ニュース

Microsoft、ISV向けにTeams用開発環境を拡大

Microsoft Teamsのプラットフォームの構成、Microsoft Cloudの上にTeams、サードパーティーのアプリケーションがある形になっている(出典:Microsoft)

 Microsoftは、5月25日~5月27日(米国時間)の3日間に渡って、同社の開発者向けフラッグシップカンファレンス「Build 2021」をオンラインで開催する。それに先だって、Microsoftは報道発表を行ない、Buildで発表する予定の同社のソリューションや開発環境などを明らかにした。その中で、Microsoftは同社のクラウドベースの生産性向上ツール「Microsoft 365」に関する各種の発表を行なった。

 Microsoftが最近その中核に据えているTeamsに関しては、Teams関連のAPI拡張や機能拡張を多数発表し、今後もTeamsを中心とした各種のコラボレーション機能を拡張していくほか、ISV(独立系ソフトウエアベンダー、OS以外のアプリケーションソフトウエアを開発するソフトウエア企業のこと)に対してTeamsのエコシステムに対応したソフトウエアの開発を促した。

TeamsのDAUが1億4,500万人に到達

 Teamsと言えば、多くのユーザーにとってはビデオ会議をするソフトウェアという印象ではないだろうか。昨今の在宅勤務(リモートワーク)の普及を鑑みれば、そうした認識をもたれているユーザーが少なくないのも当然といえる。

 しかし、ビデオ会議ソフトウエアというのは、Teamsの一面に過ぎず、そのほかにも、チャット機能だったり、組織のチームメンバーとの情報交換だったりと、コラボレーション機能やクラウドストレージへのアクセスなどリモートワークに必要な機能を1つのサービスにまとめたのがTeamsというのが正しい。言ってみれば、データとクラウドを活用するリモートワークの玄関口になるのがTeamsだというのがMicrosoftの目指している世界観と言える。

 そうした世界観に賛同する企業が増えていることもあり、Teamsのユーザーは増え続けている。2019年11月に2,000万人だったDAU(毎日の利用者数)は、パンデミックにより2020年7月には7,500万人に3.75倍になり、2020年の10月には1億1,500万人になったことが既に明らかにされている。そして今回そこにさらに3,000万人の上乗せがされ、1億4,500万人に到達したことが明らかにされた。2019年11月から約2年半で約7.5倍になった計算になる。

 従来Teamsは、MicrosoftのビジネスID(「職場または学校アカウント」と呼ばれる法人向けないしは学校向けのMicrosoft 365で作成されるIDのこと)でのみ利用でき、MicrosoftのコンシューマID(Microsoftアカウント)では利用できなかった。しかし、5月17日からはMicrosoftアカウントでも利用できるようになっている。そうしたことを考慮に入れれば今後もTeamsの勢いは増し、Microsoftにとって重要な基盤として成長していくだろう。

 実際、今回のBuildでMicrosoftはいくつもの布石を打っている。その最大のものが、Teamsにサードパーティーアプリを提供するISVやソフトウエア開発者に向けた各種の強化だ。

 Teamsではサードパーティーが拡張機能を追加する仕組みが用意されている。これは、Webブラウザ(例えばGoogle ChromeやMicrosoft Edgeなど)で機能を拡張できるのと同じようなものと考えると理解しやすいだろう。そもそもTeamsは、コラボレーションに特化したブラウザといっても過言ではないので、そうしたブラウザの機能とほぼ同じ拡張機能がTeamsでも使えると考えておおむね間違いではない。

 実際そうしたTeamsの追加アプリケーションは、一般的なWebアプリケーション、JavaScriptといくつかのTeams APIを利用して作られており、既にブラウザ向けの拡張機能を提供しているISVがTeamsの追加アプリを作るのは難しいことではない。そして、このWebアプリケーションは、プラットフォーム(OSやCPUの命令セットアーキテクチャ)から独立して作られており、どのプラットフォーム(Windows、Mac、Webブラウザ、iOS、Android、Linux)のTeamsでも動作する仕組みになっている

 さらにTeamsの背後で動いているMicrosoft Cloudと総称される各種のクラウドサービス(Azure、Microsoft 365、Dynamic 365など)が動いている。Teamsのユーザーを認証しているのはAzure AD(Active Directory)だし、データの管理ではMicrosoft Dataverse、Microsoft Graph、さらには自動化ではPower PlatformやAzureの各種PaaSなどが活用できる。そうしたサービスをISVやプログラマーが活用して自分のアプリケーションから使う、そうしたことも可能だ。

