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東大、マスクの静電気を復活させ再利用を可能にする卓上装置

卓上マスク・チャージャー

 東京大学 生産技術研究所の杉原加織講師、木内笙太特任研究員(研究当時)、ペニントン・マイルス教授率いるDLXデザインラボの共同研究グループは、マスクの静電気を1分以内に回復させるという卓上の装置を開発したと発表した。

 コロナ禍で使い捨てマスクの使用量が増大したが、同時に破棄の量も増大しており、廃棄物の量は世界中で現在毎月1,290億枚にも上ると言われている。環境負荷軽減のためにも、不織布マスクのリサイクル手法について開発が求められている。

 不織布マスクは、呼吸するために微小な穴(直径約10μm)が空いている。くしゃみなどの飛沫にはこれより小さいものも多く含まれているが、製造過程での帯電を利用し、その静電気で飛沫を吸着することで高いフィルタ効果を発揮する。

 しかし、静電気は高湿度下での保管、呼気の暴露、水洗いといった水との接触により失われ、フィルタ性能が低下する。

 そこで本研究では、不織布マスクに静電気を印加して、フィルタ能力を向上させる簡易/小型/安全な「マスク・チャージャー」を開発。具体的には、コッククロフト・ウォルトン回路による高電圧発生装置を利用することで、マスクの帯電を実現している。

コッククロフト・ウォルトン回路
装置内部
装置の利用方法
マスク・チャージャーによりマスクの性能が回復/向上

 東大は、2020年にも「ヴァンデグラフ起電機」の摩擦帯電による静電気発生原理を用いた装置を開発して発表したが、コッククロフト・ウォルトン回路に置き換えることで装置容積を約7分の1に小型化するとともに、安定性/再現性/堅牢性の向上を達成した。

 マスク以外のほかの分野でも応用できることが期待され、今後はプラスチック破棄量の削減、素材の再利用を促すようなサステイナブルな技術の提供を目指すとしている。