て教室は、マウスコンピューターが小学6年生を対象として毎年夏に開催しているイベント。今回で13回目の開催となる。組み立てるPCは参加者があらかじめ購入したもので、工場内に配置されたパーツのピックアップから組み立て、梱包までの一連の流れを体験できる。

 今年は初めての試みとして、2日間にわたる開催となった。14日はデスクトップPC、15日はノートPCの組み立てを行なう形で分けられており、14日に1回、15日は午前と午後で1回ずつの計3回実施。各回20~26組、合わせて67組の親子が参加した。希望者には14日開催の「千曲川河畔納涼花火大会」の観覧席も用意された。本稿では14日に実施したイベントの様子をお伝えする。

14日参加者の集合写真

 開校式で挨拶した軣秀樹社長は、マウスコンピューターが展開している「子どもたちに体験する場を提供する」取り組みを紹介。親子パソコン組み立て教室やキッザニア東京/甲子園で展開しているパビリオン、飯山市と連携して実施しているプログラミング教室などについて言及した。

 「我々は"何もないところから形にする"あるいは"部品を組み立てて動くようにする"という楽しみを小さい頃から体験いただき、それが将来、何らかの形で役立つのではないかと考えています。今回は飯山市様のご協力で、花火大会コラボという初の試みを実現することができました。今日みなさんに組み立てていただくのは、みなさんだけの、世界に1つだけのパソコンです。ぜひ楽しんで組み立てを体験いただければと思います」(軣社長)

マウスコンピューターの軣秀樹社長

 来賓として招待されていた飯山市の伊東ゆかり副市長はまず参加者に対して、飯山市への来訪に謝意を示した。今回は岡山県からの参加もあり、遠方からの参加者にねぎらいの言葉をかけている。また長期休暇のシーズンに開催したイベントであることに関連して、夏季の千曲川で実施しているラフティングやカヌー、冬期のスキーなど、飯山市には通年でさまざまなアクティビティがあることをアピールしていた。

飯山市の伊東ゆかり副市長

 PCの組み立てに先立ち、工場スタッフによる「PCパーツ説明」と、実際に組み立てるパーツを工場の棚から集める「パーツピッキング」、組み立て作業の練習という位置づけの「親子トライアル」を実施した。

 PCパーツ説明では、PCを構成する各パーツの形状や役割、取り扱う上での注意点などについて説明した。ここではマザーボードやCPU、メモリ、GPU、ストレージ、電源など各パーツを人間の部位にたとえて解説したり、CPU/マザーボードのピンやメモリの端子部分に直接触れないようにするなど、基本的な注意点について具体例を挙げて説明していた。

参加者は入場してまず組立用の手袋を着用
組み立てに先立ち、パーツの役割や取り扱い上の注意点について説明した
各パーツについて詳細かつ分かりやすく解説しており、参加児童の食いつきもよかった

 パーツピッキングは、パーツを宝に見立てた宝探し形式で実施した。必要なパーツは参加者ごとに異なるため、参加者には目的のパーツが置かれた棚に星マークの書かれた地図が手渡され、先生役の従業員と必要なパーツの個体を確認しながら倉庫内を回る。

 マザーボードやビデオカードなど大きなパーツは集めるのも簡単だが、取扱説明書や保証書、ステッカーの類は細かく分類されており、専用のエリアが用意されている。ここでは取り違えがないように、工場内に備え付けのリーダーで地図に印刷されたバーコードを読み取って、ランプが点灯した棚から書類を取り出す仕組みになっていた。

パーツピッキングは先生と親子で協力してパーツを集める作業
広い工場から目的のパーツを探す
棚にはパーツの型番とIDが記載されている
マニュアル類などはバーコードで読み取り、ランプが点灯した該当の棚から取り出す

 親子トライアルでは、自分のPCを組み立てる前に、練習用のパーツを使って組み立て作業の予行演習を行なった。特にCPU、メモリ、M.2 SSDについては細心の注意を払って取り付ける必要があることから、先生が児童に手厚く指導する様子も見られた。

自分のPCを組み立てる前に練習する作業台
用意された工具類
先生と一緒に手順を確認しながら組み上げていく
親子トライアルでは内容により景品付きの賞が授与された
軣社長も審査に参加していた

 組み立て工程に入ると、参加者に割り振られた作業台で各自集中して組み立て作業を行なう。作業台のモニターには組み込むパーツや組み込み手順を記載した指示書が映し出されており、児童は時折不明点を先生に確認しつつ、組み立て作業を進めていた。

