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理研、シリコン3量子ビットの制御や量子もつれを実現
2021年6月9日 17:31
理化学研究所(理研)の創発物性科学研究センター量子機能システム研究グループの研究員らは8日、シリコン量子ドットデバイス中の電子スピンを用いて、3量子ビットの制御と量子もつれを実現したと発表した。
量子コンピュータの動作には、量子もつれと呼ばれる複数量子感の相関制御が重要で、シリコン量子ドット中の電子スピンを用いた量子ビットはこれまで2量子ビット間の量子もつれが実証されてきた。
しかし、電子誤り訂正など、重要な量子アルゴリズムの実装に必要な3量子ビット以上の量子もつれの生成および検証は困難だった。これはデバイスの品質、材料による制約(磁気および電気的雑音)の問題があったためだとしている。
今回、研究チームは歪みシリコン/シリコンゲルマニウムの量子井戸基板上に微細加工を施し、量子ドット構造を作製。3層からなるアルミニウム微細ゲート電極に正電圧を加えることで、量子井戸中に電子を電界誘起し、高い自由度で量子ドットの形成と制御を実現した。
実験では、3つの電極の先端直下に形成された3つの量子ドットに電子を1つずつ閉じ込め、それらの電子スピンを操作。具体的には、スピンのゼーマンエネルギーに共鳴した実効的な交流磁場を加えることで電子スピン共鳴を発生させ、電子スピンを操作。この操作の精度を測定したところ、平均99.5%という高い精度(忠実度)で操作できていることがわかったという。
また、スピン状態の完全制御には、隣接2スピン間のもつれ操作が必要だが、スピン管の交換結合の電気的制御(ゲート電圧)によって実現し、2量子ビット操作の1つである制御位相操作を実装。これと1スピン操作を組み合わせることによって、3量子ビットもつれ状態を生成したとしている。
今回の研究で確立した量子ビット列の制御/測定技術を応用することで、磁気的/電気的雑音を考慮した量子アルゴリズムの最適化やその検証実験が可能になると考えられるほか、より大きな量子ビット列を用いることで、大規模量子コンピュータの実現に向けた研究開発の進展が期待できるとしている。