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新「ThinkPad」開発秘話。性能に妥協せず1kg切りにこだわる
2025年3月19日 06:01
レノボ・ジャパンは18日、ThinkPadシリーズの最新モデルに関する報道者向け発表会を実施した。新製品は以下の7製品で、本稿では発表会の様子について紹介する。製品のスペックなどについては、既報を参照されたい。
- ThinkPad X13 Gen 6
- ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Edition
- ThinkPad X1 2-in-1 Gen 10 Aura Edition
- ThinkPad T14s 2-in-1 Gen 1
- ThinkPad T14s Gen 6
- ThinkPad T14 Gen 6
- ThinkPad T16 Gen 4
発表会では、同社 執行役員 副社長 開発担当の塚本 泰通氏や、企画本部 製品企画部 マネージャーの元嶋 亮太氏、大和研究所 機構設計の橋倉 誠氏が登壇した。
同社は、今年で33年を迎えるThinkPadシリーズの新製品として7製品を発表し、CPUにCore Ultra 200V搭載モデル、Core Ultra 200U/H搭載モデル、Ryzen AI PRO 300搭載モデルなど、計15モデルを国内に投入する。
ThinkPadの開発哲学は、ユーザーの生産性向上や、場所を問わない働き方の実現、イノベーションによる使いやすい製品の提供の3点に注力している。
今回の新製品では、AIの活用にも重点が置かれており、「3つのP(Personalized、Productive、Protected)」を軸に、一人ひとりに寄り添い、時間の使い方を変え、データやプライバシーを保護する仕組みのもとでAIを活用できるよう設計されている。
AIを重視した象徴的な製品が「ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Edition」で、本モデルは認証機関のSGSと協業して開発されており、「SGS High Performance AI PC Certification」認証を世界で初めて取得している。
最新モデルではCopilot+ PCのラインナップがさらに拡充され、13型から16型まで幅広いモデル展開を実現する。同社は、今年のビジネス向け市場ではCopilot+ PCの普及が本格的に進むと見込み、企業ごとに最適なモデルを提案できるよう準備を進めている。
最新モデルの共通の特徴として、従来から重視されている堅牢性や打鍵感などの基本性能を進化させつつ、全モデルでユーザー自身によるバッテリ交換が可能となり、Copilotキーも標準搭載となっている。
また、ハイブリッドワークのニーズに応えるため、すべての製品でオプションとして5G/4G LTEモデルを選択できるようになったほか、法人向けには月額料金なしで無制限に回線を利用できる「Lenovo ConnectIN」も用意し、どこからでも快適にインターネットへ接続できる環境を提供する。
今回の目玉製品は、ThinkPad X13 Gen 6とThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Editionの2つだ。両製品は、これまでThinkPad X1 Carbonシリーズなどで軽量を掲げながらも1kgを下回ることができなかった課題を克服し、前者は約933gから、後者は約986gからと、遂に1kg切りを実現した。
塚本氏は、同シリーズでこれまで1kg切りができなかったことに歯がゆさを感じていたと語り、今回の開発では1g単位での軽量化を積み重ね、目標達成にこだわったと振り返った。
1kg切り達成の舞台裏
発表会では、ThinkPad X13 Gen 6とThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Editionに関して、どのように軽量化を果たしたかについて説明された。
ThinkPad X13 Gen 6
ThinkPad X13 Gen 6では、堅牢性や打鍵感、性能面など、ユーザー体験を一切妥協せずに軽量化を行なったといい、41Whrバッテリモデルが約933gから、54.7Whrバッテリモデルが約968gからとなっている。
前世代「ThinkPad X13 Gen 5」と比較して、約190gの軽量化を達成した。これは各コンポーネントの軽量化の積み重ねにより実現している。たとえば、PCの小型化を追求し、ワンバーヒンジとフラットディスプレイを採用することで筐体の表面積を縮小した。
また、Wi-Fiアンテナをヒンジキャップ内に統合し、ディスプレイ基板の配置も変更することで、ベゼルの幅を最適化し薄型化を達成。カメラのプライバシーシャッターも配置を変更し、奥行きを削減しながら操作性を向上させた。
メインボードは前世代比で約30%の小型化、約50%の軽量化を達成し、USB Type-Aポートの基盤を分離することで、メンテナンス性も向上した。ファンは前世代比で約70%の大型化を図りながら、素材の見直しにより約20%の軽量化を実現し、冷却性能を約10%向上させつつ、表面温度を約18%低減、ファンノイズも約12%削減した。
キーボードにおいても、ベースプレートの素材変更やネジの最適配置を行ない、打鍵感を維持しながら全体の軽量化を実現した。ラバードームの改良によって、キーの着地感を向上させ、長時間の使用にも好適とする。
天板のカーボンファイバーなども素材から見直しており、より軽くて強いものを選定している。同天板はしなりに強く、たとえばディスプレイの端をつまむように持ってもPCは壊れないという。
ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Edition
ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Editionでは、天板の剛性を保ちながら軽量化するため、カーボンファイバーの繊維方向を従来の横向きから縦向きへと変更している。これにより、天板を薄くしながら開閉時の動きに強い耐久性を持たせたという。
ヒンジもデザインや取り付け方法を見直すことで、堅牢性はそのままに軽量化を達成した。ThinkPad X13 Gen 6と同じくベースプレートの軽量化などを行なっており、Core Ultra 200V搭載モデルでは、メインボードが約10%、サーマルモジュールは約20%軽くなっている。
発表会ではこのほか、新製品の実機が展示された。