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レッツノート/タフブックの在庫10%削減へ。パナソニック コネクトがBlue Yonderの自社導入で成果
2022年5月26日 09:55
パナソニック コネクトは、2022年4月にリニューアルオープンした東京・浜離宮の「カスタマーエクスペリエンスセンター(CXC)」に関する記者会見を行ない、その中で、レッツノートおよびタフブックにおけるサプライチェーンの課題を解決したことに言及。サプライチェーンマネジメントソフトウェアのBlue Yonderを活用したS&OP(Sales & Operations Planning)の導入により、需要集計から計画作業までのリードタイムを1週間から1時間に短縮。在庫量は2021年度実績で前年比10%削減し、長期的生産計画は従来の2カ月から、12カ月へと大幅に伸ばすことができたという。
パナソニック コネクト 技術研究開発本部 上席主幹の安達久俊氏は、「S&OPを活用して生産計画を長期視点で行なえるように改善。生産計画部門では、販売会社から送られてきたExcelデータによる集計作業を廃止し、S&OPが需要予測やシミュレーションを行ない、長期的な予測や高精度な計画策定が可能になった。12カ月先までの生産予測ができるようになったことで、調達面でもプラスに働く」と述べた。
レッツノートとタフブックは、全世界の販売会社から寄せられた販売計画をもとに、モバイルソリューションズ事業部が、神戸工場と台湾工場での生産計画を立案。それをもとに、部品の調達計画を立て、サプライヤーに発注。生産、出荷を行ない、販売会社が販売するという仕組みになっている。
だが、Blue Yonderを導入する以前の2017年度には、さまざまなオプションを組み合わせたり、柔軟に仕様が変更できるようにしていたりしたため、結果として、約6万品番もの製品を取り扱っていたという。
また、各販売会社は、品番ごとに2カ月先の需要予測を立てて、Excelにまとめ、それをメールで送信するという仕組みであったことから、事業部では、それを手作業で取りまとめて、そこから生産計画や調達計画を立案するという手間をかけ、約1週間という期間がかかっていたという。
しかも、販売計画が2カ月前に明らかになったとしても、実際には、メモリやHDD、電子部品などは、2カ月前の発注では必要量が確保できないため、調達部門では、かなり前から、生産計画とは別の形で、勘を頼りに発注をかけていたのが実態だった。それによって、部品のバッファが溜まりやすい状況を生んでいたという。
そこでBlue Yonderを導入。各拠点でデータを見える化することから着手し、全世界でPCがどれぐらい販売されているのかといった情報を見えるようにしたほか、生産計画と販売計画の連動、調達計画と生産計画の連動も行なった。また、品番の統一や業務の見直し、部品の標準化などを行ない、これにより、S&OPの効果を最大化したという。実際、品番数は、この5年間で約5分の1にまで縮小している。
パナソニック コネクト 現場ソリューションカンパニー エバンジェリストの一力知一氏は、「次のステップでは、販売計画、調達計画、生産計画の精度をより高めていきたい。大切なのは、必要なものが何で、それがいつ必要で、どれぐらいの量あればいいのかということを正確に割り出すことである。コロナ禍で調達計画との連動が難しい部分もあるが、いまは長納期部品の精度を高めることにも取り組んでいる」という。
レッツノートとタフブックは、パナソニック コネクトのモバイルソリューションズ事業部が担当しているが、今後は、ほかの事業部にもBlue Yonderを導入する計画だという。
サプライチェーンの課題解決策を提案するCXC
カスタマーエクスペリエンスセンター(CXC)は、2019年1月に開設して以来、BtoB顧客との接点を持つためのハブ機能に位置づけており、パナソニック コネクトが目指す「現場プロセスイノベーション」を、顧客やパートナーとともに推進する役割を担うという。
2021年度実績では220社が来場。リニューアルにあわせて、2022年度は300社の来場を見込んでいる。
