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Intel、2023年に7nmのコンピュートタイルを持つ「Meteor Lake」を投入。x86 CPUのIPも顧客に提供へ

IntelのPonte Vecchioを手に持つIntel CEO パット・ゲルジンガー氏

 Intelは、先月にCEOに就任したばかりのパット・ゲルジンガー氏によるオンライン記者会見を3月23日(現地時間、日本時間3月24日早朝)に行なった。

 このなかでIntelは今年の後半に投入が計画されている次世代プロセッサ「Alder Lake」の後継として、2023年に「Meteor Lake」を投入すると明らかにした。また、サーバー向けにはGranite Rapidsが投入され、こちらも7nmで製造されることになる。

 ゲルジンガー氏は遅れが懸念されていたIntelの7nmの開発にいても、EUVを利用した7nmの製造に目処が立ち、予定通りリリースできるようになったと述べた。同時に2023年のクライアント/サーバー製品ではTSMCのファウンダリも製造に利用されることが明らかにした。

 さらに信頼できる半導体サプライチェーンへの対応のため、Intelが外部の半導体メーカーや政府組織などのために受託製造サービスを開始することを発表した。増加する需要に対し、アリゾナ州に2つの新しい工場を建設することも明らかにした。

 そうした新戦略を「IDM 2.0」と呼び、Intelが依然として製造までを一貫して提供する半導体メーカー(IDMモデル)であることを維持し、さらに進化させると表明した。

2023年にMeteor Lakeをクライアント向けに投入

Meteor Lakeを2023年に投入

 会見の冒頭でゲルジンガー氏は、Intelにとって懸案となっていた自社工場向けの製造技術となる7nmの状況について触れ、「健全性と競争力は加速している。EUVの対応が鍵になっていたが、簡素化とアーキテクチャの再定義により、EUVの利用率が100%を超えた」と述べ、7nmの開発が昨年(2020年)の延期を発表した段階から大きく状況が改善されたと明らかにした。

 Intelの現在の主力のプロセスルールは14nmと10nmだが、現在10nmへの移行が急速に進んでおり、主力製品の第11世代Coreプロセッサはその改良版となる10nm SuperFinで製造されている。ゲルジンガー氏は今年(2021年)の第3四半期にはクライアントPCの大多数が10nmへ移行する見通しであることを明らかにし、躓いてきた10nmへのシフトが完全に軌道に乗ったことを印象づけた。

 その後継となる7nmだが、昨年の半ばに開発に遅れが生じていることをIntelは明らかにしたが、今回その原因がEUVの利用にあったことが明らかにされ、プロセスルールのアーキテクチャを変更し、よりシンプルにすることで問題を解決することができ、量産に向けて目処が立ったことが明らかにされた。

Foverosを利用している

 その7nmで最初に製造される製品が、Intelが「Meteor Lake」の開発コードネームとなるクライアント向けのSoCとなる。Intelは、すでにクライアントPC向けCPUを、従来の単体ダイとして開発するかたちから、複数のダイを1つのパッケージに封入するかたちへとシフトしている。

 現在は、チップセット(PCH)が統合されているだけだが、Lakefieldの開発コードネームで知られる製品は、Intelが開発した3Dダイスタッキング技術のFoverosを利用して3次元方向に複数のダイが搭載される。今年の後半にリリースされる次世代クライアントPC向けプロセッサ「Alder Lake」では、そうした新しいパッケージング技術が活用される見通しだ。

 Meteor Lakeもその延長線上にある製品で、1つのパッケージの上に異なるプロセスルールのチップが混載される。たとえば、CPUダイはIntelの7nmで製造され、GPUダイはTSMCの5nmで製造されるチップがパッケージ上で統合される、といった設計も可能になる。今回ゲルジンガー氏は詳しい説明を避けたが、コンピュートタイルと同氏が読んだチップがIntelの7nmで製造されると説明した。また、Foverosも利用されるとのことで、3D方向の実装も活用されることになる。

 また、サーバーのロードマップもアップデート。IntelはすでにIce Lakeの開発コードネームで知られる10nmのサーバーCPUを、第3世代Xeon Scalable Processorsと4月6日(米国時間)に発表することを明らかにしているが、その後継として「Sapphire Rapids」を2022年の前半に、そして同じくコンピュートタイルがIntelの7nmで製造される「Granite Rapids」)が2023年に計画されていると説明した。

IDMモデルは維持も、ファウンダリサービスを提供、x86のIPも提供していく

IDMからIDM 2.0へ。内部の事業部だけの製造だけでなく、Intel Foundry Servicesを開始する

 ゲルジンガー氏は同社のIDM(Integrated Device Manufacturer、垂直統合された半導体メーカー、開発から製造、販売までを一貫して行なう半導体メーカーのビジネスモデルのこと)モデルは今後も維持すると述べ、同社がIDM 2.0と呼んでいる新しいIDMモデルへと移行する方針を明らかにした。

