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国内PC出荷が6カ月ぶりにプラスも、厳しい状況続く。インボイス需要は不発、電帳法需要はあるか?

 業界団体である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の調べによる2023年9月の国内PC出荷台数が、6カ月ぶりに前年実績を上回った。だが、2023年度上期は前年同期比7.6%減と前年割れとなり、半期ごとに推移を見ると、2021年度上期以降、5期連続で前年実績を下回っている。

 9月が前年実績を上回ったことで、2023年度下期以降の国内PC需要の回復に期待する声はあるものの、「少なくとも、あと半年は厳しい状況が続く可能性が高い」(PCメーカー幹部)との慎重な見方が支配的で、需要低迷のトンネルはもうしばらく続きそうだ。

 JEITAによると、2023年9月PC出荷実績は台数ベースで前年同期比3.2%増の73万1,000台となり、2023年3月以来、6カ月ぶりに前年実績を上回った。金額ベースでも前年同期比8.8%増の759億円となり、2023年6月以来、3カ月ぶりに上回った。

 出荷台数はノートPCが前年同期比2.5%増の62万6,000台。そのうちモバイルノートは6.9%減の28万2,000台に留まったが、ノート型その他では11.9%増の34万4,000台と2桁増の成長を見せた。

 デスクトップPCも前年同期比7.5%増の10万5,000台となり、そのうち個人需要が中心となるオールインワンは19.4%減の1万4,000台と大きく減少したが、デスクトップ単体では11.5%増の9万1,000台と2桁増を記録した。

 JEITAでは、「2023年9月は、法人向けが伸長し、台数は6カ月ぶりに前年を上回った。金額も3カ月ぶりに前年を上回った。販売台数ではノートPC、デスクトップPCともに前年実績を上回っており、ノートPCでは、法人向けだけでなく、個人向けも前年台数を上回っている」とし、「コロナ禍の初期において、テレワーク需要が進展し、法人および個人向けノートPCの需要が高まったが、その時点に購入されたPCのリプレースが、徐々に始まっているのかもしれない」と分析している。

 だがその一方で、2023年10月からインボイス制度が開始され、請求書や領収書などの経理関連業務のデジタル化が進んでいるが、この動きはPC本体の需要にはまったく影響していないというのが実態だ。9月のプラス効果には、インボイス制度の影響は「不発」だったと言っていい。

 大手SIerでは、インボイス制度に合わせたPC本体の販売増加はないとし、「PC需要に関して言えば、インボイスのイの字もない」という状況だ。

 大手量販店でも、「会計ソフトの販売が若干伸びている程度であり、PC本体の売れ行きには影響していない」と語る。

 実際、中小企業を含めて経理部門などへのPC導入は一巡しており、制度導入に合わせて新たにPCを導入するといった動きはなく、新たなPCへの買い替えを訴求するキャンペーンも積極的には行なわれなかった。

 2023年9月のプラスには、インボイス制度開始を直前にした需要はまったく存在せず、影響しなかったという結果だ。

 四半期ベースでは、第2四半期(2023年7月~9月)実績で、出荷台数が前年同期比9.6%減の159万台、出荷金額が6.8%減の1,789億円となった。7月には台数、金額ともに2割以上の落ち込みが見られ、8月も前年割れが続いたことが影響している。7月、8月は法人向け需要が低調に推移したことが影響しており、9月にはそれが回復したことは明るい材料と言えそうだ。

 だが、先にも触れたように半期ごとに推移を見ると、2021年度上期以降、5期連続で前年実績を下回っており、需要低迷のトンネルを脱し切ったとは言えない状況が続いている。

 2023年度上期(2023年4月~9月)実績は、出荷台数が前年同期比7.6%減の308万1,000台、出荷金額が0.5%減の3531億円となり、いずれも前年割れとなった。

 国内PC市場は、2020年1月のWindows 7の延長サポート終了に伴う買い替え需要、2020年3月以降のコロナ禍におけるテレワーク需要の進展、2020年4月以降のGIGAスクール構想による生徒1人1台のデバイス配備というように、特需が重なった。だが、その反動が見られた2021年度は前年比40.7%減となり、出荷規模は6割程度にまで縮小。その後も前年割れが続いている状況だ。

 この低迷から脱却するタイミングが、2025年10月のWindows 10の延長サポートの終了に伴う買い替え需要、2025年度から本格化すると想定されるNext GIGAによるデバイスの更新需要となる。それまでは厳しい市場環境が続くというのが業界筋の見方だ。

 だが、6カ月ぶりの出荷台数の上昇が、テレワークの浸透に伴うPC需要からの買い替えとすれば、少しは明るい兆しが見え始めたとも言える。

 今後の需要動向については、依然として慎重な見方を変えない業界関係者が多いが、3つの特需の影響でPCの国内インストールベースは従来よりも拡大しているのは明らかだ。2025年に訪れる次の需要の波を前に、特需の影響をなるべく分散化したいのが業界側の本音だ。その点では、9月に転じた前年同期比プラスの実績を、いかに継続できるかが鍵になる。

 また、2024年1月からスタートする電子帳簿保存法により、データ保存が義務化されることから、ストレージなどの需要が増大すると見込まれるなかで、この動きをPC需要につなげることができるかといった点も、今後の注目点になりそうだ。