センター内は、シアター形式で注目分野の市場動向や事例などを紹介する「プレゼンテーションエリア」、課題を解決するためのセンシング技術やAI画像解析技術などをデモストレーションしながら、具体的な課題解決のイメージにつなげることができる「展示エリア」、開放感があり、落ち着いた空間で、周りを気にせずに共創に向けたディスカッションに集中できる「共創エリア」の3つのエリアで構成。今回のリニューアルでは、特に展示エリアの拡充に力を注ぎ、施設の名称通りに「エクスペリエンス(体験)」を向上させているという。
日本のサプライチェーン現場では、現場の経験則だけでは計画通りに物流をコントロールできなくなっていることや、コロナ禍ではうまくコントロールできているかも分かりにくい状況になっていることを指摘。
新たな展示エリアでは、サプライチェーンマネジメントの領域にフォーカスし、現場で課題が起こるシーンを再現して、造る(製造)、運ぶ(物流)、売る(流通)領域のSaaS型業務アプリケーション群である『現場最適化ソリューション』を通じて、可視化、標準化、最適化による課題解決アプローチを体感できるという。
たとえば、物流現場では、配送の遅れや不測の事態に備えて、常時、多めの人員リソースでオペレーション計画を組んでいたり、物流倉庫では積載率が高くなるまでトラックが長時間、倉庫の前で待機したり、低い積載率のままでトラックの台数を増やして配送せざるを得ないといった課題がある。
パナソニックコネクトでは、対象物の距離を取得するTOF方式3Dセンサーで、カゴ台車の積載容積率を可視化。カゴ台車が積み込まれるトラックの積載量も可視化できることから、積載率の改善による配送効率を向上するとともに、最適な配送計画を作成し、トラックの動態管理で配送支援や実績管理を実施。配送におけるPDCAを回すことで、積載率の向上や労務費の削減につなげる提案を行なうという。
また、サプライチェーン全体においては、変動が大きい状況に柔軟に対応するために、製造領域では、注文量が読めずに先回りして余分に生産したり、物流領域では注文されたものをその都度運んだり、ピーク時に合わせた多めの人やトラックのリソースを確保したり、流通領域では、売れるタイミングで店頭に商品がないと困るため、必要数よりも多めに発注するといったことが行なわれている。
パナソニック コネクトの一力エバンジェリストは、「それぞれがバッファを取るために、サプライチェーン全体では、かなりのバッファが取られることになる。さらに、パンデミックにより、サプライチェーンの課題がより顕在化して、正しいバッファも分からなくなっている。サプライチェーン全体でのバッファの課題を解決するためには、全体最適で管理することが必要である。Blue Yonderのソリューションを活用して、現場データの統合とS&OP(Sales Operations Planning)を起点とした各現場の最適化を、サプライチェーン全体の最適化につなげることで、バッファも適正化できる」という。
まずは、サプライチェーンのボトルネックを抽出して可視化すること、業務プロセスを標準化してボトルネックを取り除くこと、バッファを適正化し、実行し、過不足を減らし、最適化することで、全体のリードタイムを短縮化し、変化への対応を速めることが大切だとする。そこには、デジタルを活用して管理し、成果をもとに改善を加えるサイクルも不可欠であるという。
また、一力エバンジェリストは、「人体は、心臓や肺が自ら動き、身体中に酸素と栄養を渡らせ、全体最適を行ない、体調が悪くなると熱を出して、回復に必要な機能を動かす。これと同じように、自律して動くサプライチェーンを目指す。これが、オートノマスサプライチェーンとなる。造る、運ぶ、売るという機能を個別に最適化させ、それらをつなぎあわせてサプライチェーン全体での最適化を図る。これをパナソニックコネクトの現場最適化ソリューションと、Blue Yonderのサプライチェーンマネジメントに特化したAIによって実現していく。サプライチェーンマネジメントは、サステナブルにも貢献できる取り組みである。必要なものが、必要な時に、必要な量があるというサプライチェーンの目標を達成したい」と述べた。