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在宅勤務でも雑談しやすくなる仮想オフィスソフト「FAMoffice」。アバターでコミュニケーションを活性化

 富士ソフトは、仮想オフィス空間「FAMoffice(ファムオフィス)」を製品化。6月15日から販売を開始する。アバターを利用して、仮想オフィス空間に出社することができ、ちょっとした相談や、雑談、声掛け、一緒に働いているという一体感を、バーチャル上で再現することで、テレワーク(在宅勤務)で失われたコミュニケーションを取り戻し、リアルを超えるつながりを生み出すという。

富⼠ソフト常務執⾏役員 プロダクト事業本部⻑の本⽥英⼆氏

 富⼠ソフト常務執⾏役員 プロダクト事業本部⻑の本⽥英⼆氏は、「富士ソフトが創立50周年を迎えた昨年(2020年)、コロナ禍が訪れた。働き方は大きく変わり、コミュニケーションの取りにくさ、業務効率の低下など、様々な課題が浮き彫りになった。FAMofficeは、そうした課題をヒントに生まれた製品である。コンセプトは、『あつまる、つながる、ひろがるオフィス』。テレワークや分散勤務が加速する日本の社会において、新たなつながりをもたらし、隣にいるように一体感をもたらすことができる。ニューノーマル時代に向けて自信を持って開発した製品である」と語った。

 製品名のFAMofficeは、Fujisoft Augumented Meetup officeの略であり、コミュニケーションを拡張し、新たなつながりを創出するオフィスを目指すという。

記者会見もFAMofficeで行なわれた

 ブラウザを開いて「FAMoffice」にログインすると、バーチャル空間上に再現したオフィスにアバターとして出社でき、あらかじめ用意した自分の座席やフリーアドレスの座席、会議室などに座ることができる。

 それにより、周囲のメンバーと同じ環境で仕事をしている感覚が生まれる。また、社員の出社状況なども視覚的に把握することができる。仮想オフィス内の事務机や会議室、応接などは自由に配置できるという。

ブラウザからログインするだけで出社できる
仮想オフィスの様子。会議室や座席を用意している

 アバターには社員の名前が表示され、カメラを使って、顔をアバターに表示することもできる。アバターの色は変更が可能で、自分のイメージにあわせた設定が可能だ。出社中のアバターの状況も表示できるため、それによって、話しかけるタイミングを図ることができる。

 例えば、なにも表示されていない場合はいつでも話しかけることができ、アバター同士をぶつけるだけで、すぐにビデオ通話が行なえる。ちょっとした相談や雑談を手軽に始められる。「ビデオ通話が始まるとアバターに顔が表示され、オフィスで立ち話をしているような感覚が生まれる」という。

会議室やオフィスの様子

 また、チャットでのやり取りも可能であり、アパターの吹き出しに表示させることも可能だ。
アバターのステータスは、「会議中」、「電話中」、「食事中」、「外出中」、「離席中」、「取込中」の表示が可能。仮想オフィス内に設けられた休憩室で休むといった使い方もできる。

 4人以上で会話をしたい場合には、会議室を利用すればいい。会議室に座った人だけがWeb会議で話をすることができるほか、資料共有機能を利用することで、参加者同士が資料やホワイトボードを共有できる。

 空いている会議室エリアにアバターを移動すればいいため、会議室を設定するといった操作は不要だ。会議室にはZoomやTeamsなどのURLを貼り付けることができ、外部のWeb会議も利用できる。

 仮想オフィス空間が広かったり、フロアが分散している場合には、検索機能を利用して、話したい相手を見つけ出して、すぐに話しかけることができる。

 さらに、複数の座席に、自分のアバターの分身を座らせる「マルチアバター機能」を用意。兼務する部署が別の仮想フロアにあっても、同時に着席したり、所属する複数のプロジェクトチームに席をおいたり、コミュニケーションを取りたいコミュニティにアバターを分身させて参加することもできる。

 リアルの環境では、忙しくなると、身体がいくつあっても足りないという場合もあるが、バーチャル環境上では、まさに自分を分身させて、様々な仮想オフィス空間に置くことができるというわけだ。

富⼠ソフト プロダクト事業本部副本部⻑の松浦直樹氏

 FAMofficeの開発責任者である富⼠ソフト プロダクト事業本部副本部⻑の松浦直樹氏は、「いかにリアルに近い体験を仮想空間上で提供できるか、いかに手軽に使えるかということにこだわった。オフィスと同じように空間を自由に移動でき、話しかけたい時に直感的に話かけられ、管理者にとってはマネジメントしやすく、担当者は業務に必要なコミュニケーションがしやすいといったように、あらゆる立場の人の価値になりうることを目指した。最新のテクノロジを活用しながら、インストール作業が不要で、ブラウザだけで利用できる。仮想空間だけからこそできることを提供し、これからも進化を遂げていくことになる」と語った。

 FAMofficeの価格は、初期費用が10万円、100ユーザーまでが月額3万円、1ユーザー追加ごとに月額300円。150人が利用できるフロアの追加費用が1万円、基本3パターン以外のフロアレイアウトへのカスタマイズが5万円、資料共有機能は月額50円。
また、1カ月間の無償トライアルも用意している。

 内閣府の調査によると、テレワークによるデメリットとして、「社内での気軽な相談、報告が困難」という声が最も多く、38.4%を占めたという。また、コミュニケーションロスによる生産性低下や、孤独感などのストレス、さらには会社への帰属意識の低下や、愛着心の低下などが危惧されている。

 富士ソフトでは、2020年7月から、コミュニケーションの課題を解決するためにFAMofficeを開発し、同社社内で試用してきた。約7割の社員がテレワークを実施する中、サービスデザインの手法を取り入れ、社員のインタビューを繰り返し、製品化につなげたという。また、外部企業にも先行導入してもらい、得られたアイデアも取り入れたという。

 同社では、2023年度までに1,000社への導入を目指す計画だ。

デジタル改革担当大臣の平井卓也氏

 なお、オンライン会見では、デジタル改革担当大臣の平井卓也氏がメッセージを送り、「自由民主党では、5年前から、富士ソフトのmoreNOTEを導入し、ペーパーレスを推進してきた。なかなか進まなかったものが、コロナ禍で一気に進んだ。テレワークの推進は、いままでの仕事のやり方を変えないと難しい。コミュニケーションをうまくとりながら、仕事のやり方を見直し、新たなデジタルワーキングスタイルを構築し、創造していかなくてはならない。

 富士ソフトは、独立系ソフトメーカーとして、日本のデジタライゼーションに貢献している。デジタル化は手段であるが、そこには強い意志と覚悟がなくてはいけない。道を極めることが必要である。富士ソフトは、デジ道を極めている会社である。」とした。

 このほか、「9月1日からデジタル庁がスタートする。リモート採用の人もおり、日本全国どこからでも働いて貢献してもらえる職場にしたい。国民を幸せにするため、安全な社会を作るために、様々なイノベーションに取り組んでほしい。デジタル庁も、その指令塔として民間のみなさんを全力で応援したい」と述べた。