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シャープ、第2世代「RoBoHoN」を発表

~歩かない廉価版を追加、地道な進化で法人・家族向けに注力

 シャープ株式会社は2019年2月18日、発売中のモバイル型コミュニケーションロボット「RoBoHoN(ロボホン)」の第2世代となる新製品3機種を発表した。2月27日から発売する。これまで販売していた第1世代同様に二足歩行ができるLTE/3GモデルとWifiモデルのほか、着座タイプで廉価な「RoBoHoN Lite」を追加した。足を使った機能をのぞき、Wi-fiモデルの機能がそのまま使える。

 RoBoHoNは小型のモバイルコミュニケーションロボット。身長19.8cm、395g。脚部からサーボモーターを取り除いた着座モデルは座高14.8cm、360g。CPUはQualcomm Snapdragon 430(1.4GHz×4+1.1GHz×4のオクタコア構成)。内蔵メモリは2GB、ストレージは16GB。背面に2.6型QVGAディスプレイを搭載している。

 ハードウェアとしてはCPUをクアッドコアからオクタコア化、対応バンドを増やし、ディスプレイを2型から2.6型へと大型化した。第1世代との互換性を保つことを重要視したという。頭部に搭載されていたプロジェクタはなくなり、ワイヤレスによる画像出力となった。

RoBoHoN。身長19.8cm
重さは着座モデルも歩くモデルもあまり変わらない
頭部に搭載されていたプロジェクタは省略された
首から提げて用いる専用ケースも販売されている

 新たに「お留守番アプリ」を搭載し、人を検知すると写真を撮影して指定メールアドレスに送信する機能やリアルタイム確認機能、スマートフォンから入力した文字をロボホンから発声させる機能などを追加した。株式会社リンクジャパンが販売するIoTリモコン「eRemote mini」と連携することで、TVや照明器具などの家電製品を音声操作もできるようになった。

 また、PCやタブレット上でブロック状のオブジェクトを組み上げることで簡単にプログラムできるソフトウェア「ロブリック」(別売)を使うことで、プログラム学習もできるようになった。法人向けには「施設案内」と「受付」アプリをリリースした。多言語(日・英・中・韓)対応での案内ができる。

簡単にプログラミングができる「ロブリック」が提供開始
タブレットで簡単にプログラミン可能。英語・中国語への切り替えも可能

 価格はLTE/3Gモデルが180,000円。Wifiモデルが120,000円。着座モデル(Wifi搭載)が79,000円。2月18日13時から、シャープの「COCORO STORE」で予約受付を開始する。本体価格に加えて、別途「ココロプラン」(月額980円)が必要となる。法人向けには法人用のクラウドサービスへの加入も必要となる。価格はいずれも税別。株式会社ベネフィットジャパンからはタブレットと組み合わせたオリジナルモデルも展開される。

第1世代との互換性を重視しながらアップデートした
3つのラインナップが用意される
ベネフィットジャパンのオリジナルモデルは専用タブレットとセット
第2世代の充電端子の位置は右足付け根部分に移動。専用クレードルも小型化した

発売後3年間の累計販売台数は12,000台、満足率は8割

シャープ株式会社 専務執行役員 スマートホームグループ長 兼 IoT事業本部長 長谷川祥典氏

 発表会でははじめにシャープ株式会社 専務執行役員 スマートホームグループ長 兼IoT事業本部長の長谷川祥典(はせがわ・よしすけ)氏は、「RoBoHoNが発売されて、もうすぐ3年になる」と概要を紹介した。発表後これまでに30種類のアプリを追加配信。「ココロプラン」の継続率は81.3%、満足度は約8割となっている。

 認定開発パートナー登録数は80社、導入法人数は400社を超えた。とくに教育・観光・接客分野で活用されている。教育分野では「論理的思考力だけでなく創造力も養える」と好評だという。観光分野では多言語対応を進めている。接客では旅行などでの心に残る接客に注力しており、スタッフからも「癒される」と好評だと述べた。

購入ユーザーの満足度は約8割
認定開発パートナー数は80、400法人に導入

 発売後3年間の累計販売台数は12,000台。うちコンシューマ向けが85%。これからも新たなユーザー層の拡大をねらい、サービス連携モデルによるBtoBtoCへの展開を進める。また、とくに法人向けには「RoBoHoN Lite」モデルの展開を積極的に進める。教育ではプログラミングだけではなく、英語学習にも力を入れる。太陽光発電や蓄電システム、HEMSともつなげてロボホンが楽しくエナジーマネジメントを行なう「RoBoHoN lite HEMS」も推進していく。たとえばたくさん発電した日はそのことを知らせてくれたりや、外気温と室内気温を比較して、エアコンのスイッチオフを提案したりしてくれるとのこと。

