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Zoomが実現するWeb会議の今後とリモートワークの課題
2020年10月16日 13:22
Zoomを日本で展開するZVC Japanは、10月16日午前9時から、「Zoomtopia Japan Session」を、オンラインで開催した。
米Zoom Video Communicationsが、米国時間の10月14日、15日の2日間、オンラインで開催したユーザーコンファレンス「Zoomtopia 2020」と連動するかたちで、日本法人であるZVC Japanが、日本のユーザーのために開催したもので、ZVC Japanのカントリーゼネラルマネージャーである佐賀文宣氏による講演や、米Zoom Video CommunicationsのグローバルCIOのハリー・モズリー氏による基調講演、ユーザー企業による導入事例の紹介、Zoomを活用した働き方の改革への取り組みなどに関するセッションが行なわれた。
ZVC Japanの佐賀文宣カントリーゼネラルマネージャーは、「日本の時間帯に、日本のお客様に集まってもらい、Zoomtopia Japan Sessionを開催するのははじめてである」と前置きし、「今年のZoomtopiaのテーマは、『Epic Environment−Courage』である。壮大なビジネス環境と、その変化に、勇気を持って取り組んでいくことを示した。この半年間の変化だけでなく、これからのビジネス環境の変化にどう対応していくか、どうしたら取り残されないで済むか、むしろ、一歩目をいち早く踏み出すにはどうするかを考えることが大切である。それが変化に対応できるかどうかの分かれ目である」と切り出した。
その一方で、「コミュニケーションが大きく変化するなかで、Zoomが日本市場において提供できているのは、ウェブミーティングという一部の機能だけである。もっと多くの機能を日本の市場に提供したい」と語り、2020年内には、楽天コミュニケーションズとの協業により、Zoom Phoneを日本で提供し、「050」番号と接続するほか、Zoom Roomと呼ぶ会議室ソリューションも日本市場に積極展開することなどを示した。
また、佐賀カントリーゼネラルマネージャーは、Zoomtopia 2020で発表された新たな取り組みや、Zoomミーティングの新たな機能についても説明した。
「Zoomでは、社内同士や企業間のコミュニケーションのためのBtoB、お客様が、その先のお客様につながり、ビジネスを行なうためのBtoCだけでなく、お客様の製品やサービスにZoomを組み込んで利用してもらうBtoD(開発者)に投資していくことを示した。
ジェイソン・リーCISO(最高情報セキュリティ責任者)が、90日間のセキュリティ改善の取り組みを報告したほか、エンド・トゥ・エンドでの暗号化をZoom独自の設計により新たに実現し、すべての利用者に提供できるようにすると発表した。さらに、セキュリティレベルに応じてタグづけし、チャットを分類できる機能や、待機室で相手の顔を確認後に参加を承認できる機能も発表した。これらによって、よりセキュリティを高めることができる」と述べた。
また、Zoomミーティングにおいては、この半年間で、大規模なミーティングやウェブナーが数多く開催されていることに触れながら、「ギャラリービューで、何ページも顔が表示されてしまうことに対応して、話し手や手話通訳者など定位置に表示したい人を簡単にドラッグ&ドロップで固定表示できる機能と、実際の教室に人が入ったように表示できるイマーシブシーン機能を用意した」と説明。「日本では、上座、下座の機能というように表現されたが、そうした意図で作ったものではない。教室での授業、役員会や記者会見のように、いつも配列が固定されていたほうがスムーズであるという場合に使う機能である」と位置づけた。
さらに、「大規模ミーティングやウェビナーでは、参加者のリアクションが、アニメーション化して確認できる機能を搭載。ホワイトボードの機能強化では、スナップショットを撮影したり、付箋を貼ったりして、リアルに共同作業を行なっているのと同じ環境をつくれるようにした」と述べた。
加えて、「音質の飛躍的な改善も発表した」とし、「AIを活用することで、背景のノイズをフィルタリング。音楽を自動検出して、音楽レッスンでの活用や実際の演奏などに最適化でき、まるで、その場にいるようにして聴くことができる。この機能改善は、エンターテイメントとしての利用だけでなく、医者が離れた場所から患者の心音を聞くことができるといった進化につながるものになる」と述べた。
