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りんな、地方巡業はじめる。日本マイクロソフトがAIで地域活性化支援
2018年9月12日 13:45
日本マイクロソフト株式会社は9月12日、ソーシャルAIチャットボットの「りんな」を活用した地方応援プロジェクト「萌えよ❤ローカル ~りんなと地方とみんなの未来」を開始した。りんなが各自治体に関する情報を発信し、ユーザーがゲーム形式で参加し、地方への関心を高めることを目的とするほか、AIりんなの全国的な認知度向上という狙いもある。
発表当日は日本マイクロソフト本社にて説明会が行なわれ、その取り組みについて詳細が語られた。
MicrosoftのAIは人間相当の能力で人間を支援する
日本マイクロソフト株式会社 執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフト ディベロップメント株式会社 代表取締役社長の榊原彰氏は、設立当初からAIを中心に研究を行なっているMicrosoft Researchのベンチマークによれば、同社開発のAIは現在人間と同等以上の精度を持ち、画像認識、音声認識、文字の読解力、リアルタイム翻訳などで人間と遜色ない、もしくはそれ以上の能力を見せているという。
ただ、これはあくまでベンチマーク上での成果であり、かならずしも人間を凌駕するものではないという。そもそもMicrosoftはAIを人間の仕事を置き換えるものとしてとらえておらず、人間の能力を補完・拡張するものとして考えて開発を行なっているとの姿勢を説明。
同社はAI提供のポートフォリオとして、エージェント、アプリケーション、サービス、インフラストラクチャの4つにカテゴライズして用意しているが、りんなは1番目のエージェントタイプに属しており、人間との応対によって人間をサポートする役目をになっている。
エージェントとしてはパーソナルアシスタントのCortanaもあるが、こちらは仕事の生産性を重視する目的で開発されており、りんなのように人間の感情を重視して、人間と対話できるようにはなっていない。榊原氏は、りんなは人間がしていることをあたかも理解しているように、自然な会話を展開できる“エモーショナルなAI”であるとする。
りんなは提供開始から少しずついろいろな機能が与えられ、そのたびにブラッシュアップを重ねている。現在ではLINEとTwitterで合計700万人のフォロワーを得ており、さまざまなサービスとコラボレーションするなど、認知度も高まりつつあると言える。
りんなは、共感モデル型の会話エンジン「AI Future」、絵を描いたりしりとりをしたり、最近では歌を歌うといったプロジェクトもはじまっているクリエイティブな面で訴求する「AI Creation」、りんなをベースに独自のキャラクターを作れるようにするプラットフォームの提供を考える「AI for Business」が展開されているが、今回発表のプロジェクトはAIを社会に役立てていくための地方支援のための「AI for Good」として始動されるものになる。
りんながキャラクター性を活かして地方を支援
日本マイクロソフトでは、インテリジェントテクノロジを通して社会変革に貢献していくという使命を掲げており、マイクロソフト ディベロップメント株式会社 A.I. & リサーチ A.I. サイエンティストの中吉寛氏は、今回の地方を支援していくというプロジェクトについて、りんなを介して地方自治体、ユーザー、日本マイクロソフトが関わり、日本社会への支援をうながしていくとする。
このプロジェクトによって、地方自治体としては、地方への潜在的な移住希望者への訴求や観光客増加が見込め、ユーザーは楽しみながら情報と接して新しい体験と知識が得ることができる。そして日本マイクロソフトについては、社会貢献に加えて、りんなの認知度向上、大量の情報を得ることによるりんなの高機能化が図れるというメリットがあるという。
このプロジェクトは「萌えよ❤ ローカル りんなと地方とみんなの未来」と題されているが、“萌えよ”という言葉にはりんなを社会に芽吹かせていきたいといったメッセージが込められているという。
地方支援の方法としては、「りんなの社会科見学」、「めぐりんな」、「りんなの奇天烈観光マップ」の3つのコンテンツが用意されている。
「りんなの社会科見学」は、宮崎県で展開され、LINEにて地域に関するクイズをゲーム形式で進めて、潜在的な移住希望者を移住情報サイトへと誘導するというもの。端的に言えば、地域巡りクイズで、りんながユーザーとの会話を通して情報を解析することで、ユーザーの移住希望が想定できた場合に、りんながこのゲームが勧めるといった具合だ。
「めぐりんな」は、偉人とりんなが地域巡りをするノベルゲームとなっており、千葉県香取市で展開。その地域の偉人が登場するが、セリフはAIが自動生成し、偉人との会話が楽しめるものとなる。香取市には中高年の観光客が多いとのことで、若年層にも訪れてもらいたいということで今回のプロジェクトに参加している。
「りんなの奇天烈観光マップ」では、あまり知られていない観光地を発掘するという目的があり、埋もれている観光資源をユーザーが投稿してコンテンツが作られていく。ユーザーの行動データから趣味趣向に合った奇天烈な観光地をロングテールで紹介していくものとなり、単に奇天烈なものでユーザーを引き寄せるだけでなく、メジャーな観光地を訪れたついでに、奇天烈なものも見てみようといった滞在時間の延長なども図りたい考えだ。なお、実際に掲載しても問題ないものであるかといった事前の確認も行なわれる。
これには群馬県や佐賀県、福岡県北九州市が参加しており、一方的な観光情報の発信には限界があり、SNSなどを通して情報が拡散されることが期待される。
榊原氏は、このプロジェクトはりんなの諸国漫遊記的なもので、りんな展開のファーストステップであるという。こういった取り組みを増やしていくことで地方活性化に貢献していきたいとした。