ニュース
2024年はAI PCとともに飛躍の年に。個人に寄り添うPCを目指す日本HP
2024年1月19日 06:46
株式会社日本HPは、NPU内蔵プロセッサのCore Ultraを採用したプレミアム2in1「HP Spectre x360 14」、「HP Spectre x360 16」、およびゲーミングノート「HP OMEN Transcend 14」を国内向けに発売した。製品の仕様など詳細については既報をご覧いただきたい。
本稿では、同日開催された事業説明会の模様についてお届けする。
2024年はAI PCとともに飛躍の年に
まずは同社代表取締役 社長執行役員の岡戸伸樹氏が、全体としての2023年度の振り返りと2024年度の取り組みについて説明した。
グローバルでみると、2023年度の業績は売上が約537億ドル、利益が約45億7,000万ドルなどとなった。厳しい経営環境ではあったものの、後半は徐々に回復し、まずまずの結果を収めたという。ハイブリッドシステムやゲーミングなど、HPがフォーカスする6つの分野については、どれも成長を達成したとしている。
また、2023年10月にはプライベートイベント「HP Imagine」を米国本社にて開催。HPとしては初の取り組みで、全事業における新製品を集中して説明する場を設けた。実際にコンシューマ向けには折りたたみPCの「HP Spectre Foldable」や「HP Envy Move 23.8inch All-in-One PC」が披露されている。
2024年度は、引き続きFuture Ready戦略を推し進めるとともに、AI PCをはじめとしたAI分野、ハイブリッドワークに向けた柔軟性、それにともなって求められるセキュリティ、製品ライフサイクル全体を見据えたサステナビリティの4つに注力していくという。
日本HPによる国内での戦略については、2023年が「成長の年」だったことを受け、2024年は「飛躍の年」にしていくと説明。革新的な製品とサービス、信頼のサプライチェーン、サステナビリティの強化の3つに、これらを支える社員1人1人が活躍できる環境の整備を加えた、4つを大きなテーマに掲げた。
特に製品とサービスに関しては、AIについて、2023年がAI元年と言われるのに対し、2024年はAI PC元年だと考えられるとした上で、PCにとって新たな時代が始まり、市場が拡大する中で、新たなAI PCの領域でもしっかりとブランドを築いていくとアピール。また、市場の活性化や買い替えの促進を後押しするべく、シリコンベンダーともより緊密に協業していくと述べた。
さらに、ハードウェアやサービスなど包括的なソリューションの提供、PCリユースプログラム(法人向け)など製品ライフサイクル全体で環境負荷を抑えるための取り組み、管理職に占める女性の割合や男性の育休取得率の向上といったDE&Iの推進などの取り組みについても紹介した。その上で岡戸氏は、2024年の干支である辰になぞらえ、「龍のように大きな飛躍の年にしたい」と意気込みを語った。
パーソナルコンピュータからパーソナルコンパニオンへと変わるPC
続いて、同社執行役員 パーソナルシステムズ事業本部長の松浦徹氏から、AI PCやハイブリッドワークなどに関する説明が行なわれた。
AIはすでに生活の中で活用されているが、特にChatGPTの登場以降大きく変化しており、2024年はAI PCの幕開けの年になると説明。これまでクラウドが主だったAIだが、今後はより多くの処理をエッジで行なえるようになることで、レイテンシやデータの安全性、エネルギー効率、コストといったさまざま課題を解消できると説明した。
その上で、AI PCが登場することで、PCはパーソナルコンピューター(Personal Computer)からパーソナルコンパニオン(Personal Companion)へと変化し、より高速で安全、かつ個人に寄り添ったものとなることで、多くのメリットをユーザーにもたらすとした。
今回同社が投入したSpectre x360 14/16およびOMEN Transcend 14は、AI PCに先駆ける製品としてAIテクノロジー内蔵PCを謳っている。ともにAI処理に特化したNPU内蔵のCore Ultraを採用し、Windows Studio Effectsをはじめとした快適で多様なAI体験を得られるという。
また、ハイブリッドワーク向けには2023年発表したHP eSIM Connectモデルや、より強力なセキュリティ機能を提供するHP Protect and Trace with Wolf Connect、オーディオ関連技術のPolyテクノロジーなどを紹介。これらを提供していくことで、顧客体験を向上できると説明した。
東京生産は今年で25周年。Windows 11移行に向けた供給体制も構築
続いて、同社執行役委員 サプライチェーンオペレーション統括本部長の吉田敦子氏から、国内における製品生産に関する説明が行なわれた。
同社では、国内でカスタマイズPCの生産および納品を行なう「東京生産」モデルを展開しており、2024年7月で25周年を迎える。現在では約30種類のPCを受注生産し、5営業日で納品しており、数十万通りのカスタマイズに対応できるという。
ユーザーとの距離が近く、フィードバックが得られやすかったり、輸送時のリスクが抑えられたりする点や、製造から物流まで拠点を1つにまとめることによる時間短縮、生産計画と作業工程の細かなデジタル化が強みだという。
2024年は、Windows 10 EoSに向けたWindows 11への移行などにともなう市場活性化が見込まれており、5営業日での完全受注生産を維持するためには、正確な需要予測やリソースの確保が重要だと言及。データによる正確な予想などを通じて、顧客に安心して発注してもらえるよう、ぶれない供給体制を構築していくとした。
また、コンシューマ向け製品で輸入しているPC製品についても、徐々に5営業日での納品を可能にしていき、納期短縮を図っていく。さらにサステナビリティの面では、パルプモールドやダンボールによる梱包を採用するだけでなく、工場内の配送パレットを紙製に変更する、紙製梱包テープを使用するといった取り組みについても検証を進めているという。
デジタル印刷事業も好調
最後に、同社デジタルプレス事業本部 事業本部長の礪波徹氏から、印刷関連事業に関する説明が行なわれた。
デジタル印刷の主要製品としては、HP Indigo、HP PageWideなどを展開。前者については、世界119カ国、4,199社で採用されており、計7,598台が稼働しているという。
印刷ジョブの受注から発送までの一連の工程を自動化するSiteFlowなどを特徴としており、高品質な印刷と高い生産性を両立できると説明。グローバルでの印刷ネットワークの構築やデータの標準化により、標準のプラットフォームを利用してユーザー同士が協力し、適時・適量・適地生産を実現できるのも強みだという。
そのほか、会場には18日に国内向けに発表された「HP Spectre x360 14/16」や「OMEN Transcend 14」をはじめ、各分野の製品などが展示されていた。