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生成AIのフェイク画像を見抜くた機能普及に向けて大きな弾み!C2PAにGoogleが参加

C2PAのコンテンツクレデンシャル機能、将来的に右上のようにその来歴を情報の受け手が自身で確認できるようになる

 Adobe、BBC、Intel、Microsoft、ソニーなどから構成されている業界団体のC2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)は、Googleが同団体に加盟し、運営委員会(Steering Committee)のメンバーとなったことを明らかにした。

 C2PAは、コンテンツクレデンシャル機能(Contents Credential)と呼ばれるコンテンツの改変履歴(来歴)をコンテンツに付加する、ないしはクラウド上に保存する規格の策定や開発を行なっている。コンテンツクレデンシャル機能を利用すると、そのコンテンツ(写真や動画など)がどのように改変されたか、あるいは生成AIが生成したコンテンツなのかなどを可視化でき、コンテンツの受け手がフェイク画像などを見抜く助けになる。

 スマートフォン用のOSやサービスなどを提供するプラットフォーマーのGoogleがC2PAの運営委員会の委員として加わったことで、静かに普及が進んでいるコンテンツクレデンシャル機能の普及に大きな弾みがつきそうだ。

コンテンツ編集の来歴を確認できるコンテンツクレデンシャル機能、AdobeやMicrosoft、Intel、ソニーなどが推進

C2PAのコンテンツクレデンシャル機能をCAIの認証ツールで確認しているところ。写真は筆者が記事に使った写真の履歴をCAIのベリファイツールで確認しているところ。編集部での編集時にメタデータの来歴は消えているが、クラウドに保存されている来歴がマッチングされ、筆者がどのように編集したのかなどの編集履歴が確認できる。この写真を筆者が撮影して編集しているという履歴が読者の皆さまも確認できる

 業界団体のC2PAは、コンテンツに「コンテンツクレデンシャル機能」(Contents Credential)と呼ばれる、コンテンツがどのような履歴で改変されてきたか、その来歴をコンテンツに付与(写真や動画にメタデータとして付与)、ないしはクラウドに保存する仕組みを開発し、オープンソースとして利用できるようにする取り組みを行なっている。

 C2PAの規格に対応したコンテンツクレデンシャル機能を利用すると、コンテンツの受け手となる読者や視聴者は、そのコンテンツの来歴を、ツールを利用して確認できる。Adobeなどが運営しているCAI(Content Authenticity Initiative)が運営するコンテンツクレデンシャル機能検査(Contents Credential Verify)のWebサイトでは、そうしたコンテンツクレデンシャル機能の履歴(誰が作成したのか、誰がどのように編集したのかなど)を確認できる。

 また、生成AIがそうしたコンテンツを作成した場合には、生成AIがその写真は生成AIが作成したものだという履歴を残すため、読者や視聴者がそれを確認することが可能になる。

 こうしたコンテンツクレデンシャル機能が注目されている背景としては、フェイク画像やフェイク動画などが生成AIを利用して簡単に作れる時代になり、実際にそうした画像や動画でプライバシーが侵害されたり、選挙の行方に深刻な影響が出たりということが心配されているからだ。最近では米国の著名歌手であるテイラー・スウィフトさんのフェイクポルノ画像が出回り、スウィフトさん自身が被害を訴えるなどして注目を集めている。今後、そうした被害がさらに出てくる可能性があり、それが本当の画像なのか、それともフェイクなのかを見破る手段が必要だという認識が高まってきているのだ。

Adobe コンテンツ認証イニシアチブ 担当シニアディレクター アンディ・パーソンズ氏

 Adobeでコンテンツクレデンシャル機能を担当しているAdobe コンテンツ認証イニシアチブ 担当シニアディレクター アンディ・パーソンズ氏は「フェイク画像の被害だけでなく、本年は世界中で50を超える大きな選挙が予定されており、そのコンテンツが本物なのかどうなのかを見抜く手段が必要だという認識が高まっている。C2PAのコンテンツクレデンシャル機能はそうしたニーズに応えるものだ」と述べ、既に終了した台湾の総統選挙、11月の米国の大統領選挙など、注目を集める大型の選挙が多く、そうした中でフェイク画像やフェイク動画の真贋を見分ける仕組みが必要とされていると述べ、C2PAのコンテンツクレデンシャル機能への注目が高まっていると説明した。

段階的に普及が進んでいたC2PAのコンテンツクレデンシャル機能、Googleの加入で普及に弾み

C2PAのロゴ

 Adobeなどが中心になって推進されてきたC2PAでは、コンテンツクレデンシャル機能の仕様が策定されてきた。C2PAには、Adobe、Microsoftのほかにも、Intel、ソニーやBBCなどが運営委員会のメンバーとして活動して、コンテンツクレデンシャル機能の普及を目指して活動している。

 コンテンツクレデンシャル機能は、AdobeのPhotoshopやLightroomといった写真編集ツールに実装されているほか、ライカが発売している一部のデジタルカメラに既に実装されて販売されている。また、昨年(2023年)の10月にはスマートフォン向けSoCを提供するQualcommが、同社の最新製品となるSnapdragon 8 Gen 3のISP(Image Signal Processor)においてC2PAのコンテンツクレデンシャル機能に対応することを明らかにするなど、徐々に実装が進んでいる。Adobeのパーソンズ氏は「こうした規格の浸透にはどうしても時間がかかる」とする通りだ。

 そうした中で、今回C2PAの運営委員会のメンバーとして、Googleが加入することが明らかにされた。言うまでもなくGoogleは、Android OSのプラットフォームを持つプラットフォーマーで、GoogleがC2PAに加入することで、Androidプラットフォームでのコンテンツクレデンシャル機能の実装が加速することが期待される。

 Google Trust & Safety 担当副社長 ローリー・リチャードソン氏は「Googleでは、デジタルコンテンツの透明性を向上するためにほかの企業と協業することは、AIに対する責任におけるアプローチの、重要な一部だと考えている。そのために、C2PA運営委員会への参加、および最も新しいC2PA規格に適合することをうれしく思っている。

 この規格を、Google DeepMindのSynthID、検索における“About this image(この画像について)機能”、YouTubeのコンテンツが変更または合成されたかを示すラベリングを含むGoogleのシステムに適用することで、人々へ重要なコンテキストを提供し、より多くの情報に基づいた意思決定を支援する」と述べており、今後同社のサービスや製品などにC2PAのコンテンツクレデンシャル機能を実装していく方針を明らかにしている。

 CP2Aのコンテンツクレデンシャル機能を推進してきたAdobeのパーソンズ氏は「GoogleがC2PAに加入していただくことで、C2PAが推進するコンテンツクレデンシャル機能の普及に弾みがつくものと考えられる」と述べ、GoogleのC2PA加入がコンテンツクレデンシャル機能の普及にとって大きな後押しになるとして、大きな期待感を表明した。