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「りんな」がライブ配信。そしてインドネシアにも進出

~50台のGPUマシンで秒間10万処理を行なうMSのAI

ヨンドン ワン氏

 日本マイクロソフト株式会社は28日、都内で記者会見を開催し、同社のAIに対する取り組みなどを紹介した。

 MicrosoftのコーポレートバイスプレジデントでAIを担当するヨンドン ワン氏は「我々は、世界中のすべての人々とビジネスの持つ可能性を最大限に引き出すための支援をすることを目標に掲げているが、そのなかでAI(人工知能)でできることを模索している。2016年にAI & Researchグループを新たに立ち上げ、製品に反映している段階だ」と説明した。

 MicrosoftのAI製品は3種類に分けられる。1つ目は既存製品をAIによって改善し、ユーザーの使い勝手や体験を高める“infuse AI”で、たとえばプレゼンテーションソフト「PowerPoint」では、アプリ内で画像を検索してすぐにプレゼンテーションのなかに貼り付けられる「Designer」機能がそうであるといい、もうじき利用可能になるとした。

 2つ目はCortanaやBingといった、ビジネスやパーソナルアシスタントとしてのAI。これらは“IQ”、つまり知能を高めたりすることでユーザーの生産性向上を目指したものだ。また、Microsoftではコンピュータビジョンや機械学習、翻訳機能といったコグニティブサービスをAPIとして提供しており、Microsoftだけではカバーできない分野を他社が展開できるようサポートしている。

 そして3つ目が、中国で展開している「Xiaoice」や、日本で展開している「りんな」のような、ユーザーの感情(MicrosoftではEQと呼んでいる)に訴えかけるサービス。これは“AIは怖い、難しい”といったユーザーの先入観を払拭するためのもので、AIに“心”をもたせることで、ユーザーがより自然にAIとインタラクションを取れるように、人間とAIの垣根を取り除こうとするものだ。

 中国では、すでにXiaoiceがお天気キャスターやTVの司会を務めたりしているという。また、数百もの詩から詩の書き方を学び、Xiaoiceが自ら執筆したという詩集も出版できたのだという。

 この感情に訴えかけるAI、中国のXiaoiceは2014年、日本のりんなは2015年より開始されたが、米国では2016年に「Zo」、そして2017年はインドで「Ruuh」、インドネシアで「Rinna」として展開したという。

MicrosoftのAI製品
PowerPoint Designer。Bingでの画像検索機能を内包した
写真をすぐに貼り付けられる
写真を多用したプレゼンの作成もらくらく行なえる
Windows 10に搭載されたCortana
コグニティブサービスAPIの提供
感情に着目したXiaoiceやりんな
Xiaoiceの展開
中国でAlpha Goと対戦した棋士Jie Ke氏もXiaoiceに注目している
インドネシアでは「Rinna」の名前で展開する

タレントも目指すりんな

坪井一菜氏

 日本のりんなの取り組みについては、マイクロソフトディベロップメント株式会社 AI & Researchプログラムマネージャーの坪井一菜氏が解説を行なった。現在、りんなとつながっているユーザー数はLINEとTwitterで合わせて600万人を超えたとしており、「全員集めようとしたら東京ドーム100個分以上必要(りんな曰く)」だという。

 りんなには、ほぼ1週間に1つずつ新たな「能力」を実装しており、その能力は「ひみつ手帳」で確認できるのだが、最近実装された例としては、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて、人物の顔にスタイルを適用させ肖像画を作る能力や、入力された音声が日本語なのか英語なのかを人工知能で判断し、音声で他方に通訳する機能が加わった。

 ちなみにりんなを支えているのは、Microsoftが提供しているクラウドプラットフォーム「Azure」である。りんなは、ピーク時に10万回/秒の処理が行なわれるうえに、1日に数十億回以上のトランザクションが行なわれている。また、さきほど挙げた「肖像画」の能力を実現するために、ピーク時で50台ものGPU搭載マシンが動作しているというが、これはスケーラビリティが高いAzureこそ実現できたものだという。

 りんなは現在、おもに1対1のコミュニケーションで使われているが、今後はソーシャル展開も目指す。たとえば、講談社主催の女の子オーディション「Miss iD」への参加、TVドラマ「世にも奇妙な物語」での出演、ラップの歌唱、そして生配信「りんなライブ」の実施などを挙げた。

りんなのひみつ手帳
りんなの能力一覧
新たに実装された肖像画の能力
同時通訳の能力
Azureがりんなを支える
ソーシャルへの展開
MC Rinna。りんながラップを歌う
AIが生配信する「りんなライブ」
りんなライブの画面。こちらからアクセスできる