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シャープ、無線バックホール方式のWi-Fiアクセスポイントを開発

~電源のみで屋外設置が容易

シャープが開発した無線バックホール方式を採用したWi-Fiアクセスポイントのプロトタイプ

 シャープは、アクセスポイント同士を無線で連携できる「無線バックホール方式」を採用したWi-Fiアクセスポイントを新たに開発。2015年度上期から、国内販売を開始すると発表した。また、これに合わせて、法人向けWi-Fiネットワークソリューション事業に参入。2016年度には、スマートネットワーク事業で100億円の売上高を目指す。

シャープ 通信システム事業本部マーケティングセンター法人ビジネス推進部・笛田進吾部長

 「2020年の東京オリンピックの開催に向けて、あらゆる施設において、Wi-Fiサービスを整備する動きがある。設置が容易な無線バックホール方式のWi-Fiアクセスポイントを活用することで、これまで設置が難しかった屋外などにも無線LAN環境を構築できるようになる」(シャープ 通信システム事業本部マーケティングセンター法人ビジネス推進部・笛田進吾部長)としている。

アクセスポイント間を無線で接続

 シャープが開発したWi-Fiアクセスポイントは、同社が携帯端末事業で培った通信事業のノウハウを活用して新たに開発したもので、「無線バックホール方式」を採用しているのが最大の特徴となる。国内ではまだ普及が進んでいない技術であり、同技術が持つ課題を解決したことで、製品化することに成功した。

 無線バックホール方式は、Wi-Fiアクセスポイント間を無線で連携する。電源さえ確保すれば、増設のためのLAN配線工事が不要になることから、自由度を持った形で、Wi-Fiアクセスポイントを増設。幅広いエリアで安定した高速接続を可能にすることができる。

 シャープ 通信システム事業本部マーケティングセンター法人ビジネス推進部・笛田進吾部長は、「無線バックホール方式は、Wi-Fiアクセスポイント間を無線によって容易に接続できることから、これまでのようにWi-Fiアクセスポイント同士を有線LANで結ぶといったケーブル敷設の手間がなくなり、工事費を削減できる」と前置きし、「従来の技術では、Wi-Fiアクセスポイントを無線で結ぶと、徐々にスループットが減衰し、複数箇所を経由した場合には速度が出ないといった問題があった。シャープでは、こうした課題を解決する技術を開発することで、安定した高速接続が可能なアクセス性能を実現。新世代のネットワーク制御を応用した新規設計により、高速性、接続安定性、セキュリティといった点での改善が図られている」とする。

 シャープが開発したWi-Fiアクセスポイントでは、最大で数100m離れた場所での接続が可能であり、その距離が近いほど指向性を少なくして相互接続できる。

 「幅広いエリアをカバーするにはLTEが優位であったが、Wi-Fiの特徴である高スループット、不特定多数の機器との接続性といった特徴を生かしながら、ショッピングモール全体、あるいは街全体といった幅広いエリアを対象にしたWi-Fiサービスを提供できる。IoT(Internet of Things)時代の進展に向けて、LTEとWi-Fiを共存あるいは補完させた高速ネット環境の実現に寄与できる」としている。

 Wi-Fiアクセスポイント1台あたりの価格は約30万円を見込んでおり、今年度上半期中には市場投入する予定だ。

スマートネットワーク事業にも参入

 同社では、今回の無線バックホール方式のWi-Fiアクセスポイントの製品化に合わせて、法人向けWi-Fiネットワークソリューション事業に参入する。

 具体的には、今回開発したWi-Fiアクセスポイントを活用したWi-Fiインフラの構築、運用、保守サービスを提供。また、Wi-Fiインフラを活用した新たなIoT機器の創出およびソリューションサービスの提供を行なう。

 同社では、これらをスマートネットワーク事業と定義し、数十人規模の専任部門を配置。シャープビジネスソリューションを通じた営業、運用、保守の提供を行なうほか、ネットワークインテグレータを通じた展開も行あう。

 ソリューション展開としては、街全体を対象にした屋外における大規模なWi-Fiインフラを構築し、監視カメラやデジタルサイネージを組み合わせたスマートシティの提案のほか、建設工事現場における監視カメラ、スマートフォンとを連携させた安全管理および内線環境の実現、ショッピングモールにおけるサイネージや監視カメラとの連携や一般来店客へのWi-Fi環境の提供、学校におけるタブレットやBigPADとの連携による教育ソリューション提案などを想定している。

 「設置が容易な無線バックホール方式のWi-Fiアクセスポイントだからこそ、工事費用を低減させながら、Wi-Fiインフラを活用したソリューション提案が行いやすい。工事現場のように一時的な利用の際の環境整備にも適している。街の共有スペースや地域の防犯・防災ネットワークの環境整備への活用なども想定できる」としている。

 2016年度には、スマートネットワーク事業で100億円規模の売上高を想定。国内においては、2020年の東京オリンピックに向けたWi-Fiインフラ整備の高まりを背景に事業を拡大する一方で、海外向けには環境構築の容易性を活かして、アジア地域の新興国を対象にしたビジネスを展開していく考えだ。

(大河原 克行)