RoBoHoNがHEMS機器や家電と連携できるようになった
BtoBでは服を着せた展開も多い

 今後、2020年度末までに3万台の販売を狙う。そのうち半分はBtoBを想定しているという。長谷川氏は「当初目標よりは低いが、RoBoHoNの販売台数はじょじょに増えている。サブスクリプションモデルなので、今後収益性は良くなると考えている」と語った。

ロボットプログラミング用途では創造力も養えると好評
接客業務でも活用されている

個人向けから家族をターゲットに

シャープ株式会社 IoT HE事業本部 IoTプロダクツ事業統轄部 市場開拓部長 景井美帆氏

 シャープIoT HE事業本部 IoTプロダクツ事業統轄部 市場開拓部長の景井美帆(かげい・みほ)氏は、「これからのRoBoHoNは、個人だけではなく家族に寄り添うロボットとして、とくに子供がいる家庭を主要ターゲットとする」と語った。

 親よりも子供のほうがロボットに抵抗がなく接する一方、小学生以下の子供がいる家庭はロボホン所有者のうち8%。そこで4つのアプリ(お留守番、プログラミング教育、ヘルスケア、家電連携)で、子供のいる家庭にさらに訴求していく。留守番機能については住友生命保険相互会社の協力を得て実際に使ってもらったところ、11人中8が人が役に立ったとコメントしたという。Wi-fi家電連携は3月以降導入される。会話機能も進化しているという。第1世代では46アプリが利用可能になる。

ロボホンユーザーのうち小学校就学前の子供がいる家庭は8%
留守番機能
テストでは11人中8人が役に立ったと回答
ロブリックを使ったプログラミング
ヘルスケアや歌などのアプリケーションも提供される
Wi-Fiを使った家電連携

ロボホンの魅力は「1つ1つの機能だけでは量れない」

住友生命保険相互会社 人事部上席部長代理ダイバーシティー推進担当 小野寺成子氏

 実証実験に協力した住友生命保険相互会社 人事部上席部長代理ダイバーシティー推進担当の小野寺成子氏は住友生命保険は非常に女性の多い会社だと紹介し、RoBoHoN新機能開発に協力した背景として「外部ツールの力を借りることで、どんなことができるのか、可能性に興味を感じた」と述べた。

 テストでは「かわいい、賢い」といった声が共通していた一方で、「お留守番機能」については、活用を通じて家庭の環境が千差万別であることが浮き彫りになったという。たとえば「これまでは朝早く自分が会社に行くために、外出後にちゃんと起きたかどうかを子供に電話をかけて確認していたが、その必要がなくなったので便利」といった声もあったという。アプリの機能については、シンプルであるためさまざまな環境に柔軟に対応できる点を評価した。プログラミング機能については、子供たちのほうが簡単に扱っていたと述べた。そして「ロボホンの魅力は1つ1つの機能だけでは量れない」と感じたという。

株式会社アルク代表取締役社長 田中伸明氏

 5月からRoBoHoNを活用した英語教室をはじめる株式会社アルク代表取締役社長の田中伸明氏は、「教育へのコンピュータ活用は、実行段階に入っている。実証実験をしたところロボホンを使うことで発話回数が2倍に増えた。日本人は英語に苦手な人が多いが、未就学児から変えていかないとその状況は変わらない。ロボホンという愛くるしいキャラクターを使うことで、子供達が自発的に英語を喋りたいという気持ちにさせることは非常に重要ではないかと考えている」と述べた。

アルクの子供向け英語教室にロボホンが導入される
合計46のアプリが提供される

実在するロボットの強みは「信頼感の醸成」

東京大学先端科学技術研究センター 特任准教授、株式会社ロボ・ガレージ代表取締役、ロボットクリエイター 高橋智隆氏

 RoBoHoNの共同開発者である東京大学先端科学技術研究センター 特任准教授で、株式会社ロボ・ガレージ代表取締役、ロボットクリエイターの高橋智隆(たかはし・ともたか)氏は、「スマホのようなコミュニケーションツールとロボットが交差すると言いはじめて5年くらい経つが、なかなか普及しない。RoBoHoNも同じことが起きているが着実に進化している」と述べた。

 そして「ロボットと暮らす、ロボットを持ち歩くサービスとはなんなのか、じょじょに理解されはじめており、RoBoHoNは右肩上がりの成長を示している。コモディティ化が進んだスマートフォンは減速しはじめている。スマートフォンの音声認識機能はあまり使われていない。擬人化できる対象でなければわれわれは話しかけにくいが、ロボホンなら話しかけやすい」と語り、「実在しているロボットが会話を通じてパーソナライズされたサービスを提供できるようになる。ここにいるからこそ信頼感が醸成される。地道かつ着実な進化によって、ロボットが一家に1台、1人1台普及する時代がまた近づいた」と述べた。

持ち歩けるロボットの時代は来るか