一方で、家庭内での仕事をより快適にし、「Zoom疲れをしないための提案」として、Zoom for Home(ZfH)に言及。DTENやneat.といったZoom機器専用ベンダーのほか、PolyやLenovoなどの会議室ソリューションを提供している企業などから、Zoom専用端末が発売されていることに加え、GoogleやAmazonが発売するAIスピーカーを利用して、音声で操作ができるようにするなど、ZfHの拡張が発表されたことを報告した。
そして、On Zoomについても言及。「Zoomを使ったイベントを掲載し、イベントの開催者が告知をしたり、支払いを受けたり、申込者に連絡を取るといった一連の活動を、サイトのなかで提供するものになる。複数のプラットフォームやアプリなどを利用しないで済む」とした。
今後の事業
さらに、日本におけるZoomの事業成長についても説明した。
「Zoomは、日本において飛躍的に成長している」とし、10以上のビジネスライセンスを利用している企業顧客数が、1年前には2,500社だったものが、現在は2万社に増加。パートナー数は、5社から300社以上に増加。日本法人の社員数は20人から65人に増加。そして、国内売上げは10倍に達したという。
「社員数が3倍に対して、売上げが10倍になっている。ここには、販売パートナーがZoomを広め、顧客に届けていることが背景にある。今後1年で、さらに社員を倍増させたい」としたほか、「昨年の今頃は、Web会議のなかでのシェアは10%に満たなかったが、今年5月には35%のシェアにまで拡大している。2位の18%を大きく引き離し、圧倒的に使われるようになっている」とした。
調査では、Web会議の利用率そのものが、昨年の44%から、今年は63%に拡大しているというが、そうした広がりのなかで、佐賀カントリーゼネラルマネージャーは、「オフィスに人が戻りつつあるなかで、Zoomが乗り越えることができる3つの壁がある」と指摘した。
1つは、「地域の壁」である。「以前は、東京本社の会議室が、会議の中心で、そこに地方拠点の勤務者や、在宅勤務者が外から参加するという仕組みであったため、本社の会議室で議論が中心に進み、リモートでの参加者は、現場の顔が見えずに、どこで口をはさんでいいかがわからなかった。そこに地域の格差を感じることがあった。Zoomでは、顔を見せて、どこから参加している人も平等に会議に参加できる。地域の壁を低くできる」と述べた。
2つめは、「時間の壁」である。育児や介護などのために、午前9時から午後5時までの時間帯で働くことが難しいため、仕事を休職したり、退職をしたりといったことが起きている。「人生のなかでは、そうした時期が必ずある。だが、Zoomを利用することで、時間が柔軟に使えるようになり、キャリアをあきらめなくてもよくなる。企業も優秀な人材を活用できるようになる」とした。
そして、3つめが「言葉の壁」である。海外とのミーティングや商談も、Zoomの同時通訳機能を使って解決できる。「通訳を手配すれば、それ以外の投資がなく、同時通訳を利用できる。
「ビジネスの場におけるコミュニケーションの壁を取り払っていけること、コミュニケーションのインフラをシンプルにすることが、Zoomの使命である。この3つの大きな壁を壊すという大きな変化と挑戦に、みなさんと一緒に取り組みたい」とした。
リモートワークの問題も顕著化
その一方で、Zoomを使ったリモートワークにおける問題点が顕在化してきたとも指摘する。
それを「リモートワークの格差」と表現する。
「リモートワークでメリットがあった人はごく一部であり、リモートワークができない『現場』が多く存在している。リモートワークの格差と分断があったと認識している」とし、「医療関係者や介護関係者、スーパーマーケットや宅配事業者など、現場に行かなくてはならない人が取り残される世界のままでは不十分である。新型コロナウイルスの終息後も、困難は訪れるだろう。現場に、もっとリモートワークを導入するという発想力と勇気が求められている」と述べた。
最後に、佐賀カントリーゼネラルマネージャーは、「Zoomはプラットフォームであり、インフラである。これからは、お客様向けサービスに、Zoomを組み込んで利用してもらえるようになる。商談やミーティングだけでなく、名刺交換やスポーツ教室、音楽、医療、教育といったあらゆる場所で、Zoomが利用されることになる。
Zoomは、日本では、まだ事業がはじまったばかりである。まだ、Zoomミーティングしか提案できていない状況にある。オフィスとリモートワークの共存に向けて、会議室用サービスのZoom Roomsを提供し、Zoom Phoneによって、Zoomミーティングの10倍市場規模があるPBX市場にも参入できる。パートナーとともに、日本の市場に対して、Zoomの幅広いソリューションを提供していきたい」と締めくくった。