 このように、MicrosoftはTeamsを単に自社のコラボレーションツールとしてだけでなく、そうしたサードパーティーのISVが提供する各種のアプリケーションを含めて発展していくプラットフォームにしていく計画なのだ。

Teams向けアプリケーション開発者向けに数々の拡張機能などを提供

Shared stage integration(出典:Microsoft)

 そうしたMicrosoftのビジョンに従って、今回のBuildではTeams関連の新しい開発者向けのアップデートが多数公開される。これらを利用することで、開発者はTeamsの会議用アプリ(Microsoft Teams apps for meetings)を拡張したりできるようになる。

 Teamsの会議用アプリは、前出のTeams用アプリの中でも会議に特化したアプリで、昨年の11月に発表された。Teamsで会議を行なう前にドキュメントをシェアしたり、会議のノートを自動で作成したり、会議後にアンケートをとったりと各種のアプリが用意されている。そうした会議用アプリを作成する開発者向けに、今回「Shared stage integration」、「New meeting event APIs」、「Together mode extensibility」、「Media APIs with resource-specific consent」などが順次追加されると発表された。

 プレビュー提供が開始されるShared stage integrationはサードパーティーのソフトウエアに新しいメインステージへのアクセス機能が追加され、ホワイトボードやデザインプロジェクトボードなどの機能をアプリに統合できる。こちらもプレビュー提供されるNew meeting event APIsは、ミーティングを自動で開始したり終了したりするなどの自動化機能をアプリに追加できる。

Together mode extensibility(出典:Microsoft)
Media APIs with resource-specific consent(出典:Microsoft)

 間もなく提供開始されるTogether mode extensibilityでは、Togetherモードのオリジナルシーンを提供したり、それをユーザーとシェアしたりが可能になる。同じく間もなく提供されるMedia APIs with resource-specific consentでは開発者が動画やオーディオにアクセスすることが可能になり、文字起こしや翻訳、ノート作成、会議で盛り上がった部分の分析といった機能を提供することが可能になる。

 例えば文字起こし機能は、現在では英語のみが提供されているが、サードパーティーのISVが日本語の文字おこし機能を提供するそうした使い方が可能になる。

 このほかにも、TeamsチャットでFluid componentsが利用可能になり、今後まずプライベートプレビューとして提供されていき、その後より多くのカスタマーに対して数カ月の間に提供開始される計画だ。

Outlook Web版とTeams連携の強化(出典:Microsoft)

 そのほか、OutlookのWeb版からTeamsの拡張メッセージを送る機能が間もなく実装される。これを利用すると、Web版のOutlookでメールを送る際に、Teamsのタスクなどを貼り付けて送信することなどが可能になる。

昨年のBuild 2021で発表されたProject Reunionは最新プレビュー版0.8が公開される

 Microsoftは昨年(2020年)のBuild 2020において、Win32とUWPという2つのAPIを1つにまとめる取り組みとして「Project Reunion」を発表した

 MicrosoftはWindows 8の時代に当初はWinRTの名称で新しいAPIを導入し、WinRTに対応したアプリケーションを配信するためのプラットフォームとして「Windows Store」を導入した(後にMicrosoft Storeに名称は変更された)。Windows 10になりそのWinRTはUWP(Universal Windows Platform)へと進化したが、従来のWindowsアプリケーションが使ってきたWin32 APIに比べると普及したとは言えない状況で、Win32からUWPへ移行するというMicrosoftの当初のもくろみは完全に頓挫したといってよい状況になった。

 そのため、Windows StoreでもWin32 APIに基づいたアプリケーションを配布できる仕組み(Desktop Bridge)などが提供されるなどしてきたが、それもすべてのアプリが利用しているという状況ではないのは、よく知られているだろう。そこで、このWin32とUWPを再び1つのAPIとして統合していこうという取り組みが「Project Reunion」となる。

 今回のBuildではその最新版となる「Project Reunion 0.8 preview」の提供が開始されることが明らかにされた。このプレビューは3月に公開された「Project Reunion 0.5」に次ぐアップデート版となる。今回の0.8 PreviewではArm64に対応したアプリケーションの開発環境が充実されているほか、Windows 10の下位互換性としてWindows 10 バージョン1809以降に対応していることなどが明らかにされている。Project Reunion 0.8 previewはGitHubのサイトで公開されている