 IDM 2.0とは3つの柱があるという。1つはこれまで同様にIntelの事業部という社内への製造サービス、2つめがTSMC、Samsung、UMC、Global Foundriesなどの外部ファウンダリーとの提携の加速、そして3つめが「Intel Foundry Services」と呼んでいる外部の企業や政府などに対する受託製造サービスの開始になる。

 Intelはすでに外部のファウンダリとの提携を行なっており、たとえば通信関連やチップセットといった半導体はそうしたファウンダリで製造し、自社製品として販売している。

 これが、今回2023年のクライアントPC製品の製造に利用されると明らかにされた。すでに述べたように、Meteor LakeはコンピュートタイルがIntelの7nmで製造されるが、すべてのダイがIntelの7nmで製造されるとは言っていないことからもわかるように、複数のチップが混載され、その一部はTSMCなどの外部ファウンダリで製造される可能性があるということだ。

受託製造を行なうファウンダリーはアジアに集中しているが、欧米の政府からそれに対する懸念がでてきている
Intelの工場は欧米とイスラエルに集中しており、そうした欧米の政府が求めるセキュアな半導体のサプライチェーンというニーズに応えることができる

 そして、インテルが外部の企業や組織などに対して受託製造サービスを提供することになるIntel Foundry Servicesに関しては「現在半導体需要逼迫など、半導体のサプライチェーンに関して米国や欧州の政府などから懸念が出ている。欧米に工場を持つというIntelとしてはそれに応えることがユニークな立場にあり、外部の組織やパブリックセクターなどに対して信頼性のある半導体サプライチェーンを提供することができる」と述べ、現在の発生している半導体の逼迫という市場環境の変化に応えるためのサービスであることを強調した。

Intelの事業部門からは独立して運営される
顧客はIntelのIPも利用することができる

 このIntel Foundry Servicesは、完全にIntelの事業部からは完全に独立して運営され、Intel Foundry Servicesの事業本部長からの報告は直接ゲルジンガー氏に対して行なわれるという。また、このIntel Foundry Servicesの顧客はx86 CPU、GPU、メディアアクセラレータ、ディスプレイエンジン、内部バスなどのIntelが持つIP(知的所有権)を利用できるほか、ArmやRISC-VなどのIntel以外の業界の標準的なIPも利用できる。

Microsoft CEO サティヤ・ナデラ氏

 今回の会見で、IntelがIntel Foundry Servicesをはじめることに歓迎のスピーチをしたのはMicrosoft CEO サティヤ・ナデラ氏だ。こうしたサービスを利用するとMicrosoftがIntelのx86 CPUやGPUなどのIPを利用して自社製品(たとえばSurfaceなど)向けのCPUを設計し、Intel Foundry Servicesで製造することが可能になるということだ。

 あるいは、AmazonやGoogleといったクラウド事業者が、自前のx86サーバープロセッサを設計し、Intel Foundry Servicesで製造することができる、そういうことだ。まさに半導体産業のかたちを大きく変える可能性を秘めていると言える。

Intel Foundry Servicesに賛同の意を表明した企業
IBM 会長 兼 CEO アルビンド・クリシュナ氏

 Intel Foundry Servicesに賛同している顧客として前出のMicrosoftのほか、Amazon、Cisco、Ericsson、Google、IBM、Qualcommなどをあげており、IntelのクライアントPC事業部と競合するQualcommなども顧客になると述べたほか、IBMとはプロセスルールやパッケージ技術の開発で協力を加速していくと述べた。

アリゾナ州のインテル・オコティージョ・キャンパスに新しい工場を2つ建設
アリゾナ州の経済に大きな貢献
今後の投資

 また、ゲルジンガー氏はIntel Foundry Servicesを開始するにあたり、2025年には1,000億ドルのTAMという見通しがあるなど需要増が予測されるため「アリゾナ州に新しい2つの工場を建設する」と述べ、アリゾナの「インテル・オコティージョ・キャンパス」に新しいファブを2つ建設すると発表した。この新しいファブでは少なくともEUVに対応したプロセスルールになるとのことで、7nmないしはその先のプロセスルールで製造される工場になりそうだ。

Intel Onをサンフランシスコで10月に開催予定

 また、会見の最後にゲルジンガー氏は、かつて同社が行なっていた技術者向けのイベントであるIntel Developer Forum(IDF)を復活させる意向を明らかにし、今年の10月に「Intel On」をサンフランシスコで開催する計画であることも明らかにした。

まとめ