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燃えにくくリサイクルも楽なリチウムイオン電池。東京科学大が開発

 東京科学大学総合研究院ゼロカーボンエネルギー研究所の白鳥洋介特任教授、安井伸太郎准教授らの研究チームは、可燃性有機溶媒を用いず、ドライルームや高温焼結を必要としない、その上リサイクルが容易な水系準固体リチウムイオン電池を開発したと、国際学術誌「Advanced Materials」にて報告した。

 現在主流となっているリチウムイオン電池の多くでは、内部に充填された電解質に可燃性有機溶媒が使用されており、これが出火などの原因となっている。有機溶媒を用いない水系電解質電池や全固体電池の開発が進められているが、さまざまな技術的/コスト的問題を抱えている。特に水系電解質電池においては、水が電気分解してしまうために2Vを超える電圧の出力が難しいという課題があった。

 今回、東京科学大学の白鳥洋介特任教授らの研究チームは、水と非晶質(アモルファス)とのスライム化に着目し、機械学習で見出された四ホウ酸リチウムLi2B4O7を用いて、約2.35Vで動作する電池材料の開発に成功したと報告した。

 水と四ホウ酸リチウムのスライム化界面にリチウム塩Li(FSO2)2Nを介在させることで合成した、3次元的なリチウムイオン伝導経路を持つ準固体電解質(3D-SLISE)は、一般的な正極活物質LiCoO2および負極活物質Li4Ti5O12と組み合わせた準固体電池として室温3C条件下(1C: 1時間で1回満充電または満放電できる電流値)で400回以上駆動すること、最大10C条件で高速駆動することが確認されたとしている。

 この3D-SLISEを用いたリチウムイオンバッテリの特徴は、製造が容易な点、ダイレクトリサイクルが可能な点である。本材料は大気下で製造可能かつドライルームやグローブボックスなどの厳しい環境制御が不要なため、製造コストの低減につながる。

 また、通常のリチウムイオン電池では活物質をリサイクルするために一度別の化合物などの形で金属元素を取り出した後に再び活物質として生成する必要があるが、今回の3D-SLISEでは活物質そのものを回収して再利用するダイレクトリサイクルが可能となる。これにより、リサイクル時の効率やコストが大幅に改善される。

 研究チームは現在、動作電圧の向上や劣化抑制に取り組んでおり、これらが成功すればデータセンター向け蓄電池など定置用電源としての利用が期待できるという。