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AMD、Zen 5採用で最大192コアの第5世代EPYCを正式発表
2024年10月11日 03:00
AMDは10月10日(米国時間)、米国カリフォルニア州サンフランシスコ市にあるモスコーンセンター南館において「AMD Advancing AI 2024」を開催し、同社CEO リサ・スー氏などがAI向け最新製品を発表した。
その中でAMDは、これまで「Turin」の開発コードネームで呼ばれてきたデータセンター向けCPUを「5th Gen AMD EPYC processors」(第5世代AMD EPYCプロセッサ、以下第5世代EPYC)として発表した。第5世代EPYCは、CPUのアーキテクチャが最新のZen 5世代に強化され、同時にその縮小版となるZen 5cを搭載した製品もラインアップに用意されている。
Zen 5はTSMCの4nm、Zen 5cはTSMCの3nmでそれぞれ製造され、前者は最大128コア、後者は192コアの製品が用意されることが大きな特徴となる。7月にAMDがクライアントPC向けに投入したRyzen 9000シリーズおよびRyzen AI 300シリーズ(以下Ryzen AI 300)にも採用されている。
シェアは7年間でほぼ0%から34%まで躍進
Turinこと第5世代EPYCは、2022年の11月に発表したデータセンター向けのCPU「第4世代AMD EPYCプロセッサ」(以下第4世代EPYC)の後継で、約2年振りの新製品となる。
AMDは、2017年6月に新規開発したCPUアーキテクチャとなる「Zen」(初代Zen)採用の初代EPYCを発表し、市場に投入した。その当時のAMDのデータセンター向けCPUは、Zen以前のサーバー向けCPUアーキテクチャの開発がうまくいかなかった影響もあって、市場シェアがほぼ0パーセントに近づいており、文字通りゼロからの再スタートとなった。
しかし、完全に新規設計になったZenのアーキテクチャは、競合他社に比べて電力効率が高い設計となっていたことが功を奏した。その後、Zen 2、Zen 3、Zen 4とCPUのアーキテクチャが進化していくのに合わせて、第2世代EPYC、第3世代EPYC、第4世代EPYCと約2年に1度新製品を投入してきたことで、データセンター市場ではほぼ唯一の競合であり、独占を許していたIntelからシェアを奪ってきた。
AMD サーバー事業部担当 上級副社長 ダン・マクナマラ氏は「AMDは17年にほぼゼロからサーバービジネスを始めて、2年に1度確実に新製品を投入してきた。着実にロードマップの計画を実行に移してきた。そうした取り組みが、直近(筆者注:本年前半)のエンタープライズ向け市場シェア(売上ベース)で34%という結果につながった」と述べ、この7年の間に着実にIntelから市場シェアを奪ってきた歴史を振り返り、第5世代EPYCはそうしたAMDの躍進を続けるための製品になると強調した。
第5世代EPYCが正式発表。Zen 5版は最大128コア、Zen 5cは最大192コア
AMDが発表した第5世代EPYCは、第4世代EPYCで導入された「SP5ソケット」を利用して実装されており、BIOSやファームウエアのアップデートなどは必要になるものの、基本的に同じマザーボードやメモリモジュールなどが使い回せる。
なお、AMDは第4世代EPYCで、EPYC 8004シリーズ(開発コードネーム:Siena)向けにSP6を、EPYC 4004シリーズ向けにSocket AM5を導入しているが、今回はそうしたSP5以外のソケットの製品は発表されていない。ただし、AMDの資料には「Future Products」という表記があるので、将来的にそうしたSP5以外のソケットを採用した第5世代EPYCが登場する可能性はないわけではないと言えるだろう。
今回の第5世代EPYCでは、登場時からCPUコアにZen 5とその縮小版コアとなるZen 5cを採用した2種類の製品が用意されている。第4世代EPYC世代では、Zen 4の製品がGenoa、Zen 4cの製品がBergamoという異なるコードネームで呼ばれていて、まずGenoa(Zen 4)が、その後Bergamo(Zen 4c)が発表されるという形になっていた。
今回はどちらもTurinで、区別する必要がある場合だけ高密度版Turinなどと呼ばれており、前述の通り両方の製品が同時に発表になっている。なお、Zen 5とZen 5cの違いはCPUコアあたりのL3キャッシュ容量で、1コアあたり4MBなのがZen 5、1コアあたり2MBなのがZen 5cとなる。
Zen 5自体のZen 4からの強化ポイントは以下の記事にまとまっているので詳しくはそちらをご参照いただきたい。大まかに言うと、L1データを48KBに増量するといったキャッシュ階層の強化に加え、デコーダやディスパッチ、スケジューラといった内部エンジンも大幅に手が入っているほか、Zen 4世代では256bit単位で演算されていたAVX-512も、512bit単位で演算が可能になり、命令の演算時の効率が高まっている。
こうした改良により、エンタープライズやクラウド向けで最大17%、HPCやAI向けで最大37%など、IPCが2桁パーセント以上向上しているとAMDは説明している。
EPYCの特徴であるチップレットの仕組みは第5世代EPYCでも継続されている。Zen 5コアを採用したバージョンは最大128コア、Zen 5cを採用したバージョンは最大192コアになる。従来のZen 4世代ではZen 4コアが最大96コア、Zen 4cは最大128コアだった。なお、従来通りSMT(Intelで言うところのHyper Threading)には対応しており、ユーザーがBIOS設定などで自由にオン/オフできる。
AMDによればZen 5はTSMCの4nmで、Zen 5cはTSMCの3nmで製造されているということだ。そうした最新のプロセスノードを採用することで、ブースト時には最大5GHzに達するSKUもあり、高い性能を発揮する。
メモリは従来製品と同じ最大12チャンネルで、DDR5-6400まで対応できる。PCI Express 5.0に対応しており、2ソケットでは160レーンまでのPCI Express 5.0をサポートしているほか、今回の第5世代EPYCからCXL 2.0にも対応している。なお、TDPはIntelの最新製品と同じく最大で500Wに設定されており、空冷でも利用不可能ではないが、500WのSKUでは液冷や水冷などが必要になると考えられる。
第5世代Xeon SPと比べて最大4倍の性能。OEMなどへすでに出荷を開始
AMDは競合との性能比較を公開しており、EPYC 9965(192コア/Zen 5c)は第5世代Xeon SPのXeon 8592(64コア)と比較して、ビデオトランスコーディングやビジネスアプリケーションで最大4倍、HPCアプリケーションで最大3.9倍、仮想化インスタンスで1.6倍の性能を実現しているという。また、CPUだけを利用したAI推論で3.8倍、GPUを接続したAI学習で1.2倍といった性能を発揮するとAMDでは説明している。
第5世代EPYCの最初の製品となるEPYC 9005シリーズ プロセッサのSKU構成は以下のようになっている。
AMDによれば、製品は生産が開始されており、すでにOEMメーカーへの出荷が開始されている。本日以降Cisco、Dell、Hewlett Packard Enterprise、Lenovo、SupermicroをはじめとしたOEMメーカーや多くのODMメーカーなどから販売/出荷などが順次行なわれる計画だ。