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AMD、ついにハイエンドでも攻勢に。勢力図が一気に変わり激戦突入のビデオカードの実力チェック!
2021年2月6日 06:55
ベタ凪のち大波乱の2020年。2021年はどうなる!?
2020年のGPU市場は、前半はほぼ停滞、8月以降はNVIDIAとAMDが激しく競り合う展開となった。投入された新GPUは2020年前半は1製品に過ぎないが、後半は4カ月という短期間でNVIDIA/AMD合わせて七つの新GPUが投入された。新GPUの数では2019年におよばないが、2020年はGPU業界の勢力地図が大きく書き換わったのだ。
まず闘いの先陣を切ったのはNVIDIAだ。Ampereアーキテクチャを採用した「GeForce RTX 30シリーズ」で旧世代のハイエンドどころかTITANまで圧倒的性能差で上回り、DXR(DirectX Raytracing)のパフォーマンスをさらに向上させた。
対するAMDは、RDNA2アーキテクチャを採用した同社初のDXR対応GPU“Big Navi”こと「Radeon RX 6000シリーズ」を発表した。数々の意欲的な設計で話題を呼んだが、もっとも注目を集めたのが「RTX 30シリーズの上位モデルと同等以上の性能かつワットパフォーマンスも高い」と発表し、実際にほぼそのとおりのパフォーマンスを実現していた点だ。AMDは2015年のFury X以降コストパフォーマンス重視路線に転向していたが、ついに純粋な性能で反撃に転じられる武器を手に入れたのだ。“強いRadeon”を待ち望んでいたファンにとっては、2020年は記念すべき年になったと言える。
2021年はこれら新世代GPUがミドル~エントリー帯へと展開されることが予想され、さらなる激戦が繰り広げられるだろう。ここ数年忘れていた一進一退の攻防に期待したい。さらにIntelが開発中の「Xe」ベースのGPUというダークホースもいる。2021年のGPUバトルはますますエキサイティングなものとなるだろう。(TEXT:加藤勝明)
性能も消費電力も圧倒的なGeForce
Samsungの8nmカスタムプロセスを採用したNVIDIAのRTX 30シリーズは、前世代RTX 20シリーズの設計を発展させ、描画性能の大幅な底上げを狙ったGPUだ。フラグシップ「GeForce RTX 3080」は4Kゲーミングを、最上位の「同RTX 3090」はさらに8Kゲーミングも視野に入れている(ただしDLSSの利用がほぼ前提)。とくにRTX 3090は1万基以上のCUDAコアと24GBものGDDR6Xメモリを採用。ゲーマーのみならず8K動画編集などのクリエイティブ系用途にも強い製品に仕上がっている。
このように回路規模が大幅に増大した結果、描画性能、とくにDXR対応ゲームの性能は格段に向上した。だがそれと同時に、カード全体の消費電力(TGP)も大幅に増加しており、RTX 3080は320W、RTX 3090では350Wに到達している。速いのだから消費電力増大は仕方ない、と割り切った設計だ。
続く2020年終盤に出た「同RTX 3070」と「同3060 Ti」は現実的な消費電力と価格でDXRゲームを楽しむためのGPUに仕上がった。2021年はライバルに対抗するための隙間モデル投入や、Resizable BAR(後述)対応などの施策を打ってくると予想される。
“強いRadeon”の華麗なる復活
AMDのRX 6000シリーズはAMD初のハードウェアでDXRに対応したGPUであり、RTX 3070~3090の性能に真正面から挑んだGPUでもある。
ゲーム中でも実測2GHz以上で回る高クロック設計のほかに、GPUの3次キャッシュというべき「Infinity Cache」を搭載した点が最大の特徴。ハイエンドGPUはメモリ帯域の確保が必要不可欠になるが、メモリバス幅を増やすと電力効率が下がる。そこでRyzenやEPYCで培ったキャッシュ実装技術とInfinity Fabricを組み合わせたInfinity Cacheを利用することで、帯域確保と電力効率の向上を同時に実現している。このためSPまわりの設計を大きく変えずに性能、とくにフルHD~WQHDでのパフォーマンスを大きく改善した。ビデオメモリは全モデルが16GBを搭載し、RTX 3070や3080に対するアドバンテージを強く打ち出している。
さらにPCI Express Gen2時代から存在するResizable BARを利用し、GPU→ビデオメモリのデータ転送効率を上げる「Smart Access Memory」という機能をいち早く実装。DXRで遅れた分を取り戻すように、技術面でもGPU市場をリードする姿も打ち出しているのだ。
上位モデルは両陣営とも入手難……
DXRゲームで最高の性能を求めるならRTX 30シリーズ、非DXRならRX 6000シリーズといった棲み分けで盛り上がりつつあるのだが、両陣営とも上位モデルの入手性がよくない、という問題も。とくにCPUと7nmプロセスノードを奪い合うRX 6000シリーズの品薄状況は深刻そうだ。RTX 30シリーズもRTX 3080の人気モデルは少量入荷状態が続いているが、下位のRTX 3070/3060 Tiは比較的潤沢。現状は新型コロナウイルスの影響もあるが、2大GPUメーカーの生産体制はどちらも需要を満たし切れていないことは間違いない。
