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マイクロソフトのAI技術は何が違うのか?

Microsoft AIのポートフォリオ

 日本マイクロソフト株式会社は、同社のAI分野における取り組みに関する記者説明会を開催した。

売り場の様子をAIが分析し店舗運営を支援

 まず、同社業務執行役員 Azureビジネス本部 本部長の上原正太郎氏より、Microsoft AI全般に関する説明が行なわれた。

日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 Azureビジネス本部 本部長 上原正太郎氏

 同社では、AIを含む包括的なクラウドとしてMicrosoft Cloudを提供。60以上のデータセンターリージョンや各国におけるコンプライアンス認証の取得などにより、信頼性の高いサービスを謳う。あわせて、自社の研究機関となるMicrosoft Researchは、世界8カ所にラボを展開し、AIを含む様々な科学技術の研究開発を進めている。

 そのうちAI分野を担うMicrosoft AIポートフォリオでは、ロールに応じたソリューションを用意し包括的にサポート。その中でもコアなAI機能を備えるAzure AIは、ポートフォリオ上のソリューションやデータサービス、アプリケーション向けのサービスなどと深く統合したツールの集合体となる。

 今回同社では、株式会社ローソンと協業を発表。これまでも業務効率化に向けた協業を行なってきたが、新たに店舗運営を支援するAIシステムをAzure Cognitive ServiceやAzure Machine LearningなどのAzure AIを活用して構築。店内のマイクやカメラなどを通じて得られた売り場の通過人数や滞留時間、購入率などのデータを匿名化した上で可視化し、POS売上データなどとあわせた分析を可能とする。

信頼して使えるクラウドとして各国の認証などを取得
世界8カ所のMicrosoft Researchラボでは研究開発を継続的に行なっている
Azure AIを活用した店舗運営支援AIシステムを構築

 テクノロジーが働き方や暮らし方を大きく変える中で、クラウドコンピューティングは企業がこれまでのビジネス活動を見直すきっかけとなった。これはAIによってさらに加速するとしており、あらゆる組織がAIを活用する世界に近付いているという。その中で、Microsoft AIはイノベーションとビジネスの間をつなぐ包括的なサービスを提供する。

 一方で、一部がブラックボックス化してしまうAIへの投資において、企業にとってはデータガバナンスやセキュリティコンプライアンスが課題となっている。そこで同社では、AIサービスを開発する上で、信頼性や透明性など6つの原則を設定。さらにこれに沿うかたちで、エンジニアリング部門とポリシー部門の責任者が参加し、製品開発や実用化にともなう倫理面での課題を検討するAIETHER(AI and Ethics in Engineering and Research)を設置している。

 また、AIソリューションの提供だけでなく、AIを社会の発展に活用することを目指したイニシアチブ「AI for good」にも取り組んでおり、環境保全や障がい者支援、人道支援、文化保全、医療の5つの領域で支援を行なっている。

クラウドコンピューティングやAIは企業の変化のきっかけに
AIサービス開発における6つの原則
倫理面での課題を検討するAIETHER(AI and Ethics in Engineering and Research)
AIを活用した社会支援も行なっている

自社の研究機関との連携や幅広い職務をサポートするAzure AI

 続いて、同社Azureビジネス本部 プロダクトマーケティングマネージャーの小田健太郎氏より、Azure AIに関する説明が行なわれた。

Azure AIは自社サービスでも活躍
日本マイクロソフト株式会社 Azureビジネス本部 プロダクトマーケティングマネージャー 小田健太郎氏

 Azure AIは、Microsoft TeamsやMicrosoft 365、Xbonなど同社の様々なサービスで活用。一般的なベンダーのAIソリューションと比べて、通常のフィードバックループに加えて、Microsoft Researchでの研究で得られたアルゴリズムやモデルなどもプロダクトに反映できる点が有利だとしている。

 また、オフィスワーカーから開発者/データサイエンティストまで、組織内における顧客の職務に応じて様々なソリューションを提供できる点も強みだという。MLOpsが共通プラットフォームとしてこれらを支えている。

Microsoft Researchの研究で得られた結果を反映できる点が強み
職務に応じて組織全体を支えられるAzure AI
Azure Cognitive Servicesに新たにOpenAIが加わった
Azure OpenAI Service

 Azure AIは、エンドツーエンドのマシンラーニングサービスであるAzure Machine Learning、人間の知覚機能に近い機能群で学習済みモデルからAPIで呼び出せるCognitive Services、シナリオが決まっている場合に単体や複数を組み合わせて使うApplied AI Servicesの3段構成で構築される。

 このうちCognitive Servicesでは、OpenAI Serviceを11月に発表。2019年の戦略的パートナーシップ締結からGPT-3(大規模言語モデル)の独占ライセンス保有や自社サービスへの実装なども進めてきた。

 Azure OpenAI Service、OpenAI社のAPIの2つ方法で利用できるが、前者についてはMicrosoftのエンタープライズレベルのデータプライバシーやコンプライアンス認証、前述の6つの原則への準拠などのほか、ほかのAzureサービスとまとめて管理できることなどが利点となる。なお、現時点でAzure OpenAI Serviceは招待制での提供となっている。

ナレッジマイニングや機械翻訳、音声文字起こしと分析などの分野はAI導入が多い
ソニーセミコンダクターソリューションズとの協業による共同イノベーションラボを設立

 また、顧客によるAIの導入が多い分野としては、ナレッジマイニングや会話AI、OCRなどドキュメントプロセスの自動化、機械翻訳、音声の文字起こし/分析などが挙げられるという。中でも非構造化データなどを検索可能コンテンツにするナレッジマイニングと音声の自動書き起こしは今後も注力していきたいとした。

 そのほか、ソニーセミコンダクターソリューションズ株式会社との協業により、AIカメラや映像解析を活用するソリューション構築に向けた取り組みとして、共同イノベーションラボを田町に設立。グローバルでも進めているもので、4カ所目のラボとなる。