 この日の組み立て所要時間はおよそ1、2時間程度。組み立てが終わると、起動確認と梱包を経て記念写真を撮影し終了という流れ。

 Core i7-14700F+GeForce RTX 5060 Tiという構成でPCを組み立てていた親子にお話を伺った。今回購入したPCはG TUNEのゲーミングPCだが、親子共用のPCとして使う予定なのだという。用途を聞いたところ、保護者は仕事でCADソフトを使い、児童は本格的な動画編集をやってみたいとのことで、どちらもそれなりに高負荷になることから、高めのスペックを選んだという話だった。

組み立てを始める前にピッキングしたパーツの確認
最初にCPUやストレージなどを組み込んでいく
M.2 SSDなど繊細な作業では先生の補助も受ける
マザーボードに無線アンテナを組み込む
液冷CPUクーラーを設置している様子
拡張スロットのカバーを外して……
ビデオカードを装着
電源から配線を行なう
組み上がったら動作確認を実施。無事起動が確認できた
校長先生から修了証を授与
最後に梱包してイベント終了となる
特別なイベントということもあって、組み立て作業中の児童の様子をスマホで記録している保護者も多くみられた

 軣社長が就任して2回目の開催となった今回の親子パソコン組み立て教室では、2日間の開催や地元花火大会とのコラボなど、これまでとは違った取り組みが目を引く。軣社長によれば、花火大会とのコラボはマウスコンピューター側から市に声をかけて実現したものだという。

 「花火大会とのコラボについては、参加された方にとって、パソコン組み立て教室とのプラスアルファで思い出に残るものになればと思い、市にお声がけした次第です。毎年同じことの繰り返しになってしまうのもよくないと思いますので、イベントの内容は今後もアップデートしていきたいと思っていますね」(軣社長)

 親子パソコン組み立て教室を筆頭に、キッザニアへの出展など、マウスコンピューターでは長らく子どもの体験を重視した施策を続けている。児童層のユーザーにこうした体験を提供する背景には、児童の将来的な選択肢の幅を拡げる狙いがあると話した。

 「私の実体験もあるのですが『小さい頃に何を体験したのか』は、子どもたちが将来採りうる(職業を含めた)選択のきっかけになると思っています。子どもたちには、いろんな経験をして将来の選択に臨んでほしいです。そういう意味でキッザニアってすごく良い取り組みですよね。当社はセル方式という古いやり方でPCを生産していますが、こういった場で家族と一緒にものづくりをする経験というのもそのひとつです」(軣社長)

 ユーザーへのものづくり体験支援というテーマに関しては、2025年8月に再開した「組立ワークショップ」についても言及している。これはPCを購入した顧客が、マウスコンピューター社員のサポートを直接受けつつ、自分でPCを組み立てることのできる有料サービスだ。本サービスの再開についても、ユーザーのものづくり体験を支援したい思いがあったという。

軣秀樹社長

 マウスコンピューターは2025年に入って、G TUNEブランドの刷新や春日部ダイレクトショップの新装開店、大阪万博への協賛などさまざまな施策を進めている。今後取り組みたいことについて伺ったところ、軣社長は「Eスポーツの振興」と「AIの活用」の2つを挙げた。

 「今後やってみたいことの1つとして、eスポーツ市場を盛り上げていきたいと思っています。ただ我々にできることはハードウェア面だけなので、当社がスポンサー契約を結んでいるJeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)さんには頑張っていただきたいですね。日本のeスポーツにはまだまだ浸透して盛り上がる余地があると思っていますし、企業スポンサーをもっと増やすためにも、特に高校生や大学生の体験の場を業界全体で協力して増やしていく必要があると感じます。5年後、10年後に『eスポーツといえば日本』と言われるくらいにはしていきたいですよね。ゲームやアニメの文化って日本の強みだと思っているので、そこが世界の基準に照らし合わせて見たときに遅れていたら、そりゃないよって思いますし、気軽にeスポーツを楽しめる場がまだ日本には少ないので、その辺りから変えていけたらいいですね」

 「もう1つはAIですね。AIをどういう風に使うのか?AIは正しく使ってほしいので、通常のPCとAI PCにはどのような違いがあって、仕事でどう役立てられるか。当社としては、両者の比較をしながらそれぞれの良さをご理解いただくことの支援をしていきたいと考えています。これから間違いなくAIの時代になっていくと思うのですが、AIの活用についても日本は少し遅れている部分があるかと思いますので、この点についても我々として何かできることがあるのではないかと考えています」