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日本マイクロソフト、子供教育でMinecraftの活用を推進

Minecraftの画面

 日本マイクロソフト株式会社は、一般社団法人ユニバーサル志縁センターおよび認定NPO法人育て上げネットと連携し、子どもや若者を対象にしたコンピュータサイエンス教育施策を実施する。

 具体的には、「Minecraftカップ2019全国大会」を開催するほか、若者の就労支援として、「若者TECH」を開始する。

日本マイクロソフト 代表取締役社長の平野拓也氏

 日本マイクロソフトの平野拓也社長は、「未来の創り手となる子供たちや、若者たちが、必要なスキルを持ち、活躍できる場所や機会を提供することが大切である。2020年度からの小学校でのプログラミング教育の必修化や、2024年度からは、大学入試における情報科目の追加など、コンピュータサイエンス教育への注目が高まる一方で、不登校や院内教育などによって、義務教育のなかでITに触れる機会が限られていた若者世代へのコンピュータサイエンス教育を提供する仕組みが模索されている段階にある。貧困家庭の問題や、健康の問題などにより、テクノロジーに触れられないといったことが起こり、教育機会の不平等化が顕著になっている。こうしたことを解決することに取り組みたい」と述べた。

 Minecraftカップ2019全国大会では、子供たちのプログラミング思考の醸成に向けて、世界各国の教育現場で使用されており、日本でも2016年11月から提供している「Minecraft: Education Edition」を活用。学校単位での参加だけでなく、学ぶ環境が限られている子供たちに対しても、NPOとの連携を通じて、コンテストに参加できるようにした。

 また、教育機関などに限定して提供されているMinecraft: Education Editionが利用できない環境にある子供たちに対しては、院内学習のための支援団体などに、大会期間中だけ利用できるライセンスを特別に用意するという。

日本マイクロソフトの催し
Minecraft:Education Editionの活用
Minecraftカップ2019全国大会の概要
ハンドブックも配布予定

 「Minecraftは、9,100万人が月間アクティブユーザーがおり、80人に1人が使用している。創造性や論理的思考を育むことができるソフトウェアである」(平野社長)としている。

 大会参加の対象となるのは6歳~15歳で、3人以上でチームを構成。16歳以上のコーチを1人以上を参加条件としている。なお、16~19歳のコーチの場合には別途、20歳以上の責任者が必要となる。応募期間は2019年3月10日~6月30日。7月に審査、受賞者を決定し、8月に授賞式を行なう。

 コンテスト内容は、東京オリンピック/パラリンピックなどを見据えて、「スタジアムや運動場、体育館などのスポーツ施設と、これを連携して利用される施設のある町に住んだり、訪れたりすることで、暮らすすべての人々が、充実した暮らしをすることができるワールドを開発する」というものだ。

一般社団法人ユニバーサル志縁センター 専務理事の池本修悟氏

 一般社団法人ユニバーサル志縁センターの池本修悟 専務理事は、「困難があったり、届きにくい子供たちの大会参加を支援したい。具体的には、病院内での学習支援、障害のある子供たち、社会的養護、外国ルーツの子供たち、被災地の子供たちを支援。授業や課外授業で学ぶ子供たちの参加を想定。来年度以降は、さらに多くの子供たちに声をかけたい。全国200チームの参加を目指す」とした。

 応募方法は、オンラインフォームに、3分の動画を含む必要な項目を入力。どれほど多様な人々が充実した暮らしができるか、協同作業の利点が生かせているか、プログラミングやレッドストーンが活用されていることがわかる内容を示すほか、完成したワールドに関する情報だけでなく、開発中の課程がわかる内容を含む必要がある。

一般社団法人ICT CONNECT 21会長兼一般社団法人日本教育情報化振興会 会長、東京工業大学名誉教授の赤堀侃司氏

 一般社団法人ICT CONNECT 21会長 兼 一般社団法人日本教育情報化振興会 会長、東京工業大学名誉教授の赤堀侃司氏は、「海外では、プログラミングは独立科目であり、プログラミング思考を学ぶことができるが、日本では、教科としてのプログラミング教育と、プログラミング思考の双方の目標を同時に達成することを目指している。これらを解決するにはどうするか。その1つとして、Minecraftカップ2019全国大会がある。子供たちが創造性を育み、論理的思考を育てることができる。教育活動としてMinecraftカップを成功につなげたい」とした。

 ICT CONNECT 21では、小学校教員に対してプログラミング教育の導入を支援する「プログラミング教育導入ハンドブック 2019」、教員向けにMinecraftカップ2019全国大会の参加を支援する「Minecraftカップ2019全国大会ハンドブック」(仮称)を3万部発行。都道府県教育委員会教育センター、市町村教育委員会ほか、全国の小中学校に無償で配布する。

 一方、若者TECHは、ICT学習を通じて若者の成長と雇用の可能性を最大化することを狙う。

若者TECHの有効性

 若者支援を行なうNPOを連携し、プログラミング思考、コンピュータサイエンスの要素を活かした就労支援プロジェクトとして推進。ICTを学び、ICT学習を通じて成長する機会をつくり、若者の成長の可能性と雇用の可能性を最大化することを目的としており、若者支援現場で活用できるICT学習のカリキュラムを開発し、検証およびブラッシュアップし、普及する取り組みに位置づけている。

日本マイクロソフトの催し
Minecraft:Education Editionの活用

 育て上げネットと日本マイクロソフトは、2010年から、延べ5万人を対象にICTスキルの習得支援を行なう「若者UP」に取り組んできた経緯があり、これは、現在、厚生労働省が実施する「地域若者サポートステーション」事業に引き継いでいる。こうした成功体験も活用する。

 若者TECHでは、すでにトライアルを開始しており、2019年1月からは本格展開を開始する予定。4つのNPO法人でプログラミング、クラウド、IoTなどを活用したカリキュラムを作成。2019年度には20カ所以上への展開を見込み、1万人の若者に機会の提供を目指すという。

 認定NPO法人育て上げネットの工藤啓理事長は、「日本中の若者が、ICTを活用する機会を得られる社会をつくりたい。それに向けて、民間でしっかりとして成果をあげ、若者UPと同様に、官と連携した仕組みへと展開したい」と述べた。

認定NPO法人育て上げネット 理事長の工藤啓氏
東京大学教授 兼 慶應義塾大学教授の鈴木寛氏

 Minecraftカップ2019全国大会実行委員長を務める東京大学教授兼慶應義塾大学教授の鈴木寛氏は、「プログラミング教育は新たな試みであり、2020年から始まる新たな教育は、世界中にも手本がない。日本は、フロントランナーに立ったとも言え、試行錯誤をしながら、ベストプラクティスを模索し、これを世界に展開していくという流れのなかにある。

 日本の教育の課題は、学力は高いが、学びのモチベーションが低い。懸念しているのは、プログラミング学習をやるときに、英語の失敗を繰り返したくないということ。それによって、プログラミング嫌いという子供たちを作りたくない。プログラミングをやらないと職を失うといったことではなく、子供たちが内発的に楽しみながら、ハマっていく環境を作り、結果としてプログラミング能力を高めることにつなげたい。そこに、Minecraftを活用したい」と語った。

プログラミング教育の課題