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Ryzen 9000は4nmのZen 5コアに強化。新OC機能も追加
2024年7月15日 22:00
米AMDは15日(現地時間)、Ryzen 9000シリーズの詳細を明らかにした。開発コードネーム「Granite Ridge」ことRyzen 9000シリーズは、CPUアーキテクチャにZen 5を採用し、8コアのZen 5のダイが2つ搭載される。また、これに合わせてAMD 800シリーズのチップセットも詳細が明かされた。
2つのCCDが4nmで製造されるZen 5コアへと強化
AMDによれば、今回のRyzen 9000シリーズは、基本的にRyzen 7000シリーズのCCD(Core Complex Die)を5nm製造のZen 4から、4nm製造のZen 5へとアップグレードした製品となる。
AMDはRyzen 7000シリーズで、5nmのZen 4コアベースのCCD(8コア)が2つ、6nmで製造されるIOD(I/O Die)が1つの合計3つのダイを1つのパッケージに封入するという形で新しいSocket AM5向けの製品を投入した。
Ryzen 9000シリーズにおいては、そのSocket AM5向けと、2つのCCD+1つのIODという大枠はまったく一緒で、細かいリビジョンアップなどはあるが、IODも基本的にはRyzen 7000シリーズと同じTSMCの6nmで製造されるものが採用されている。
最大の違いはCCDだ。従来のRyzen 7000シリーズではTSMC/5nmで製造されるZen 4ベースのCCDだったのが、Ryzen 9000シリーズではTSMC/4nmで製造されるZen 5ベースのCCDへと強化されている。Zen 5ベースのCCDは、1つのCCDあたり8コアのZen 5コアになっており、2つのCCDで最大16コア構成となる。
Ryzen 9000シリーズでは、前世代などと比較して熱抵抗値が15%ほど改善しており、それにより同じTDP(熱設計電力)設定でCPUの温度が7℃ほど下がっている。このため、従来のRyzen 7000シリーズでは、TDPが170W、120W、105Wと65Wという4つの枠が設定されており、同じグレードのSKUでもTDPが低めに設定されていることも特徴も1つだ。
Ryzen 7000では上から順に以下のようなラインナップがあり、モデルナンバーの最後にXがつくゲーミングモデルには65W版は用意されていなかった。
- Ryzen 9 7950X : 16コア/TDP 170W
- Ryzen 9 7900X : 12コア/TDP 170W
- Ryzen 7 7700X : 8コア/TDP 105W
- Ryzen 5 7600X : 6コア/TDP 105W
Ryzen 9000では、最上位モデルは変わらず170Wになってはいるが、12コア版(Ryzen 9 9900X)はTDPが120Wに下げられている。また、従来は105Wだった8コア版(Ryzen 7 9700X)と6コア版(Ryzen 5 9600X)もTDPが65Wに下がった。しかし性能はむしろ上がっており、電力あたりの性能が改善されているのが大きな特徴と言える。
SKU構成は以下の通りで、発売は7月31日(米国時間)に予定されている。現時点でも価格はまだ明らかにされていない。
USB4対応チップセットAMD 800シリーズ。オーバークロック機能も提供
Ryzen 9000シリーズは、Ryzen 7000シリーズとまったく同じSocket AM5プラットフォームが利用可能で、現在のAMD 600シリーズチップセット(以下AMD 600、X670Eなど)のマザーボードでもBIOSアップデートでそのまま利用できる。
また、Ryzen 9000シリーズ用の新しいチップセットとしてAMD 800シリーズチップセット(以下AMD 800)も用意されている。基本的なチップセットの機能はAMD 600と同等で、そもそもチップセット本体のチップは非常に似通ったもの(つまりリビジョンなどが上がった程度のチップ)になっている。
大きな違いは何かというと、上位の2SKU(X870EとX870)がUSB4(40Gbps)に対応していることだ。しかもこのUSB4は単体チップとして提供されるものであるため、非常に分かりやすい言い方をすると、AMD 800=AMD 600+USB4 ICという形になる。
USB4のコントローラを内蔵したチップが別チップとして提供されるのは、仮にUSB4のコントローラをチップセットに内蔵させると、I/Oパネルまでの40GbpsのハイスピードI/Oの配線が長くなってしまい、マザーボードのコストが大幅に上がってしまうからだ。
それに対してUSB4 ICを単体チップにしておくと、CPUソケットとI/Oパネルの間という最適な場所にUSB4のICを置けるため、マザーボードメーカーの製造コストの観点からもメリットがあるとAMDは説明している。
AMD 800のSKUは4つ用意されており、X870E、X870、B850、B840となる。従来のB650、A620、A620Aの3つのローエンドSKUが整理され、B840へと統合されることが特徴だ。
Ryzen 9000シリーズでは、CPUとメモリそれぞれのオーバークロック機能が強化されている。メモリ周りではOSが動作している状態からAMDのメモリオーバークロックモジュールである「AMD EXPO」モジュールを利用して、OS上からメモリクロックや電圧などを調整可能にする「メモリオーバークロック・オンザフライ」に対応したほか、EXPOメモリがJEDEC仕様のDDR5-5600への対応した。
【7月17日訂正】記事初出時、A620はメモリオーバークロック非対応としておりましたが、これは誤りのため削除いたしました。お詫びして訂正します。
また、CPUに関しては「Curve Shaper」と呼ばれるオーバークロック機能が追加されている。Curve ShaperはRyzen 7000で導入された「Curve Optimizer」を拡張する機能だ。
Curve Optimizerでは動的に電圧の曲線を変更していき、より高い周波数で高い電圧をかけるように設定する。それに対してCurve Shaperは低い周波数ではより電圧を下げて、逆に必要な高い周波数ではクロックを上げるなどの設定をマニュアルで追加できる。これにより、Curve Optimizerでの動的な設定を活用しながら、さらに安定したオーバークロックが可能になる。