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NIST、より効率的に熱を電気に変換する新手法

シリコン薄膜上に形成されたナノピラー

 米国立標準技術研究所(NIST)は19日(現地時間)、熱をより効率的に電気に変換する新しい手法確立し、その効果を実証したという。

 熱を電気に変換する手法は、1820年初頭にドイツの物理学者トーマス・ゼーベック氏が初めて発見したとされる。異なる素材で作られた2本の金属ワイヤーの両端を接合してループを形成し、ワイヤーを接続する2つの接点の温度が異なると、温度差で電流が発生するものだ。

 このゼーベック効果は熱エネルギーを電気として再生する理想的な方法であったが、2つの領域間の温度差を維持するためには熱の伝導性を抑える必要性がある一方で、電気エネルギーを効率よく変換するためには電気の伝導性を高める必要がある。ところが、ほとんどの物質は熱伝導率と電気伝導率は相関するため両立できなかった。

 コロラド大学のマフムート・フセイン氏は、熱電変換に関する研究の中で、この特性を“ナノピラー”で覆われた薄膜構造によって切り離せる可能性を発見した。ナノピラーは、数百万分の1m(髪の毛の太さの10分の1)の直立した素材の柱のことを指す。同氏はバートネス氏とコラボし、窒化ガリウムのナノピラーを薄いシリコン膜の上に成形。その結果、シリコンシートの電気伝導率を下げることなく、シリコンシートの熱伝導率を21%減少させることに成功したという。

 固体において熱エネルギーの輸送はフォノン(原子の集団振動)を動かす形になるのだが、ナノピラー内のフォノンは定在波となる。シリコンシート内を移動するフォノンとナノピラー内の振動の間の相互作用により、移動するフォノンが遅くなり、結果的に電気伝導率を下げることなく熱伝導率の低下を実現したとしている。

 研究チームは現在、完全にシリコンで製造され、より優れた形状と構造の開発に取り組んでいる。技術が完成すれば、米国内で毎年約1,000億ドルの割合で浪費されている熱エネルギーの一部を回収できる可能性があるとしている。