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ニオイで手軽に「魚の鮮度」を判定できる技術、産総研

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)は21日、においから魚肉の鮮度を判定するセンシング技術を開発したと発表した。

 魚の鮮度ごとに発せられるガスの成分から、魚肉の鮮度を手軽に判定できる。同研究所 極限機能材料研究部門 電子セラミックスグループの伊藤敏雄 主任研究員、崔弼圭 研究員、増田佳丈 研究グループ長らの研究チームによる成果。

 魚肉鮮度の判定には従来より「K値」という指標が用いられてきたが、対象となる魚肉サンプルの採取や化学分析などが必要となるため、手軽に鮮度を判定するセンシング技術が求められていた。

 研究では、養殖ブリのフィレをモデルに鮮度ごとのにおいを分析し、この結果をもとに「模擬の鮮度指標ガス」を作製。指標ガスの計測結果を機械学習の学習データとして、「入荷直後」、「生食」、「加熱調理で可食」、「腐敗」の4段階に設定した鮮度状態を正確に分類する手法を開発した。

 学習データの取得にあたっては、産総研が開発したポータブル測定器を使用した。測定器のセンサーは揮発性有機化合物向けの半導体式センサー8種類を組み合わせたもので、このうち2種には湿度の影響を受けにくい「バルク応答型センサー」を採用(残りの6種類はn型とp型)。各段階の鮮度状態から発せられるガスを吸引してサンプリングしたのち、においを構成する各族から代表的な4成分の濃度比を調製して学習用の指標ガスとした。

 学習用データはセンサー素子8個分の応答値1セットを1データとし、4つの鮮度で合計240データを蓄積。センサーの電気抵抗値が復元するまでの区間(今回は8×48点)も加味してデータを取得し、鮮度の正答率は最終的に0.954(95.4%)に達したという。

 今回の手法に関して、今後はほかの魚肉に対しても検証を進めるほか、においからK値を判定する技術の開発や、魚介類の干物への適用可能性も模索するとしている。

産総研のポータブル測定器(左)と測定器のセンサー素子(右)
学習データに用いた半導体センサーの応答値。赤がn型、青がp型、緑がバルク応答型