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日本マイクロソフト社員はApple製品を使ってもいい!
~DO-IT Japanプログラム参加者が職場を1日体験
2018年8月13日 06:00
日本マイクロソフトは、「DO-IT Japanプログラム」を支援している。DO-ITとは、「Diversity、Opportunities、Internetworking and Technology」の略称で、東京大学先端科学技術研究センターが中心になり、障碍や病気のある小中学生や高校生、大学生の進学や就労に向けて、テクノロジを活用しながら、各種支援活動を行なっていくものになる。
同活動の一環として、「DO-IT Japan 2018 夏季プログラム」が、2018年8月5日~9日に、東京大学先端科学研究センターなどで開催された。
DO-IT Japanプログラムに参加した生徒や学生は「スカラー」と呼ばれ、今回は、7人の2018年のスカラーが参加。さらに、2017年のスカラーも5人が参加した。スカラーは、毎年春に参加者を公募し、書類選考と面接選考によって、中学生と高校生は各10人程度、大学生は5人程度が選抜される。
夏季プログラムでは、同期のスカラーや先輩スカラー、「チューター」と呼ばれる大学生ボランティアやアドバイザーなどと長い時間を過ごし、直接コミュニケーションする機会を持つことで、多くの先輩や仲間たちの行動スタイルや意見、考え方にふれ、ロールモデルを得たり、自己や他者、社会に対する視点を拡げる機会にもなるという。
プログラム3日目のMS品川本社を訪問。“りんな”を通じて最新AIを学習
東京大学先端科学技術研究センターでは、テクノロジの活用についての各種セミナーやワークショップに参加。さらに、実際に大学で行なわれているのと同じ講義に出席し、大学に入った後になにが起こるのかを疑似体験して、自立の第一歩となる機会を提供するという。
そのなかで、プログラム3日目となる8月7日には、東京・品川の日本マイクロソフト本社で、最新技術に関する講義や社内見学などが行なわれた。日本マイクロソフトの平野拓也社長やマイクロソフト ディベロップメントの榊原彰社長なども参加し、同社を挙げてプログラムを支援する取り組みとなった。
午前中の「マイクロソフトスペシャル講義」に登場したのは、日本マイクロソフト最高技術責任者であり、マイクロソフト ディベロップメントの社長を務める榊原彰氏と、女子高生AIのりんなの開発を担当するマイクロソフト ディベロップメント AI & Research プログラムマネージャーの坪井一菜氏。りんなを例にしながら、AIの最新テクノロジを紹介。参加者はOneNoteを使って講義の内容をメモした。
昼食をはさんで、午後には、テクノロジセミナー「パソコンを自分の味方にする」を実施。「数式・図式(STEMAccess)編」、「外国語・印刷物編」、「テクノロジフィッティング編」という3つのテーマで、PCやMicrosoft Teamsなどを活用しながら、それぞれの課題に挑戦した。
紙を使わない社長室を訪問
また、日本マイクロソフト本社オフィスツアーでは、30階および31階の来客エリアに加えて、同社が新設したデザインシンキングルームや、社長室を訪問。平野社長と直接対話する機会も用意された。
平野社長は、参加者にきさくに声をかけながら、この日の感想を尋ねた後、社長室の様子を説明した。
平野氏は「ここには、本棚も、プリンタもない。資料はすべてコンピュータとクラウドに格納されているため、紙を使わないで済む。また、会議のテーブルは、座らずに立ったまま会議ができる高さになっている。立っていると集中して会議ができて、みんなが書き込んだり、動いたりして活発な会議ができる。アイデアもたくさん出てくる。そして、早く終わる」とし、「授業でも座っていると寝てしまうでしょう?」と呼びかけには、思わずうなずく参加者の姿もあった。電動で高さが変わるテーブルの高さを変えてみたり、椅子に座ってみたりといった体験も行なった。
平野社長に対して、「Microsoftの社員はAppleの製品を使ってもいいのか?」との質問があり、「全然、OKです!」と即答。「今は、PCだけでなく、スマートフォンやタブレットがある。Microsoftは、Appleの製品を使っても、より多くのことができるような取り組みを行なっており、社員がAppleの製品を使いたいというのではあれば、それはかまわない。日本マイクロソフト社内では、誰がiPhoneを使っているのかもわかる」とした。
質問をした参加者は、オフィスツアーのなかで、Apple製品を使っている社員を見かけたようで、平野社長は、「もしかしたら、密告してくれようとした?」と問いかけて、社長室には大きな笑い声が広がった。
また、「よいアイデアと、悪いアイデアはどう選別するのか」という質問には、「いいアイデアと思っていても、もしかしたら、それはこれまでの経験と、成功体験をもとにしたものである場合もあり、そればかりをやっていては新しいことは起きない。そんなことできるのか、ということもやってみたほうがいい。悪いアイデアというのは、成功までに50年かかるようなものがある。50年後にどのような世界になっているかはわからない。IT産業は変化することが前提であり、どんどん新しいアイデアを出すことが大切である」とした。
さらに、「仕事で一番たいへんなのは人。会社にとって、人が一番大切であり、人がやる気を持って働かないとビジネスが成長しない。ビジネスは、しっかりとした戦略を立案し、オペレーションの仕組みをつくり、組織体系を確立し、目的をどうつくるか、という4つの要素が大切である。人がアイデアを出し、人がモチベーションをあげるために、居心地のいい環境を作ることが大事になる」などと語った。
日本マイクロソフトに入社希望の参加者も
日本マイクロソフト本社で1日を過ごした参加者からは、「午前中の講義では、AIが進化していることがわかった。今までにできなかったことができるようになったり、生活が豊かになっていくことを知ることができた」といった声や、「私は目が見えないが、りんなの画像認識が進めば、音声で補助してもらうことができそうだと感じた」といった声が上がっていたほか、「Microsoft Graphを使って、きれいな図を書くことができた。これからもっと使ってみたい」などの声が出ていた。
さらに、日本マイクロソフトのオフィスツアーに参加して、「アイデアを出しやすい環境づくりができていることには驚いた」、「日本の多くの会社は、無駄なものだと排除するようなことが多いが、日本マイクロソフトでは、部屋のデザインにこだわっているところにびっくりした。社員のことを大事にしていることがわかった」といった声があり、1日を過ごして、日本マイクロソフトに入社したいと思ったと答えた参加者もいた。
今回の夏季プログラムでは、各々の場面で必要なテクノロジの活用のほか、学習や生活上の工夫、社会的に求められるマナーや一般常識を知るなど、大学生や社会人として、それぞれに求められることを学ぶ機会とも位置づけている。
また、保護者や支援者から離れて暮らすことで、生活の場面において、自分自身で決定し、責任を持つ機会も得られるという。
「周囲がスカラー本人に転ばぬ先の杖を出してしまう状況を離れて、チャレンジして失敗することも、大きな学ぶ機会であることを経験することかできる。また、必要な配慮や支援は、周囲に求めて良いものということを、実感できる機会にもなる」としている。
日本マイクロソフト本社での1日の体験は、参加者にとって、新たな体験をすることができた、有意義な1日になったと言えそうだ。