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島根富士通のPC累計生産台数が4,000万台を突破。八雲塗の記念モバイルノートも製作

累計生産4,000万台を達成した島根富士通

 島根富士通は、2019年6月20日、累計生産台数が4,000万台に到達したのにあわせて、同社関係者による記念式典を行なった。

 島根富士通は、富士通ブランドのPC事業を行なう富士通クライアントコンピューティングの100%出資会社で、年間約200万台のPCの生産能力を持つ「日本一のPC出荷台数を誇る生産拠点」(同社)と位置づけられている。

挨拶する富士通クライアントコンピューティングの齋藤邦彰社長

 富士通クライアントコンピューティングの齋藤邦彰社長は、「4,000万台のPCを横に並べると、島根富士通から、ドイツのアウクスブルグの生産拠点や、米国の生産拠点にも軽く到達するほどである。だが、大切なのは、中身が濃い4,000万台であるという点だ。

 これは、諸先輩の志が詰まった4,000万台である。国内でPCを生産している工場は少ない。当社でも一時は、海外で生産するという議論もあったが、お客様の満足を考えると、島根でやらなくてはいけないという判断をし、努力によってここまで続いてきた。

 他社は、コストの観点から海外に出ていったが、いま、島根富士通が持っているコスト競争力は世界でもトップレベルにある。諸先輩の意志を継いで、ひとりひとりが毎日努力を積み重ねてきた結果である。品質でも、コストでも戦うことができ、ベストフィットというキーワードでひとりひとりのお客様が望むものを提供できる。次の8,000万台のときには、4,000万台の達成時よりも、中身の濃いものにしたい」と挨拶した。

島根富士通の神門明社長

 また、島根富士通の神門明社長は、「出雲の地で、29年という長きにわたり、モノづくりを続けてこられたのは、変化に柔軟に対応し、たゆまぬ改善を積み重ねながら、つねに変化し続けることができたからだと確信している。

 累計生産4,000万台の達成は、さらなる成長へ向けた通過点と位置づけ、われわれが目指す、自動化とICTを融合した次世代モノづくりを実現し、次の5,000万台、6,000万台に向けて、これからも全社一丸となって挑戦していきたい」と抱負を述べた。

4,000万号機を手にする島根富士通の神門明社長

 島根富士通は、1990年に、富士通製PCの生産拠点として操業。当初は、マルチメディアPCとして人気を博したFM TOWNSをはじめとするデスクトップPCの生産も行なっていたが、1995年には、ノートPCの生産に特化。同年には、累計生産が100万台に到達した。

 その後、1997年には累計生産200万台、1998年には300万台、2000年には500万台をそれぞれ達成。2003年には累計生産1,000万台、2007年には2,000万台、2013年には3,000万台を達成していた。

 2011年には、島根富士通が立地していた斐川町が、出雲市に編入したことで、同年から、島根富士通で生産されたPCを「出雲モデル」の名称で展開。2012年には、島根富士通で生産したノートPCが、出雲市から「出雲ブランド商品」に認定されている。

 また、国内生産ならではの信頼性や柔軟なカスタマイズ対応、迅速な出荷体制などが特徴で、生産性向上などを目指す生産革新活動にも積極的に取り組んでいる。

 ここ数年は、「人と機械の協調生産」の実現を目指し、量産工程における汎用ロボットの活用を開始。低コスト生産や、小ロットの混流生産を可能とし、1台ごとに仕様が異なるノートPCやタブレットを、効率的に生産できる体制を敷いている。2015年には、第6回ものづくり日本大賞 経済産業大臣賞を受賞している。

 島根富士通では、累計生産4,000万台を記念した「4,000万号機」特別モデルを製作した。特別モデルのベースとなったのは、世界最軽量の698g「LIFEBOOK UH-X/C3(ついに約698gまで軽量化。強度も増した富士通13.3型モバイルノート参照、Web直販モデルの製品名はLIFEBOOK WU2/C3)」。天板に、島根県のふるさと伝統工芸品に指定されている「八雲塗(やくもぬり)」を施しているのが特徴だ。

LIFEBOOK UH-X/C3(Web直販モデルはLIFEBOOK WU2/C3)をベースに製作した八雲塗の4,000万号機

 同社によると、「4,000万号機の製作にあたり、社内でデザイン募集を行なったところ、17作品の応募があり、そのなかから、3作品を優秀賞として選んだ。優秀賞の1点がヒントとなり、漆塗りを採用することにした」としており、「漆塗りという伝統工芸を用いて、和の心を、Made in JAPANによる匠の技で表現することとし、日本の夕日百選にも登録されている宍道湖を赤く染める夕日に浮かび上がる嫁ヶ島を、天板のデザインに採用した」という。

 八雲塗りは、島根県松江市で生産される漆器であり、下地の工程のあと、中塗りを行なわずに、色漆、青貝、金銀粉、乾漆などで文様を描き、その上から透漆をかけて仕上げる。時間が経つにつれて、漆が透明になり、描かれた鮮やかな文様が浮き上がってくるのが特徴だという。

 今回の塗装は、島根県松江市の山本陶器店(八雲塗やま本)が行なっており、天然色漆を用いて、宍道湖の波夜と嫁ヶ島、棚引く雲を描いたあとに、前面に銀粉を蒔き、その上から純良な国産の木地呂漆を塗り重ね、八雲塗独自の仕上げを行なっているという。

 「現時点では、完成直後であり、まだ色が沈んでいるが、年月を経るごとに、上に塗重ねた木地呂漆が、光の作用で透明度を増していき、明るく鮮やかになっていく。これが、ほかの産地にはない、八雲塗の特徴である」としており、「今後、累計生産5000万台、6000万台へと向かって、年月を経るごとに、島根富士通も、明るく鮮やかに成長して行きたいという願いを込めた」としている。

 特殊な塗装のため、4,000万号機の総重量は706.7gと少し重くなっている。同社によると、製作費用は本体が141,000円、塗装料が81,000円の合計222,000円となり、まさに、222(フジツー)の語呂にあわせたものになった。

 なお、特別モデルは1台だけの製作となっており、販売予定はない。

関係者による記念式典ではくす玉が割られた