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理研、スパコン富岳で新型コロナ表面の構造変化を解明。治療薬などの設計貢献に期待

新型コロナウイルス表面に存在するスパイクタンパク質の構造変化機構

 理化学研究所(理研) 計算科学研究センター粒子系生物物理研究チーム、開拓研究本部杉田理論分子科学研究室らによる研究チームは18日、スーパーコンピュータの富岳およびOakforest-PACSを利用して、新型コロナウイルス(SRAS-CoV-2)の表面に存在するスパイクタンパク質の構造変化機構を解明したと発表した。これにより、感染予防や治療に向けた医薬品の分子設計に貢献することが期待される.

 SARS-CoV-2は、ウイルス表面のスパイクタンパク質をヒト細胞表面のACE2受容体に結合・吸着することでヒト細胞に侵入する。このスパイクタンパク質の立体構造に関しては分析が進んでおり、受容体結合ドメインがダウン型およびアップ型の構造をもち、表面の多くのアミノ酸が糖鎖によって修飾されていることがわかっている。一方、糖鎖については分子構造がわかっておらず、ヒト細胞に侵入するさいの糖鎖の役割についてもわかっていなかった。

 研究チームでは、スーパーコンピュータの富岳とOakforest-PACSを用いて、ダウン型およびアップ型構造におけるスパイクタンパク質の1μsの分子動力学計算を行なうシミュレーションを実施。アミノ酸-アミノ酸およびアミノ酸-糖鎖の相互作用を解析した。

新型コロナウイルスSARS-CoV-2の感染メカニズム
スパイクタンパク質中のアミノ酸-アミノ酸およびアミノ酸-糖鎖相互作用

 その結果、スパイクタンパク質の165番目、234番目、343番目の3つのアスパラギンN165、N234、N343を修飾するそれぞれの糖鎖が受容体結合ドメインの構造安定化に大きく影響を与えていることがわかった。

 また、ダウン型構造では3つの受容体結合ドメインの境界面が広範囲で正に帯電しており、アップ型への構造変化が静電的な反発などから発生することも判明。これにより、アップ型・ダウン型に変化するさいの構造変化のメカニズムと、タンパク質の動的構造の安定化を糖鎖が支えていることが明らかとなった。

 SARS-CoV-2では、ヒト細胞のACE2受容体に結合するさいにアップ型構造をとることがわかっており、今回の発見により、スパイクタンパク質とACE2受容体との結合を阻害する手法だけでなく、スパイクタンパク質の構造変化に関わる糖鎖を利用したものなど、新たな医薬品の開発につながるとしている。