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「HoloLensもMicrosoft Bandも日本へ投入。Xboxも撤退しない」

~日本マイクロソフト平野新社長就任会見

平野拓也氏

 7月1日付けで日本マイクロソフト株式会社の取締役代表執行役社長が樋口泰行氏から平野拓也氏に変わり、同社は2日に新社長就任会見を開催。また、7月1日は同社会計年度(2016年度)のスタートの日であることから、平野氏から新年度の経営方針も説明された。

 樋口氏から平野氏へのバトンタッチは既に3月の時点で公表されており、この4カ月の間に樋口氏は平野氏への業務引き継ぎを行なうとともに、平野氏は新経営体制構築などの準備を綿密に行なってきた。その中で平野氏は、同じ事に対しても新たな視点、気付きを得たと言い、その帰結の1つが、「プロセスありきで物事を考えず、まずどのようなインパクトを与えるかを考え、それを実行するためのプロセスを考える」という手法だ。

 「2015年はMicrosoft創立40周年。創立当時は、ビル・ゲイツもこのようなスローガンを掲げていたはずだが、その後、いつの間にか我々はWindowsやOfficeといったプラットフォームを護ることに固執し、周囲に対して壁を作る状況になっていた。だが、約1年前にCEOがサティア・ナデラに変わり、それまでの成功体験は据え置き、チャレンジ精神で、製品/サービスのフリーミアム化や、Windows 10アップグレードの無償化などの革新を実行してきた。一方、日本ではこれまでの7年間、樋口が会社の信頼性や存在感の定着に努めてきた」と述べた上で平野氏は、自信の役目として「革新的で、親しみやすく、安心でき、喜んで使っていただけるクラウドとデバイスを提供する」というスローガンを掲げた。

Microsoft全社のスローガン
日本マイクロソフトのスローガン

 これまではPCや技術先導だった戦略は、人を中心に据えたものにする。そのために、Officeの例のように、非Microsoftプラットフォーム上でも最善の体験ができるように努める。それによって、一時的に売上が落ちるとしても、パートナーと協業を行ないながら、顧客/ユーザーにとっての価値や利用体験が向上することへと主眼を置く。

 クラウドについては、一般的に利用されるようになった現在、マシンラーニングや人工知能といった技術を利用し、ビッグデータを駆使した新しい価値を提供する。同社は、国内2カ所に「Office 365」や「Dynamics CRM Online」といったクラウドサービス用データセンターを2014年に設置。国内のクラウドパートナーの数も右肩上がりで増えているが、2016年度はさらにISVビジネス推進本部を新設し、パートナー向けに、リクルーティング、技術支援、共同マーケティングを行ない、クラウドアプリの拡充も加速していく。

 そして、直近にはWindows 10のアップグレード提供開始が7月29日に待ち受けている。平野氏によれば、Windows 10に最適化されたPCは今夏から年末にかけて順次投入される。また、Windows 10の大きな特徴となるユニバーサルプラットフォームを拡大するため、Android/iOSアプリからWindowsストアアプリへの移植のトレーニングや情報提供も積極的に行なっていく。

 さらに平野氏は、マウスコンピューター、freetel(プラスワン・マーケティング)からWindows Phoneの投入が発表されたことに感謝の意を表明するとともに、「Windows 10のユニバーサルプラットフォーム化によって、これまでになかったデバイスメーカーからも問い合わせが来るようになっており、今後いろいろなデバイスで楽しみな展開が起きるだろう。そして、「Microsoft Band」(活動量計)や「HoloLens」(ヘッドマウント型デバイス)も1日も早く日本に持ってきたい」と話した。加えて、質疑応答では「Xbox One」について、「撤退はない。Windows 10によって、Xbox Oneでも新たな用途が訴求できる。これまで以上に質の高いタイトルラインナップを提供していきたい」と述べた。

日本マイクロソフトの2016年度重点分野

 なお、樋口氏は7月1日付けで、代表執行役会長の座につく。外資系企業での会長職は珍しいが、ソフトバンクと提携し、世界に先駆けLTEモデルを投入した「Surface 3」の場合のように、戦略的なパートナーシップを締結したり、これまで手薄だった国策における関係政府官庁、自治体、業界団体との会合への出席などによって、より緊密な関係の構築に努めるほか、人材育成なども行なっていく。

樋口泰行氏
会長職の役割
新経営執行チームの面々

(若杉 紀彦)