基礎能力とカード単体消費電力を比較
今回は、現行~1世代前のGPUから代表的な製品を一つずつピックアップ、GPU性能にフォーカスしてチェックする。RTX 20シリーズ以下やRX 5000シリーズはサードパーティ製品だが、RTX 30シリーズとRX 6000シリーズの一部はFE版やリファレンスカードを使用した。
まずは定番の「3DMark」と消費電力の比較を行なうが、消費電力はシステム全体の消費電力ではなくCPUやマザーの影響を排除したTotal Board Power(TBP)で比較した。TBP測定にはNVIDIAの「PCAT」を利用し、10分稼働時の平均と瞬間最大値を比較した。
フレームレート命の軽量FPS
レインボーシックス シージ(APIはVulkanを使用)のテスト結果は、フルHD~WQHDではRX 6000シリーズがライバルを上回るフレームレートを記録。旧世代RX 5000シリーズの2倍近い結果が出ている点には驚くしかない。しかし、4Kではメモリバス幅の広いRTX 3080や3090が好成績を収めているという点には注目だ。
Apex Legendsはfps制限を解除しても300fpsで頭打ちになるため、上位GPU陣の性能差は小さい。ファクトリーOCモデルのRX 6800 XTはきわめて速く、WQHDでもフルHDの値に迫る結果を出している。
描画処理の重い中~重量級ゲーム
「Horizon Zero Dawn」はDXRは使わないが描画負荷のきわめて高いタイトルだ。AMDのプロセッサを搭載する家庭用ゲーム機からの移植なので、同じAMDのRadeonが有利かと思われたが、意外にもRTX 30シリーズとRX 6000シリーズのパフォーマンスはほぼ拮抗している。
一方「Dirt 5」では、DXRが組み込まれたβバージョンで検証している(DXR非対応のGTX 16系やRX 5000系はDXR OFFで計測した)。ご覧のように、DXRを使ったゲームであっても、ゲームエンジンの設計によってはRX 6000シリーズが上回ることもある、という一例となる結果が得られた。
レイトレーシング対応の重量級ゲーム
最後に試すのはDXRをふんだんに使った重量級ゲーム「ウォッチドッグス レギオン」と「Call of Duty:Black Ops Cold War」だ。ここでもレイトレーシング用の専用回路を持たない旧世代GPUはDXRなしの状態で計測している。
どちらのタイトルにおいてもRTX 30シリーズがRX 6000シリーズを大きく上回っており、3DMarkのPort Royalの結果と符合する。Call of Duty:Black Ops Cold WarではRTX 30シリーズ優位の傾向が顕著で、RX 6000シリーズは現状とくに高fpsが出しにくいようだ。
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【検証環境】CPU:AMD Ryzen 9 5950X(16コア32スレッド)、マザーボード:GIGA-BYTE X570 AORUS MASTER(rev. 1.0)(AMD X570)、メモリ:G.Skill F4-3200C16D-32GTZRX(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2)×2、SSD:GIGA-BYTE GP-ASM2NE6200TTTD[M.2(PCI Express 4.0 x4)、2TB]、CPUクーラー:Corsair iCUE H115i RGB PRO XT(簡易水冷、28cmクラス)、電源:Super Flower Leadex Platinum 2000W(2,000W、80PLUS Platinum)、OS:Windows 10 Pro 64bit版、Total Board Power:NVIDIAの電力計測デバイス「PCAT」を装着した状態で、アイドル状態10分間の平均値、および3DMark-Time Spy Stress Testを10分間動かしたときの平均値および最大値を計測、Apex Legends:起動オプション「+fps_max unlimited」を指定し、最高画質設定で射撃訓練場における一定の動作をした際のフレームレートを「CapFrameX」で計測、レインボーシックス シージ:APIはVulkan、画質“最高”をベースにレンダースケールを100%設定、内蔵ベンチマーク機能を利用して計測、Horizon Zero Dawn:画質“最高”設定で内蔵ベンチマーク機能を利用して計測、Dirt 5:DXR対応βバージョンを使用し、画質“Ultra High”に設定して内蔵ベンチマーク機能を利用して計測、ウォッチドッグス レギオン:APIはDirectX 12、画質“最大”+レイトレーシング設定はすべて最大に設定し、ゲーム内ベンチマーク機能を利用して計測、Call of Duty:Black Ops Cold War:インストール時に高解像度アセットを追加し、画質設定は最高に設定(SSRは“低”、モーションブラーは無効)、ステージ“フラクチャー・ジョー”をプレイしたときのフレームレートを「CapFrameX」で計測、そのほかはp.58と同じ